東京・日本橋「ホテルかずさや」。日本の粋とおもてなしに触れる
江戸時代、町人の町として栄えた日本橋には、100年以上も営業を続ける老舗がいまも残ります。日本橋の歴史に触れる滞在では、宿泊するホテルにもこだわってみてはいかがでしょう。本記事では、2020年に創業130周年を迎えた「ホテルかずさや」を紹介します。
東京・日本橋へ行こう
Photo by Pixta
東京でで宿泊地を探すとき、人気エリアの浅草や東京駅周辺、高層ビルの立ち並ぶ新宿や池袋を候補にする人もいるでしょう。
MATCHA編集部がオススメしたいのは、日本橋。江戸時代に庶民の町として栄えた日本橋には、歴史を感じさせる独特の空気が漂っています。日本橋の魅力や宿泊施設「ホテルかずさや」を紹介します。
老舗文化の地・日本橋
「目には見えにくいかもしれませんが、日本橋には老舗文化があります」と語るのは工藤哲夫さん。日本橋の地で創業130年を誇るホテルかずさやの四代目経営者です。
「近隣では100年以上の歴史をもつ天ぷら店・てん茂や、創業200年を誇る鰻割烹店・大江戸が今日も営業しています。歴史をさかのぼるといろんな発見がある、日本橋にはディープなよさがあるのです」。
日本橋の時の鐘通りに面したホテルかずさや。時刻をつげる「時の鐘」が江戸で最初に設置されたのがこのエリアでした。
通りにはかつて、俳人・与謝蕪村が俳諧の修業をした「夜半亭(やはんてい)」や、鎖国時代に多文化交流の場となった「長崎屋」(※1)といった歴史的スポットも。これらの建物は残っていませんが、石碑などから歴史を偲ぶことができます。
ぜひホテルかずさやに宿泊して日本橋の老舗文化や歴史に触れましょう。
※1:長崎屋……長崎・出島のオランダ商館長が江戸の将軍に謁見する際、宿泊した場所。日本人とオランダ人の交流の場となった。
JR新日本橋駅から徒歩1分。街の中心地にも近い好立地
日本橋三越本店 Photo by Pixta
ホテルかずさやは、JR新日本橋駅から徒歩1分、JR神田駅から徒歩5分という好立地にあります。
日本橋の中心地へのアクセスもよく、デパート「日本橋三越本店」までは歩いて8分ほど。日本橋の老舗から話題のショップまでが入店するビル「コレド室町2」までは歩いて5分ほど。
荷物を預けてすぐに観光が楽しめるのも魅力です。
江戸の町人文化を取り入れて新装
1891年に日本橋で旅館としてスタートしたかずさやは、これまでに四度の建て替えを行っています。2020年7月に新装オープンする際「お客さんが日本橋に滞在していることを感じられるホテルにしたかった」という工藤さん。
江戸時代に考案された色味・四十八茶百鼠(しじゅうはっちゃはちねずみ)を館内に散りばめました。
Photo by Pixta
四十八茶百鼠とは、贅沢を禁じて服の色を制限する奢侈禁止令のもとで、江戸の町人(庶民のこと)たちが編み出した茶色や灰色などの豊富なバリエーションのことです。
幕府に許可された色(茶色・鼠色・藍)のなかで、庶民は微妙な色の染め分けをしておしゃれを楽しんでいました。ちょっぴりくすんだカラーは、ホテル館内に温かみや落ち着いた雰囲気を加えています。
和の雰囲気に浸れる客室
ホテルでは宿泊人数にあわせて選べる6種類(※2)の客室を用意しています。
どの部屋も車椅子で入れるバリアフリー仕様。シャワーや蛇口から出る水は、浄水器で不純物や塩素を取り除いています。宿泊者からは「おいしい」「シャワーの水が肌にやさしい」といった声も。
自慢の客室がこちらです。
※2……シングルルーム、セミダブルルーム、ダブルルーム、ツインルーム、トリプルルーム、デラックスツインルームの6種類。シングル・セミダブル・ツインルームには、シャワーブースもしくはバスタブのどちらかが設置されています。
シングルルーム
ベッドやデスク水回りなど、必要なものが揃ったシングルルームはひとり旅に。シャワーつき、バスタブつきの2種類があります。
「テレワーク応援プラン」でデイユースも可能です。
セミダブルルーム
シングルルームと同様にシャワー、もしくはバスタブつきから選べるセミダブルルーム。
バスタブつきの部屋には独立洗面台を設置。2人で宿泊しても、朝の準備を別々にできると好評だそう!
ツインルーム(シャワーブース付き)
友人や親子2人の宿泊にオススメなのが、シャワールーム付きのツインルーム。ベッドルームと水回りを扉で仕切れるため、プライバシーを守りながら快適に過ごせます。
通常のシャワーヘッドに加え、レインシャワーが設置されています。やわらかな雨のような水滴が、旅の疲れを癒してくれるでしょう。
デラックスツインルーム
ファミリーやグループには、最大3名まで宿泊可能なデラックスツインルームを。バスタブ、トイレ、洗面所はすべて独立した造りになっています。
こちらの客室でもテレワークプランを実施しています。気分転換にシャワーを浴びたり、ソファでくつろぎながらテレワークを満喫してみてくださいね。
一部の客室の壁面には、抗菌によいとされるシラス壁(※3)を使用しているものもあります。大浴場「時の湯」に行くまでの通路にも、シラス壁は使われていますよ。
※3:シラス壁……火山噴出物のシラスを主原料とした建築材料。
大浴場でゆったり
都内のホテルには珍しく、大浴場があるのもポイントです。黒を基調としたシックな「時の湯」でゆっくりと旅の疲れを癒しましょう。十和田石(※4)が敷かれた湯船は、水面が緑色に光り幻想的。
宿泊者は16:00から24:00と、6:00から9:00まで利用できます。
※4:十和田石(とわだいし)……秋田県で産出される緑色の凝灰岩。保温性が高い。
こだわりの和朝食
Picture courtesy of ホテルかずさや
旅館にルーツをもつホテルかずさやは、フロント横の食堂「時の鐘」でこだわりの和朝食を提供しています。日替わりの焼き魚と具だくさんの味噌汁、白米。漬物までおいしいと好評です。
ランチタイムも営業。「牛すき焼き定食」や「鯵フライ定食」「鯖の塩焼き定食」などの和定食を求めて、宿泊者だけでなく近隣のビジネスマンも訪れます。
ホテルかずさやで日本橋を満喫
2020年7月、コロナ禍の真っ只中での新装オープンに不安はなかったのでしょうか。工藤さんに伺うと、
「先代たちは関東大震災や第二次世界大戦をのりこえながらも営業を続けてきました。いまは大変な状況ですが、私も泣き言をいっていられません」
とにっこり。工藤さんは続けます。
「日本橋は歴史と伝統の集積地。歴史に興味のある方にぜひ来ていただきたい」。
館内2Fには日本橋やホテルの歴史が学べる「時の鐘通りミュージアム」も。滞在して、日本橋の歴史や江戸の庶民の暮らしに想いを馳せてみてはいかがでしょう。
ホテルかずさやには宿泊者が快適に過ごせる工夫がたっぷりと詰まっています。旅館時代から受け継がれたおもてなしの心に触れる、思い出深い旅になりそうです。
Written by An Nagino
Photos by Karin
Supported by 日本旅館協会 東京都支部