【福島】"おいしい"を届けたい。生産者とともに歩む「Hagiフランス料理店」
国内外から美食家が集う、福島の「Hagiフランス料理店」。地産地消を掲げ、地元・福島産の新鮮な食材を使っておいしいフレンチを提供しています。オーナーシェフの萩さんに、料理人になったきっかけや料理、そして福島食材への思いを伺いました。
地元食材の魅力を伝える「Hagiフランス料理店」
日本の福島県に、国内外の美食家たちが遠路はるばる訪れるレストランがあります。店の名前は「Hagiフランス料理店」。
開業したのは1998年。2011年の東日本大震災を経てオーナーシェフの萩春朋(はぎ はるとも)さんは、福島の生産者と心をひとつにして地元の食材のおいしさを世に広めることを決意します。
「生産者の心を理解してこそ、食材は本当のおいしさを発揮できる」。震災から10年経った今でも、萩シェフの故郷への愛と料理への思いは変わりません。
萩シェフに料理人になったきっかけや福島の食材への思いを伺いました。
料理人になったきっかけは"祖母の野菜"
「Hagiフランス料理店」にて撮影
「農業をしていた祖母のおかげで、我が家の食卓には祖母が心を込めて育てた野菜がいつも並んでいました。大自然に育まれた食材はこんなにもおいしい。食べ物の魅力を多くの人に知ってほしくて、料理人になろうと決意しました」。
笑みを浮かべながら、料理の世界に入ったきっかけ語るシェフの萩さん。
萩シェフは日本の有名料理学校・辻調理師専門学校でフランス料理を学び、フランスに渡り修行。フランス料理の奥深さにさらに感銘を受けました。修行を終えた彼はこう考えます。
「目や舌など五感で楽しむフランス料理を、日本の食文化と融合させ、地元・福島の食材で作り、お客さん一人一人に提供したい」。
限られた食材を活かす。1日1組限定で店を再開
「Hagiフランス料理店」にて撮影
2011年3月11日に発生した東日本大震災によって、福島の農業や畜産業、漁業は大打撃を受けました。
放射能被害や津波で田畑を失った農業従事者たちの多くはこの地を離れ、萩シェフの店を含む飲食店は経営をほとんど維持できなくなりました。
そんなとき萩シェフが目の当たりにしたのは、苦難に耐えながらも福島に残り、農業や畜産業、漁業を続ける一部の生産者たちの姿です。新鮮な食材や、地産地消の重要性に思い至ったといいます。
「Hagiフランス料理店」にて撮影
地元・福島の食材が限られるなか、どうしたら地産地消のフレンチをお客さんに提供できるだろうか。
考えた末「1日1組」の予約制で店を再開。店名も「Hagiフランス料理店」と改称し、8年間このスタイルで営業を続けました。そうしているうちに福島の農業や畜産業、漁業は徐々に回復し、食材も十分揃うようになってきたといいます。
「より多くのお客さんに福島の新鮮な野菜、肉、魚を食べてほしい」という気持ちから、現在は1日10名まで予約を受け付けています。
生産者から届く食材で、心揺さぶる料理を
「Hagiフランス料理店」にて撮影
地道な努力で地元の生産者や料理人たちと信頼関係を築いた萩シェフ。今では生産者から萩シェフに連絡がきて、旬のおいしい食材をもってきてくれるようになりました。
「生産者と料理人。職業は違っても“より多くの人にもう一度福島の食材を味わってほしい”という思いで、一致団結できるのです。
地元の農家や牧場主、魚市場の卸売業者、寿司店の大将はみんな私の料理の師です」。
震災前にはなかった連携が生まれていると、萩シェフは語ります。
"味"を楽しんでほしいから。名前のないメニュー
「Hagiフランス料理店」にて撮影
オープンキッチンの店内では、調理の様子から料理がテーブルに運ばれるまで、すべての過程を見ることができます。
調理をはじめる前に新鮮な食材をお客さんに見せるのが彼の流儀。このとき、食材の特徴や生産者たちの工夫についても説明をします。
訪日観光客のお客さんにはスマートフォンの翻訳機能や画像を使って説明しているのだそう。言語の違いはさほど問題ではないと萩シェフは考えています。
「最大の共通言語は“おいしい”ことですから」。
「Hagiフランス料理店」にて撮影
調理はできるだけ自然な方法で、というのが萩シェフのモットーです。
薪で焚くというシンプルな料理法を用い、食材そのもののおいしさを引き出すこともあります。
店の外に積み上げられた薪も福島産です。
「Hagiフランス料理店」にて撮影
店の料理には名前がありません。
シェフは毎朝その日の食材によってコースメニューを決め、料理に名前をつけないようにしています。
それが、お客さんに料理の名前ではなく、一品一品の味を楽しんでもらうことに一役買っています。
「Hagiフランス料理店」にて撮影
取材に訪れた日、筆者は3品の料理をいただきました。使われているのは福島産のメヒカリ、カツオ、アワビ。
最初に出されたのはメヒカリのサラダです。福島の常磐沖は全国有数のメヒカリの漁場で、沖合底びき網漁(トロール漁)が盛期を迎える冬から初夏にかけて、たくさんのメヒカリが水揚げされます。
ふっくらとした食感、さっぱりとした味が添えられた福島産の野菜によく合います。
「Hagiフランス料理店」にて撮影
続いて、表面をかるく炙って塩をふったカツオのたたき。
台湾出身の筆者はあまり刺身を食べないのですが、福島の新鮮なカツオは生臭さがなく、そのおいしさに驚きました。
特製のわさびソースをつけると、また違った風味が楽しめます。
「Hagiフランス料理店」にて撮影
最後は高級食材のアワビ。まるで絵画のような盛り付けに目を奪われます。
アワビの肝を大根で巻いた添え物は、いわきの海岸を表現しているのだそう。
「Hagiフランス料理店」にて撮影
アワビの切り方は寿司店の大将に教えてもらったという萩シェフ。断面がギザギザになるように切ると、より歯応えのある食感になります。
この日はカリフラワーのソース、アワビの煮汁と生クリームをあえたものの2種類のソースでサーブされました。
両方のソースを少しずつつけていただくと、アワビのもつ甘みが引き出されて美味です。
福島食材のおいしさを広めたい
震災前は多くのお客様に対して、多くの料理を提供しなければならなかったため、一つ一つの食材までこだわることができませんでした。
しかし、今はお客様の人数を限定することで、福島の食材の本当のおいしさを伝えたいと萩シェフは語ります。
「自分のアイデアや料理を通して、自然にお客さんたちから世間に福島食材のおいしさが広まっていくことを願っています」。
完全予約制。詳しくは公式HPをご覧ください。予約は0246-26-5174(英語対応あり)まで。
緊急事態宣言等の影響により店の営業日や営業時間は変更になる可能性があります。
Sponsored by 福島県
In cooperation with Hagiフランス料理店
Written by miho