岡山の隠れた名所「頼久寺庭園」で日本の美を発見!

岡山県高梁市の隠れた名所「頼久寺」で、丸窓から見る絶景庭園を体験しませんか?東京ミッドタウンのデザインにも影響を与えた美しい枯山水庭園で、心癒される贅沢な時間をお過ごしください。見どころやアクセス情報をご紹介します。
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目次
- 天柱山 頼久寺の歴史と文化的背景
- 城のような独特な入口の秘密
- 息をのむ美しさ!庭園全景の魅力
- 四季を通じて楽しめる庭園の魅力
- 参拝の記念に御朱印を
- 住職からの温かいメッセージ
- 拝観時間・拝観料(入場料)
- アクセス情報
- 頼久寺も見える!ループ橋展望台からの絶景
- おわりに
天柱山 頼久寺の歴史と文化的背景

天柱山安国頼久寺(てんちゅうざんあんこくらいきゅうじ)は、岡山県高梁市にある臨済宗永源寺派(りんざいしゅうえいげんじは)の仏教寺院です。臨済宗は、座禅を中心とした日本の禅宗の一派として知られています。詳しい創建時期は明らかではありませんが、1339年に室町幕府初代将軍の足利尊氏(あしかがたかうじ)が再建し、備中国(びっちゅうのくに、現在の岡山県西部)の安国寺となりました。その後、1504年には備中松山城主の上野頼久公(うえのよりひさこう)が寺の景観を一新しました。頼久公が亡くなられた後、その名前にちなんで頼久寺と改名されました。
そして、この頼久寺庭園を手がけたのが、江戸時代初期(17世紀前半)の大名であり、茶道・建築・庭園設計の巨匠として知られる小堀遠州(こぼりえんしゅう)です。小堀遠州は「綺麗さび」という美意識で知られ、日本各地に美しい庭園を残しました。1974年には国の名勝庭園に指定され、日本の重要な文化遺産として認められています。
城のような独特な入口の秘密

頼久寺の入口は、石段を登り切ると目の前に壁があり、すぐには境内へ入ることができない独特な構造になっています。これはまるで日本の城の「虎口(こぐち)」、つまり城の防御的な入口のような造りです。なぜこのような造りになっているのか不思議に感じていましたが、住職のお話によると、かつて備中松山城の出城(でじろ、本城を守る小さな砦)としての役割も果たしていたそうです。
高梁市は、現存する天守閣を持つ備中松山城の城下町であり、城造りの技術に優れた地域として知られています。頼久寺のこの特徴的な入口も、そうした地域の歴史や城郭建築の技術が影響しているようです。住職のお話から、頼久寺が持つ奥深い歴史の一端を知ることができました。
息をのむ美しさ!庭園全景の魅力

それでは、庭園をご紹介していきましょう。少し薄暗い屋内から縁側へ足を向けると、目の前にパッと明るく開ける、言葉では表現できないほど美しい光景が広がります。
実は、頼久寺の建物は天保年間(1830-1844年)に一度火災で焼失しています。しかし、この美しい庭園は奇跡的に焼失を免れました。驚くことに、庭園の正確な設計図などは残されておらず、代々、口伝えによって美しい樹木の刈り込みの形が保たれてきたそうです。現在は昭和時代に撮影された写真を基に、その美しい景観が維持されています。
白い砂で描かれた美しい波紋

頼久寺庭園は蓬莱式枯山水庭園(ほうらいしきかれさんすいていえん)です。枯山水とは、実際の水を使わずに石や砂で水の風景を表現する日本独特の庭園様式のことです。頼久寺庭園では、白い砂で水の波紋が見事に描かれています。この美しい模様を保護するため、お庭に入ることはできませんが、縁側から美しい光景をお楽しみください。
長寿の願いを込めた亀島

ツツジ(日本の春を代表する花木)の刈り込みの前にあるのが亀島です。真ん中の大きな岩が甲羅、右側の小さな岩が頭を表しています。蓬莱式庭園は不老不死(永遠の命)を願う中国の思想に基づいて造られているため、このように長寿の象徴である亀が表現されているのです。
東京ミッドタウンにも影響を与えた鶴島

こちらの鶴島は、高さ約150センチメートルの板状の岩とサツキ(初夏に美しい花を咲かせる日本の花木)で構成されています。手前にも石を配置することで、奥行きが感じられるようになっています。
実はこの鶴島が、東京の有名な商業・オフィス複合施設「東京ミッドタウン」のデザインに影響を与えたと言われているのです!建築全体の基本設計を手がけたアメリカの建築家デイヴィッド・チャイルズ氏は、頼久寺とニューヨークのロックフェラーセンターからデザインのインスピレーションを得て、東京ミッドタウンの構造を創り上げたそうです。
このお話を伺い、驚くとともに、頼久寺庭園が日本国内にとどまらず、世界の建築家をも魅了する場所なのだと改めて感じました。
サツキで表現された見事な青海波模様

こちらは海の波を表した「青海波(せいがいは)」と呼ばれるサツキの刈り込みです。幾重にも押し寄せる波の様子が見事に表現されており、この時期にはピンクや赤の鮮やかな花が美しい彩りを添えます。
なお、青海波は日本の伝統的な幾何学模様の名前としても知られ、穏やかな波がどこまでも続く様子を表した縁起の良い文様です。「永遠に穏やかな生活が続くように」という願いが込められています。不老不死を願う蓬莱式庭園にぴったりの意匠ですね。
自然環境の変化と庭園管理の課題

サツキのお手入れに関して、近年の自然環境の変化により、管理に苦労されているそうです。近年の夏は、以前とは比較にならないほどの猛暑となり、春を楽しむ間もなく夏のような暑さが訪れる年が続いています。かと思えば、今年は5月に入って急に冷え込むなど、以前では考えられなかったような気候の変動が起きています。このような環境の変化が、サツキの管理において非常に難しい点だと住職はおっしゃっていました。また、歴史あるお寺の庭園であるため、樹齢を重ねたサツキは世代交代をさせることもあるそうです。
丸窓から見える絵画のような風景

この絶景を、ぜひご覧ください!憧れの丸窓から見る景色は、壁がまるで額縁のようで、一枚の絵画を見ているかのようです。その美しさには心を奪われ、言葉を失って見とれてしまいました。
季節ごとのサツキの見頃

例年のサツキの見頃は、だいたい5月末までです。ちなみに、今年は5月に冷え込んだこともあり、少し遅れて見頃を迎えました。残念ながら、6月初旬の雨と翌日の強い日差しにより、現在は見頃を終えています。
四季を通じて楽しめる庭園の魅力

頼久寺といえばサツキが有名ですが、実は四季を通じてさまざまな魅力があります。少し前まではツツジが庭を華やかに彩り、私が訪れた際はサツキが見頃を終えつつも、まだ可憐な花を楽しむことができました。そして、6月中旬からはクチナシ(日本の初夏を代表する白い花)の白い花が庭園に爽やかな彩りを添えてくれます。また、現在モミジ(日本の秋を代表する紅葉樹)は赤ワインのような深い色合いをしていますが、これから緑へと変わり、秋には再び鮮やかな紅葉へと姿を変えます。こうして樹木や花々が、庭園にさまざまな表情をもたらしてくれるのです。
縁側で過ごす贅沢な時間

縁側に座って美しい庭園を眺めていると、穏やかで幸せな気持ちになっていきます。静寂の中、ウグイス(日本の春を告げる美しい鳴き声の鳥)の「ホーホケキョ」という鳴き声が聞こえてきました。※庭園内に入ることはできませんのでご注意ください。
裏庭から聞こえるカエルの鳴き声

書院(日本の伝統的な建築様式の部屋)でくつろいでいると、定期的に「ゲコゲコゲコ…」という音が聞こえてきます。書院の右手がメインの庭園、左手には池のある庭園があります。その池からカエルの鳴き声が聞こえてきていたのです。姿は見えませんでしたが、なんとも心温まる空間でした。
参拝の記念に御朱印を

参拝の証として御朱印(ごしゅいん、寺院や神社で押してもらう印章)をいただくことができます。お志として500円をお納めします。御朱印は日本の寺社参拝の伝統的な記念品として、多くの人に親しまれています。
住職からの温かいメッセージ

今回の取材では、住職の生島様が庭園のさまざまな魅力を教えてくださいました。「いろいろな日本庭園があるので、ぜひ日本庭園を好きになってください」とおっしゃっていました。この頼久寺庭園を訪ねたら、その魅力に触れて日本庭園を好きになること間違いなしです。
拝観時間・拝観料(入場料)

庭園拝観時間:9:00~17:00
定休日:年中無休
拝観料:大人400円、中高生200円、小学生以下無料、障がい者手帳をお持ちの方150円(介助者1名同額)
アクセス情報

所在地:岡山県高梁市頼久寺町18
交通アクセス(車):岡山自動車道賀陽ICから約20分
交通アクセス(公共交通機関):JR備中高梁駅から徒歩約15分
駐車場:普通車10台
頼久寺も見える!ループ橋展望台からの絶景

頼久寺からの帰り道、ループ橋展望台に立ち寄ってみました。ここは「高梁観光百選 大久保峠からの眺望」として選ばれており、映画「バッテリー」のロケ地でもあります。高梁市の町が一望でき、右の方向に頼久寺も見ることができます。
所在地:岡山県高梁市上谷町
おわりに

「頼久寺」は、日常から離れた別世界のような美しさでした。その静かで落ち着いた空間は、まさに「知る人ぞ知る名所」です。心ゆくまで静寂の中でその美しさを堪能できた感動は忘れられません。正直なところ、「この特別な場所は秘密にしておきたい!」という気持ちも少しありましたが、同時に「岡山にはこんなにも素晴らしい場所があるのだ」という感動を、ぜひ多くの方に知っていただきたいと思い、ご紹介させていただきました。ぜひ、足を運んでみてくださいね!
岡山県は、西日本の中央に位置しており、1年を通して雨が少なくて温暖な気候から「晴れの国」と呼ばれています。京都、大阪、広島の有名観光地めぐりの中間点でアクセス便利!瀬戸大橋を経由して四国に渡る際の玄関口でもあります。 また、「フルーツ王国岡山」とも呼ばれ、瀬戸内の温暖な気候の中、太陽を浴びたフルーツは、甘さ、香り、味ともに最高品質。 白桃をはじめ、マスカットやピオーネなど、旬のフルーツが味わえます! 「岡山城」や日本三名園の「岡山後楽園」、倉敷美観地区といった、歴史、文化、アートなど世界に誇る観光スポットもあります!