社寺と商家が並ぶレトロな宿場町・北条町
美しい田園風景のなかを走るローカル線「北条鉄道」の終着駅で、1300年ほど前に建てられた住吉神社や酒見寺(さがみじ)といった寺社の門前町としても栄え、旧街道沿いには当時の繁栄を思わせる立派な商家が立ち並んでいます。
出発は、北条鉄道が走る北条町駅!
北条鉄道の始発・終着駅でもある北条駅。
駅のホームにはよく1両編成が可愛らしい北条鉄道が停まっていることがあり、留置状況によっては、営業列車が2両横並びになる光景を見ることもできます。
駅舎の中には北条鉄道にまつわる様々なグッズもあるので、ぜひチェックしてみてください!
北条鉄道の沿線に点在する見るべき観光スポットについて詳しくはこちら!
極彩色の多宝塔が美しい「酒見寺」
駅から当時の面影が残る商家の家並みを通り(The rows of merchant houses that retain the atmosphere of the past.)、歩くこと約10分。立派な楼門が見えてきました。酒見寺は、天皇の命により、僧・行基(ぎょうき)*が754年に建立したと言われています。
1662年に建てられた「多宝塔」は、国の需要文化財に指定されている建物。屋根の部分には京都の清水寺などでも用いられている建築様式が採用されていたり、日本の伝統的な建築様式を見て、体感することができます。
遠目で見ても美しいですが、近寄ってみると極彩色で描かれている装飾文様や塔の自体の建築様式の美しさがさらに際立ちます。少し下のアングルから見ても迫力満点!リズミカルに並ぶ木材と描かれている模様が素晴らしく「もっとも美しい多宝塔」と呼ばれる理由が分かります。
寺内をまわっていると、灯籠や瓦など境内のいたるところに「葵の紋」があるのに気が付きます。「葵の紋」とは、江戸時代の約260年間(1603年〜1868年)にわたり、日本を治めた徳川将軍家の家紋で、日本人なら誰もが時代劇や歴史の勉強などで目にするものです。
酒見寺は、徳川家の三代目の将軍・家光によって保護されてきた歴史があります。これだけの素晴らしい建物が建てられた背景には、徳川家の庇護があったのですね!
*行基…飛鳥時代末期から奈良時代初期にかけて活躍した日本の僧侶です。彼は民衆に仏教を広め、社会福祉事業や公共事業に従事し、多くの橋や池の建設に関与しました。また、東大寺大仏の造営にも貢献しました。
1300年もの歴史がある「住吉神社」
酒見寺の隣にある「住吉神社」も、長い歴史を誇るスポット。幾度とない焼失・再建を経て、現在の建物は1600年頃に姫路城主によって建てられたものです。
拝殿の手前手間へには、可愛らしい撫で兎が。この兎は撫でることで、無病息災、子授け、安産といったご利益があると言われています。
風格のある拝殿の天井部分には、龍をはじめ住吉神社で神の使いとされる兎の見事な彫り物があり圧倒されます。
素晴らしい建築を堪能したあとは、ぜひ建物の裏側へ。この住吉神社では3人の神様を祀っているのですが、それぞれの神様のために建てられた3棟の本殿を観ることが出来ます。このように本殿が3つ並んでいる形式は日本の建築のなかでも珍しいものなのだとか。
住吉神社で忘れてはいけないのが、毎年4月に行われる「北条節句祭」。4月の第一土・日曜わたって行われるこの祭りは、播州春の三大祭り(Banshu’s Three Great Spring Festivals)播州三大祭の1つに数えられ、美しい神輿をはじめ、たくさんの屋台、奉納される舞など見どころがたくさん!機会があればぜひ、見に行ってみたいですね。
謎に包まれた不思議な石仏群「五百羅漢」
酒見寺と住吉神社を巡ったあとは、歩いて5分程の場所にある羅漢寺の「五百羅漢」へ。「羅漢」とは「阿羅漢」の略称で、仏教のなかで多くの人々から尊敬され、施しを受けるに値する聖者を指し、お釈迦様が亡くなった時に集まった500人の弟子を指して「五百羅漢」と呼ばれます。
日本には多くの場所に五百羅漢像がありますが、北条町の五百羅漢像は、いつ、誰が、何のために彫ったものかわからなかったのだとか。最近では市の調査により、江戸時代初期につくられたものが多いことが分かってきました。
苔むした地面が美しい庭園を通り、ひらけた場所に出ると、そこには五百羅漢の石仏がいたるところに建っていました!
一方向を見てただ立ち尽くす石像群。お地蔵様やお寺にある石像のような卓越した技術ではなく、良く言えば素朴、悪く言えば稚拙な技術で掘られたものです。
しかし、だからこそ「これを彫らねば」という作者の思いがダイレクトに伝わってきて、「一体、どこの誰がどんな思いで彫ったものなのだろう?」と思いを馳せてしまいます。
五百羅漢のエリアには、葉っぱ1つ落ちていない道が整備されていて、1つ1つを間近で見学できるのも魅力です。端正な表情で微笑んでいるものに、口をギュッと引き結んだ石像…。表情豊かな羅漢像を見ていると、そこに作者の思いや考え方が反映されているようで、時間をかけて眺めたくなります。
「ひとつひとつ表情が違う羅漢さん。ぜひ、ゆっくり見ていってくださいね」。そう語るのは、ご夫婦で羅漢寺の管理をしている山田さんです。
毎日、境内の掃除や庭園の手入れを欠かさないと語る山田さん。「お庭はここに訪れてくれた人がリラックスできるように、自然の状態のような整え方をしているんです。五百羅漢を見学するだけでなく、境内にあるアートを見たり、縁側で緑を眺めたりしながらゆっくり過ごしてくださいね」。
水田家でのんびりティータイムを
北条町の歴史を満喫したあとは、15分ほど歩いた横尾通り(Yokoo street)にある「水田家住宅」へ。国登録の有形文化財である水田家住宅は、築120年を越える建築を当時の姿のまま現在に伝えている建物です。
家主である水田さんは、北条町のガイドしており、家の中にはパンフレットや説明資料がズラリ。毎週火曜・水曜の10:00〜15:00はカフェ「町かど亭」としても営業をしており、美味しいコーヒーと一緒に北条の町に関する、様々な情報を聞くこともできます。
「この建物自体も、昔の商家の家を実際に体験していただきたいという想いから、土間なども当時のままに保存しているんです。業者に頼むと現代風に変えられてしまうこともあるので、自分たちでDIYをすることも。」
水田家を訪れて驚いたのは、北条の町の歴史を伝える資料の豊富さ。離れの奥にある5つの蔵のなかには、「歴史資料館」「雛人形」「茶室と木刀コレクション」など自作の資料館があり、農作業の器具や、豪華な雛人形、ご主人の木刀コレクションなどが並んでいます。
「北条は大きなまちではありませんが、宿場町や門前町としてとても深い歴史があるんです。そんな歴史を、実際に当時のものを見たり、触れたり、改修が終わったあかつきには、この家に泊まることでより多くの人に知っていただけると嬉しいです」と語る水田さん。
お二人の温かい人柄と、素晴らしい資料の数々に夢中で、気がつけばすでに夕方になっていました。
まとめ
今回、北条町の町をまわって感じたのが町の人々の温かさ。行く先々で「ここはこういう歴史があって…」と優しく丁寧に教えてくれ、そういった温かい人たちとの交流がとても楽しく感じられました。宿場町や門前町として栄えた歴史も、旅人を暖かく迎え入れてくれる理由なのかもしれませんね。
◼︎酒見寺(Sagamiji)
住所:〒675-2312 兵庫県加西市北条町北条1319(Google map)
営業時間: 常時開放
定休日: なし
英語サイト:https://kanko-kasai.com/spot/culture/sagamiji/
◼︎住吉神社(Sumiyoshi Shrine)
住所:〒675-2312 兵庫県加西市北条町北条1318(Google map)
営業時間: 常時開放
定休日: なし
英語サイト:https://kanko-kasai.com/spot/culture/sumiyoshi/
◼︎五百羅漢(羅漢寺)(Gohyakurakan (Rakanji))
住所:〒675-2312 兵庫県加西市北条町1293(Google map)
営業時間: 9:00〜17:00
定休日: なし
英語サイト:https://kanko-kasai.com/spot/culture/gohyakurakan/
◼︎水田家住宅
住所:〒675-2311 兵庫県加西市北条町横尾121(Google map)
営業時間: 10:00〜15:00
営業日:火曜、水曜
Business days: Tuesday, Wednesday.
英語サイト:https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/211513
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ようこそ兵庫へ 兵庫は日本海から中国山地をまたぎ瀬戸内海をつなぐ恵まれた大地、そして恵まれた風土を育む関西の窓口です。 「さくら名所100選」に選ばれた世界遺産の姫路城、六甲山から見る大パノラマの夜景など、目を奪われる絶景が数多くあります。 世界的に名高い神戸ブランド、日本を代表する牛肉で但馬牛の代名詞「KOBE BEEF」、酒米「兵庫山田錦」は舌が驚く逸品です。 名湯、有馬温泉や多くの文学作品にも登場する城崎温泉。大自然に包まれ心も体もリラックスできます。 淡路島・鳴門のうずしおの雷鳴のように響く音、夏に各地で開催される花火大会でのダイナミックな音など、心に残る音に出会えます。 県内のハーブ園や植物園では四季を通じて、ハーブや花々の優しく心地良い香りに癒されます。 さあ、「視覚・味覚・触覚・聴覚・嗅覚」の五感を刺激する新しい旅を、兵庫県でご堪能ください。