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「アイヌ民族」はかつて、日本列島の北部一帯に暮らしていた先住民族です。この記事では、彼らのたどってきた歴史や育んできた文化、日々の暮らし、そして大切にしてきた信仰などを深く掘り下げます。また、北海道各地に点在する、アイヌ文化を体験できる注目のスポットを厳選し、その魅力を紹介します!
北の大地、北海道で生きる先住民族「アイヌ」。彼らの豊かな文化や深い歴史に触れることで、日本の多様性を体感できます。
アイヌ文化や歴史に出会える観光スポットを厳選して紹介するので、伝統と自然が息づく場所でアイヌの魅力に触れてみませんか。
Picture from Coexisting with Nature: Hokkaido’s Upopoy National Ainu Museum and Park
「アイヌ民族」は日本の北部、特に北海道を中心とした地域に、古くから居住する先住民族です。
政府の調査では、現在の人口は約11,450人で、平成29年の調査時よりも世帯数・人口が減少しつつあります。
独自の文化と歴史を持ち、伝統的な生活様式や言語、芸術などを継承していますが、現代社会においてその存続が課題となっています。
参照:北海道「令和5年『北海道アイヌ生活実態調査』の実施結果について」
Picture from 北海道・阿寒湖:大自然で先住民族「アイヌ」の文化に触れる体感ツアー
「アイヌ語」は文字を持たず、叙事詩「ユカラ」で歴史を口承し、次世代へ伝えています。
自然界のすべてに魂が宿る”という考えを基にした『アニミズム』を信仰し、カムイ(神々)への感謝を込めた祭りや儀式が、日常生活に深く根付いています。
伝統的な家屋や主食であるサケ・鹿肉・山菜を中心とした食文化のほか、刺繍や木彫りなどの工芸、トンコリやムックリなどの楽器による音楽も特徴的です。
近年では、古式舞踊の復活や新しいアイヌ音楽の創作など、文化の再生と発展に取り組む動きが広がっています。
アイヌ民族が誕生したのは、北海道に初めて人類が到来した約3万年前にさかのぼります。
彼らは千島や樺太などを含む北海道に住み、周辺地域との交易を通じて生活を営むとともに、独自の文化を育んできました。
しかし、17世紀以降、松前藩の交易支配や和人の経済社会の浸透により、彼らの社会的立場が弱まります。
19世紀には、和人とロシア人の進出で住む土地を奪われ、伝統文化の禁止や強制移住、日本語習得の同化政策が進行しました。
そして戦後、彼らは差別に抗議し、貧しい暮らしの改善や権利回復を目指し、世界の先住民族と連携した活動を始めます。
江戸時代、松前藩の支配により自由貿易が制限され、不利な条件での取引を強いられていました。
1630年代の商場知行制や1669年のシャクシャインの戦いで、彼らの生活はさらに悪化します。
1789年に起こった松前藩や和人商人を殺害するクナシリ・メナシの事件や、1792年のロシア船の蝦夷地(えぞち)来航を契機に、彼らへの支配や統制が一層強化されました。
1899年、明治政府は「北海道旧土人保護法」を制定し、日本人に同化させる政策を始めます。
この法律はアイヌ民族の保護を名目に、彼らの土地や文化を奪い、日本的な教育や農耕生活を強制しました。
その結果、独自文化は失われ、多くのアイヌ人が差別や偏見を受けるようになります。
人気アニメ・マンガの「ゴールデンカムイ」が描く明治末期は、彼らにとって伝統的な生活様式の変化を迫られ、貧困に陥る苦難の時代でした。
また、教育面でもアイヌ学校が設立されましたが、和人児童の学校に比べて教育内容が劣るなど、差別的に扱われてしまいます。
明治時代以降、日本政府は同化政策の推進を継続し、アイヌ語の使用や伝統的な文化・生活習慣を禁止します。
その結果、日本語の習得を強いられるとともに、長年培ってきた生業であるサケ漁やシカ猟も禁止されたため、彼らの文化と生活は、根底から揺るがすほどの大きな衝撃を受けました。
1997年に日本政府は、北海道旧土人保護法を撤廃すると同時に、「アイヌ文化振興法」を制定します。この背景には、国連における先住民族の人権を認める世界的な動きがありました。
北海道旧土人保護法は、アイヌ民族に対する差別的な扱いを正当化していたため、その撤廃により日本国内でも彼らの人権が見直されます。
新たに制定されたアイヌ文化振興法は、アイヌの言語や文化を保護・振興し、次世代に伝えることが目的です。これを契機に、アイヌ文化の復興と多様性の尊重が進められました。
アイヌ民族の豊かな文化や歴史に触れられる観光スポットを5つ厳選しました。貴重なアイヌの世界をぜひ体感してみてください。
Picture courtesy of PR Times
「ウポポイ(民族共生象徴空間)」は、2020年7月に白老町でオープンした、アイヌ民族の歴史と文化を学ぶためのナショナルセンターです。「国立アイヌ民族博物館」と「国立民族共生公園」、そして「慰霊施設」を含む複合施設として設立されました。
アイヌ語で「大勢で歌う」を意味する「ウポポイ」の名のもと、多彩な展示やアイヌ古式舞踊の上演、伝統芸能や食文化の体験が提供されます。子どもから大人まで、アイヌの歴史と文化を楽しみながら学べる貴重なスポットです。
ウポポイ(民族共生象徴空間)
住所:北海道白老郡白老町若草町2丁目3
営業時間:9:00〜17:00 (2025年4月以降は時期によって変動)
定休日:月曜日、年末年始(12月29日~1月3日)、3月1日~3月10日
※月曜が祝日または休日の場合は、翌日以降の平日に閉園
公式HP:https://ainu-upopoy.jp/
「二風谷アイヌ文化博物館」は、アイヌ文化を保護・振興し、未来へ伝承していくことをコンセプトにした博物館です。
文化遺産に指定されている民具やチセ(家)、ユカラの音声など、沙流川流域のアイヌの生活や文化に関する資料が展示されています。
他にも、アイヌ工芸の体験プログラムを提供する「アイヌ工芸伝承館ウレㇱパ」や「沙流川歴史館」、「平取町アイヌ文化情報センター」などの観光スポットも充実しています。
二風谷アイヌ文化博物館
住所:北海道沙流郡平取町二風谷55
営業時間:9:00~16:30
定休日:12月16日~1月15日、11月16日~12月15日および1月16日~4月15日は月曜休館(その他は休まず開館)
公式HP:https://www.biratori-ainu-culture.com/trip/nibutani-museum/
札幌市にある「アイヌ文化交流センター(サッポロピリカコタン)」は、アイヌ語で「札幌の美しい村」を意味します。展示室には、約300点もの貴重な伝統衣服や民具などが展示されており、入館料200円で観覧が可能です。
工芸品の制作や衣装の体験を楽しめる体験コーナーや、約500冊のアイヌ文化に関する書籍をそろえた情報コーナーの他、復元されたチセ(家)やヘペレセッ(檻)、プ(倉)が置かれた「歴史の里」など、アイヌ文化を幅広く学べます。
アイヌ文化交流センター(サッポロピリカコタン)
住所:北海道札幌市南区小金湯27番地
営業時間:8:45~22:00
定休日:月曜日、祝日、毎月最終火曜日、年末年始(12月29日~1月3日)
公式HP:https://www.city.sapporo.jp/shimin/pirka-kotan/
釧路市の「阿寒湖アイヌコタン」は、約120人のアイヌ人が実際に生活する集落です。
古式舞踊を鑑賞できる屋内劇場「イコロ」や、阿寒湖アイヌのアートギャラリー「コタン屋」「オンネチセ」などのさまざまな施設があります。
「まりも祭り」や「ウタサ祭り」、「ヒメマス祭り」などのイベントや、伝統料理や創作料理を味わえる飲食店、工芸や楽器などの体験プランなどが充実しており、アイヌ文化に深く触れられます。
幸せを運ぶと言われる「コロポックル」がお土産として人気です。
阿寒湖アイヌコタン
住所:北海道釧路市阿寒町阿寒湖温泉4丁目7-19
営業時間:9:00~21:30
定休日:年中無休
公式HP:https://www.akanainu.jp/
「函館市北方民族資料館」は、1926年に建てられた旧日本銀行函館支店の建物を利用し、アイヌ民族をはじめとする北方民族の生活や文化を紹介しています。
木彫りや刺繍、切紙細工、ムックリ制作など、伝統工芸の体験イベントが盛りだくさんで、学校の自由研究テーマにぴったりです。幕末から明治初期までのアイヌの生き様を表した「アイヌ風俗12ヶ月屏風」は、ぜひ見てほしい作品です。
函館市北方民族資料館
住所:北海道函館市末広町21-7
営業時間:
4〜10月 9:00〜19:00
11〜3月 9:00〜17:00
定休日:館内整理休館日(不定期)、年末年始(12月31日~1月3日)
公式HP:https://www.zaidan-hakodate.com/hoppominzoku/
アイヌ民族は北海道を中心に暮らす先住民族で、豊かな文化と歴史を受け継いでいます。ウポポイや阿寒湖アイヌコタンなどの人気観光スポットでは、アイヌ文化の奥深さと美しさを体感できるので、「ゴールデンカムイ」の物語がさらに身近に感じられるでしょう。