【静岡・伊豆】「いずタビPickUp!レポ」~修善寺和紙漉き体験編~
伊豆のいいコト・いいモノを完全な独自目線でしたためる 今回は修善寺紙谷和紙工房で和紙漉きを体験
「いずタビPickUp!」は、静岡県伊豆市の体験や特産品を購入できるウェブサイトです。
「いずタビPickUp!レポ」では、「いずタビPickUp!」に掲載されているところへ足をはこび、感じたことや体験したことをしたためます。
「時を超えて届く紙」と出会う一日
伊豆修善寺温泉はコンパクトな温泉街だ。赤い橋がかかっていて、お寺さんがあって。竹林があり、足湯もある。蕎麦と甘味処だって。
そんな温泉場から西へとゆるやかな坂道を15分程歩くと「紙谷」という地区にたどり着く。名前が示している通り、今から100年くらい前は紙職人が集まる集落だった。ところが大量で安価な洋紙の普及により和紙の需要が減り40軒以上あった紙漉き業は次々の廃業の大打撃。日本三大和紙に加えて歴史ある修善寺紙だったが、ついに最後の一軒も明治時代に廃業し、「紙谷」という地名だけが今に残ることとなった。
しかし修善寺紙への執着と言えようか、愛情と言えようか、人の想いというのは強い。誰か1人でもその想いがあると襷は繋がるものである。1985年に「修善寺紙を再現する会」が発足。途中高齢化があり活動を休止した時期もあったが、ついに2021年伊豆市地域おこし協力隊として舛田拓人さんが就任。1000年前とも言われる歴史ある修善寺紙の本格的な復活と事業化に舵を切ることとなった。
和紙の歴史を学び実践する
体験ツアーの前半は座学。上記以上に興味深くわかりやすく歴史と和紙づくりの為の材料や工程の側面から説明してくれる。舛田さんのツアーはどんな質問であれ“舛田さんとして”返答してくれるところ。単に回答が来るのではなく、舛田さんの色が添えられて私の元に大切に届けられる。(紳士!)そういうところが後半の和紙漉き体験の随所に感じられた。
このツアーに於いて座学は大変に重要な工程で、後半の実践に入る際に少し襟を正すような気持になる。それは座学で教えてもらった約1000年前とも言われる歴史の中に詰まった何としてでも未来に繋ぎたかった人々の想いの襷リレーがそうさせるのかもしれない。
カッコいいことを言ったが、実践となるとそうもいかない(笑)
簡単にちゃぱちゃぱと水を操り紙を漉いていく舛田さんだが、自分がやるとなると話しは別で、「ああやって、その次は、こうやって・・・」と舛田さんの教えてくれた手順を頭でフル回転してしまう。回転したところで、1周回って、最初何だっけ?となる私に、舛田さんが「最初は一緒にやりましょう」と微笑みながら手ほどきしてくれるので、そこは皆様ご安心を。
ちなみに「名刺」「葉書」「美濃版紙」の3つのパターンから紙漉きを選ぶことが出来る。今回は私は葉書を選び、植物を入れて乾かすことにしました。(乾くまでには時間がかかるので後日出来上がったら工房から配送されますよ。)
名刺や葉書は漉くための道具である「桁(けた)」のサイズが小さいので、水を水平に保ちながら漉いていきやすい。美濃版紙は桁が一番大きいので、子どもさんには難易度が高くなると思われる。しかしやってみることもまたよし。この地区の子どもたちは卒業証書をその大きい美濃版紙を紙谷和紙工房で漉いているのだ、オシャレじゃない?
緊張の過程をいくつも(舛田さんからのかなり手厚いサポートを受けながら)くぐり抜けて、葉書サイズの和紙は一旦形になった。ここからは楽しくて気楽なところで、お好きな植物をピンセットで乗せて空想を広げていけばいい。とか言って、実際やると不器用さと「上手くやりたい欲」が爆発しあわあわするのであるが、それもまた一興。
途絶えた伝統の再現と今との融合を「実験」する
最後に和紙の原材料の1つである三椏の畑を見に行った。元気に育っている三椏だが、まだ材料になるには少し時間が必要。原材料から材料をつくり、歴史のままに修善寺紙を再現しようとする舛田さんと仲間たち。
伝統工芸の収益化の課題はありつつも、舛田さんから伝わってくるのは仮説と実行を繰り返す「実験」だ。本質に辿り着くまで続くこの頂上なき実験の現在地は麓か、5合目か、本人にも誰にもわからないことだ。
そのことを静かに楽しみ、本質に辿り着かない現状への正しい怒りを持ち合わせる舛田さんの今後と、数日後、家に届く自作の葉書が楽しみな日となった。
今回わたしは1人で体験した。それもよし。目的も様々で、それもまたよし。しかしながら敢えて体験をおススメしたいのはこんな皆さんだ。
・子どもやご家族と一緒に本物の創作活動に触れたい方
・今ここでしか作れない特別なお土産が欲しい方
・1000年前の世界に触れたい方
・昔ながらの紙の伝統製法に出会いたい方
・職人の世界を覗いてみたい方
さぁ紙谷和紙工房に足を踏み入れ歴史を歩いてみませんか?襷を受け取った舛田さんがあなたをお待ちしています。
この記事の制作者
📷: 齋藤洋平│観光カメラマン
伊豆市インバウンド推進プロジェクトチーム(通称「IIP」)は、伊豆の観光資源を活かした魅力ある国際観光地を目指し、伊豆市への外国人観光客の誘致や受け入れ体制の整備等を促進することを目的として設置した組織です。 伊豆市は、自然と農業が豊かで、温泉や海水浴場、山岳地帯など、様々な観光スポットがあります。また、東京から電車で約2時間とアクセスが良く、日帰り観光や週末旅行にも最適な場所です。 【カバー画像に関する注意事項】 カバー画像は、伊豆市を彩る写真コンテスト入賞作品です。 撮影者:尾島 裕樹 作品名:「小雪(しょうせつ)を彩る」 カバー画像の無断転用及び複製を禁止します。 カバー画像の利用については、伊豆市観光情報サイトでご確認ください。