【静岡・伊豆】「いずタビPickUp!レポ」~麦わら細工づくり体験~
伊豆のいいコト・いいモノを完全な独自目線でしたためる 今回は修善寺温泉にある「民藝麦わらの店 晨 ~あした~」で麦わら細工を体験した
「いずタビPickUp!」は、静岡県伊豆市の体験や特産品を購入できるウェブサイトです。
「いずタビPickUp!レポ」では、「いずタビPickUp!」に掲載されているところへ足をはこび、感じたことや体験したことをしたためます。
いつでも行けるような、簡単に手に入るようなそんな体験じゃなくて。
便利な世の中になったものだ。手のひらの長方形に人差し指を当てれば、何でも簡単に手に入る。物質的なものだけではなく、最近では体験したような気分まで手に入ってしまう。だが、しかし声を大にして言いたい。やはりどこまで行っても体験した気分は「体験した気分」であって、実際の体験とは似て非なるものなのだ。そういう現実での体験をして、あなたの手の内に納めて欲しいなと思う1つがこの麦わら細工だ。
今回訪ねたのは江戸時代の伝統工芸品である麦わら細工を体験できる「民藝 麦わらの店 晨 ~あした~」。
工房は修善寺温泉の入り口のほど近くにある。
今回の取材の発端は、本サイト(いずタビPickUp!)運営のスタッフ会議だった。記事を書いている私(さとあや)は2年前にこの麦わら細工の体験をしていて、そこで作った麦わらのイヤリングをほぼ毎日つけている。教わりながら、自らも苦労しながら作ったこのイヤリングは格別の愛情が籠っており文字通り肌身離さず状態だ。ちなみにイヤリングを見て「そのイヤリングすごい素敵です!どこで買ったんですか?!」と聞かれたこと数知れず。ふふん。手作りであります!!!ドヤ。
会議に参加している本サイトのスタッフ4人はまだその体験をしておらず、ぶっちゃけた話麦わら細工を「物」として捉えていて、体験も想像の域を出なかった。会議を進める中でこれはいい機会だと、3人のおじさんと1人の女子が体験しに行くことになったのだ。
伝統的な麦わら細工の技術を二代目と三代目から教わる。
看板はあるものの工房は、外から見ると一瞬わからない。だが入り口に立てば向こうの陣地に入った!と、時代の境目を感じ、ここが工房なのは一目瞭然だ。息を吹き込まれた作品と商品が置かれ・吊るされ、色とりどりの材料と汗水がしみ込んだ小道具が作業台の上にある。360度見まわして、ここで麦わらに命を吹き込んでいるんだということを感じざるをえない。
ちなみにこの麦わらは、種まきから素材になるまで一貫して作っている。ほんと~に貴重品だ。(新芽の麦を鹿が食べに来るので鹿の脅威から麦を守りながら。)そしてお母さまである二代目と娘さん三代目と一緒にこの工房を運営している。
「編み細工」と「張り細工」チーム
さて、今回「編み細工チーム」と「張り細工チーム」に分かれて作業をしていく。まずは「編み細工チーム」。麦を規則性に沿って編んでいくことでリースや動物の形の置物にしていく。リースは色を選ぶところから始まる。染料でカラフルに色付けされた麦わらを選ぶおじさんたちが背中を丸めながら選ぶ姿はかわいい以外のなにものでもない。(リースは1色~4色まで自由に選べる。さぁどれにしよう…)
編み方は三代目辻さんがとっても丁寧に教えてくれるので安心だ。二代目のお母さん曰く編み細工は、特に性格が出ると言っていて「せっかちな人は説明をあまり聞かないで早く終わらせようと編むし、几帳面な人は何度もやり直しながら編んだりしますよ。」とのことだ。確かにこのおじさん2人も同じものを制作しているのに、麦わらとのかかわり方はまったく違う。1人はめちゃくちゃ早いし、1人はすごいじっくりタイプ。どちらにしても2人ともとっても集中しているのがわかる、没入、だ。
続いて「張り細工チーム」。こちらは今回しおりを作っていく。まずはしおりに何を描きたいのかを決める。2人はそれぞれ四つ葉のクローバーと、花火を描くことに。
こちらのチームは二代目の辻さんのお母さまがついてくれている。染料で色づいた麦わらを選んでもらったら、一本一本を平らにしごいていく。そうすることで麦わらの繊維が壊れて凸凹が平らになり独特の光沢が出る。これを繰り返してできた麦わらを薄い和紙に貼り合わせて一枚の麦わらシートにするのだ。
こちらのおじさんと女子は始終無言で没入感甚だしい。外から見ている私とは別の世界にいるのだなと思う。2人からは粘り強さと挑戦する姿勢を感じた。1人は張り細工でサインを入れる!とオリジナリティに挑み、1人は夜空を彩る花火を表現するために小さなパーツをたくさんつくることに取り組んでいた。細かい材料の裏に接着剤をつけ貼り付けながらイメージをしおりに描いていく。
向上心とチャレンジ心の変化と海外の反応
2つのチームはまったく異なる手法で麦わら細工の世界を体験した。職人さんの想いと江戸時代から続く歴史を聞きながらの作業。それらの話が色とりどりの材料やいくつもの異なる作業に溶け込んで、素敵な作品になるよう編み込んで、刻んでいく。この空間から受け取るすべては今どきのスマホやパソコンの中では間違いなく体験できないこと。4人が物だと思っていた麦わら細工は、今日を起点にコトとなった。
麦わら細工を完成させたおじさんは言う。「次はもっと難しいのをやりたいし、もっとうまく出来るようになりたい。とにかく目の前のことに集中したから、「今」しかなかったよ。」と満面の笑みと満足でいっぱいの様子だった。向上心とチャレンジ心が目の奥でイキイキしていた。
ちなみに海外では麦わらと言えばクリスマスのオーナメントとして使われていたり、北欧・フィンランドではインテリアのアクセントとしてのヒンメリが有名で身近な存在だ。特に菱形の編目を連ねていく「大森編み」による作品は日本にしかない技法で、しっかり守り伝えていって欲しいと言われるらしい。
二代目のお母さま曰く、昔の日本の農家では麦の刈り取り時期がホタルが飛ぶ時期だったので、おじいちゃんおばあちゃんからホタルかごの編み方を教わり、子供たちはかごの中にホタルを一時的に入れて遊んだそうだ。そんなホタルかごも編んで体験することが出来る。さあ、あなたは麦わらの店 晨(あした)でどれを体験する?
📷2024年8月7日撮影
この記事の制作者
📷: 齋藤洋平│観光カメラマン
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