限界集落から自然栽培で、日本を変える
松野町目黒集落は人口270人の限界集落と呼ばれており、地域の食を支えてきた地域のおじいちゃんおばあちゃんたちは、徐々にその田畑を手放しつつある。私たち森の国Valleyは若者が集まるコミュニティになっており、今、土や森を蘇生するためにできることを模索する中で、自然栽培の実践、間伐・人口放置林の再生やよもぎなどの野草の研究、住環境の創作など、人間が自然と共生する術を身につけるために活動をしている。
2024年5月、一般社団法人シゼンタイ代表の佐伯康人氏が森の国Valley(愛媛県松野町目黒集落)に、来られた。
佐伯康人氏は、日本で無農薬・無肥料・無除草の「自然農法」を確立した福岡正信氏と、世界で初めて無農薬・無肥料・無除草剤でりんごの栽培に成功した木村秋則氏の影響を受け、木村氏の一番弟子として自然栽培を学び、現在は自然栽培を全国100箇所で広める活動をしている。
彼は、田畑だけではなく田畑がある環境を考慮して自然栽培を実践されており、野菜を「もの・商品」として見るのではなく「生き物」として見てあげること。自然栽培は「ほったらかし農法」ではなく「観察農法」であること。草や葉の特徴からその植物の特性を理解すること。など、自然栽培とは何かということを哲学的に、そして理論的に、実践も含めて教えてくれた。
森の国Valley(松野町目黒集落)のフィールドワーク
お昼に目黒テーブル(集落内コミュニティ施設)に集合し、早速サスティナブル・ガーデン(集落内シェア畑)へ向かう。
佐伯氏は田畑に出てすぐに周りの山々を見渡し、田んぼの水路に手を入れて「この水、みんな何度だと思う?」と問いかける。
「9度!」「11度くらいかな」「16度?」
「そうだね。温度計で測ってみようか」と言って測ると、15度だった。
「稲と人間って暮らしが似てるの。暑すぎても嫌。冷たすぎても嫌。だから、稲がちょうどいい、25度±5度くらいの環境をつくってあげたいね。15度の水に15分入ってみるのを想像してみて。つらいでしょう?」
虫食いのキャベツと、ツヤツヤなレタスが植えられている畝があった。「この組み合わせはすごくいいね!あとは、レタスとキャベツを逆に植えればよかったね」とアドバイス。キク科は農薬の代わりの役割を果たしてくれる。だから、畝の内側に蝶々が大好きなアブラナ科のキャベツ。外側にキク科のレタスを植えれば、レタスがキャベツの鉄壁となり(バンカープランツ)虫から守ってくれるのだという。
「これから野菜を育てようと思っているのですが、何から始めれば良いのでしょうか?」
という参加者からの問いかけに、佐伯氏は「まずは土をほって、どんな環境かよくみて。栄養がないところには、麦を植え、その次に豆。豆が育たなくなると窒素がたくさんあるってことだから、どんな野菜を植えても育つよ」と教えてくれた。
「なんでも入れすぎたらダメ。抜いていくことを考えて」
一辺倒で解決できる特効薬はなく、その土地の環境をよくみて野菜や草花、虫たちの気持ちになって考えてみることが大事なのだと教えてくれた。
お昼は畑の隣で野菜の美味しさをそのまま感じるヴィーガンカレーをいただく(シェフ:堀礼佳)。玉ねぎとトマトベースのスパイスカレーに揚げ野菜、グリル野菜、生の野菜をたっぷりのせて目黒米と共にいただいた。
自然栽培を広める必要性
政府は、2050年までに化学肥料を30%に、農薬を半分に、有機農業の面積を耕地全体の25%に拡大するという目標を掲げている。しかし現在国内の有機農家は0.5%しかない。
「本当にこのままで、有機農家の割合は25%になるのだろうか」と佐伯氏は疑問を呈す。
海外の農地が砂漠化し、地下水も枯渇し、各国は自国の食を守ることで精一杯になっている中、日本はタネの90%を海外に依存している事実がある。
「僕はね、パンデミックになった時、全く不安がなかった。なにかあったら目の前に畑があるし、手元にタネがあるから。だからみんな、自分のタネをもとう。僕は、0歳から明日天国にいく人まで、この自然栽培を日本全国に広めてやろうと思って歩き始めました」
自然と一体化する
松野町目黒集落は人口270人の限界集落と呼ばれており、地域の食を支えてきた地域のおじいちゃんおばあちゃんたちは、徐々にその田畑を手放しつつある。私たち森の国Valleyは若者が集まるコミュニティになっており、今、土や森を蘇生するためにできることを模索する中で、自然栽培の実践、間伐・人口放置林の再生やよもぎなどの野草の研究、住環境の創作など、人間が自然と共生する術を身につけるために活動をしている。
地方から日本が変わる波がきている。限界集落が日本の未来を変えていく日は遠くないのかもしれない。
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森の国Valleyでは、四万十川源流の恵みに感謝し、あめつち(天地)の声に耳をすませ、地球と人が健康に生きる社会を目指しています。 森、農、食、医、育。 日々の暮らしの中で、それらのつながりを感じることがどのくらいあるでしょうか。ここ森の国Valleyでは、営みの中でそのつながりを感じることができます。森から流れくる水も、ふわふわの土も、のびのびと育つ野菜も人間も。すべてはつながり、相互に関係しあい、営みの中でめぐっています。そのあたり前の循環を、わたしたちは “あめつちの心” で伝えていきます。