ライター Atsuko Yagura
【雨の日】京都「平安神宮」の花菖蒲が薫る、とこしえの自然美

平安遷都から日本の中心地であり続けた京都。そして雨が似合う花として紫陽花と並んで語られる花菖蒲。これらふたつのコラボレーションが楽しめるのは、梅雨の時期の関西では、平安神宮神苑がベストスポットと言っても過言ではありません。

分厚い歴史と広大な池泉回遊式庭園を持つ平安神宮神苑に降る雨は、一体どんな演出をしてくれるのでしょうか。
平安神宮神苑とは?

平安時代やー!と意気込んではみたものの、実は平安神宮が創建されたのは1895年(明治28年)です。
幕末の騒乱で市街地が荒廃したことに加え、明治維新で天皇が京都を去られ、首都が東京へ完全に遷ったことは人々の心に大きな打撃を与えました。794年の平安遷都以降、いつの時代も天皇のお膝元で繁栄していた京都の衰退ぶりは、目を覆いたくなるほどだったと言います。
しかし、その状況下でも京都の人々は負けませんでした。数々の復興事業を展開し、教育や文化生活などすべての面において新しい京都が模索されました。
そして粘り強い誘致運動の結果、平安遷都千百年紀念祭にあわせて、1895(明治28年)の第四回内国勧業博覧会(※1)の開催地を勝ち取りました。その博覧会の目玉として、平安京遷都当時の大内裏の一部を復元して創建されたのが平安神宮なのです。
(※1)明治政府が近代化を推進して行った産業改革の政策の一環として開催した博覧会

朱塗りの鳥居と門は、とにかく大きい。写真で見る数倍の迫力があります。そして黒々とした雲が空を覆う梅雨の空模様も、建物の迫力をより一層引き出しているようです。
西神苑の池を彩る2000株の花菖蒲
さて、いよいよ神苑の中に入って行きます。

神苑の中は、植物園かと思うほどびっしりと様々な花々や植木がしてあります。小径を歩いて行くと目の前に突然、紫色の花が見えてきます。梅雨時の主役はここ西神苑の白虎池です。



池の辺に日本古来の品種ばかり200種、2,000株の花菖蒲が咲き競います。花菖蒲と言っても様々な色や形があるのがわかります。
一本一本異なる花が咲き揃うと、こんなにも壮大な景色になるんですね。おそらく全てが同じ色形であれば、こんな美しさは作り出せないでしょう。白、桃、薄い紫、濃い紫など花々のグラデーションは、自然が作り出した染物のよう。

花菖蒲だけではない。神苑の魅力
西神苑を抜けると中神苑です。中神苑には蒼竜池があり、ここでは季節的に花菖蒲の次に主役になるであろう水蓮が咲き始めていました。


さらに進むと見えて来たのが東神苑です。泰平閣と呼ばれる橋がかかっています。


この泰平閣周辺、どこを切り取っても絵葉書のよう。まさに風光明媚という言葉がぴったりの場所でした。
泰平閣に座って、ただボーっと池を眺めます。先ほどまで止んでいた雨がまたポツポツと降り出しましたが、その雨音さえも心地よい音楽に聴こえてきます。

昔から続いて来たであろう自然の営み。人間が、何時代だとか首都がどこだとか言っている間も植物は変わらず咲き続け、雨は池面や花を濡らし、その自然が私たちに安らぎを与えてくれているのではないでしょうか。

明治時代の逆境に立ち向かい、なんとか京都を復興させようとした京都の人々の魂がこもった平安神宮。ぜひ花菖蒲が雨の中で揺られる貴重な梅雨の時期に、訪れてみて下さい。
Information
平安神宮 神苑
住所:京都市左京区岡崎西天王町
神苑拝観時間:1月1日~2月末日 8:30~16:30
/3月1日~3月14日 8:30~17:00
/3月15日~9月30日 8:30~17:30
/10月1日~10月31日 8:30~17:00
※10月22日は時代祭の為9:30~11:30(順延の場合は23日)
/11月1日~12月31日 8:30~16:30
※各期間共受付終了30分後に退苑
Wi-Fi環境:なし
クレジットカード:不可
言語対応レベル:日本語、英語少し
最寄り駅・アクセス:京都市バス5・32・46・100「京都会館美術館前」徒歩5分
/京阪電車「神宮丸太町駅」2番出口下車徒歩15分
神苑拝観料:大人600円、小人300円(境内のみの参拝は無料)
宗教情報:不明
電話番号:075-761-0221
公式HP:http://www.heianjingu.or.jp/