北海道・阿寒湖:大自然で先住民族「アイヌ」の文化に触れる体感ツアー!
北海道東部にある美しい湖、阿寒湖。この地で、先住民族「アイヌ」の文化を体感できるツアーが始まります。アイヌ自らがガイドし、森の中で、湖のほとりで、アイヌの伝承を聴きながら伝統楽器を演奏したりするツアー。本物のアイヌ文化に触れてみませんか?
「アイヌ」の文化が受け継がれる阿寒湖
北海道東部の釧路市にある湖、阿寒湖。
美しい自然に囲まれた湖として知られていますが、ここはまた、古くから主に北海道で暮らしてきた先住民族「アイヌ」の文化が受け継がれる場所でもあります。
アイヌとは?
アイヌは、日本の先住民族。文字を持たない口承伝承の民族で、独自の音楽や踊り、美しい文様の衣装、深い精神性をもつ信仰など、豊かな文化を有しています。
"アイヌ"とは彼らの言葉で「人間」を意味しています。彼らは森や川などで狩猟や漁労、採集などを行い、自然と共生する暮らしをしてきました。
自然とともに生きるアイヌ
アイヌは、この世のあらゆるものに魂が宿っていると考えます。中でも、自然現象のように人の力が及ばないもの、動植物など人間に恵みを与えてくれるもの、道具など生きていく上で必要不可欠なものは、「カムイ(神)がこの世に姿を変えてやってきたもの」として敬ってきました。
自然と調和しながら、カムイに感謝して生きる。それは彼らの精神の根底にある考え方です。
独自の文化や言葉
アイヌの伝統的な着物には、渦巻き状など美しい文様の刺繍が施されている
北海道の大地で育まれてきたアイヌの文化。その血を受け継ぐ人たちは、自分たちの文化を絶やすことのないよう、大切に受け継いでいます。
たとえば、彼らの話すアイヌ語は、口承のみで伝えられた言語。通常日本で使われる日本語ともまったく異なるものです。「阿寒」「屈斜路(くっしゃろ)」など、多くの北海道の地名はアイヌ語が語源になっています。
彼らはアイヌ語で話し、自分たちの生活に密接に結びついた歌を歌い、踊りを伝えてきました。歌や踊りは独自の楽器(ムックリやトンコリ)を使って行われます。その楽器で奏でられる音楽、アイヌ語の歌は、不思議で神秘的な響きを持っています。
アイヌ文化は、白老(しらおい)や平取(びらとり)など北海道各地に根付いています。その中でも、阿寒湖は北海道最大のアイヌの集落「阿寒湖アイヌコタン」があり、彼らの芸術や伝統舞踊などを現在に伝える場所。
そんな阿寒湖の大自然の中で、アイヌ文化を深く知り、体感できるツアーがはじまります。
アイヌの世界を体感できるツアー「Anytime, Ainutime!」
それが、「Anytime, Ainutime!」。阿寒湖の湖畔や周囲の森をガイドと一緒に散策し、自然とともに生きるアイヌの知恵や伝承に触れたり、伝統の楽器作りや刺繍を体験することで、アイヌの暮らしを五感で感じられるツアーです。
最大の魅力は、阿寒湖で暮らすアイヌが案内役を担当していること。アイヌ文化と阿寒湖の地を愛し、誰よりもよく知る彼らの言葉から、本物のアイヌ文化を感じられるまたとない機会です。4種類あるツアーの魅力を、それぞれご紹介しましょう。
※:ツアーは英語対応が可能です。
1.森の時間:アイヌの精神性に深く触れる
「森の時間」は、阿寒湖畔の森を歩き、アイヌの音楽にも触れられるツアーです。
アイヌの暮らしに、森はなくてはならないものです。山菜や木の実を採取したり、魚や獣をとったり、道具の材料を集めたりと、さまざまな生活の糧を森から得てきました。森での生活で得た知恵や精神性は、今日まで代々受け継がれています。
このツアーは、ガイドが自ら伝え聞いてきた、そんな森にまつわる伝承や風習を伝えながら進みます。
ガイドによって聞ける話はさまざま。たとえば、ガイドの1人で木彫作家でもある瀧口健吾(たきぐち けんご)さん。仕事柄、森に自生している木に詳しく、「その木がアイヌ語でどんな名前か、その木を使って何をつくるのか」なども解説してくれ、1つの木からアイヌ文化への扉が開いていきます(英語対応可)。
森に入る前には、「カムイノミ」という儀式を行います。これは森に入るにあたっての安全祈願の意味があり、アイヌは事あるごとにカムイノミを行います。
儀式を終えると、阿寒湖温泉の市街地からもほど近い「イオルの森」へ。森はアップダウンが少なく、体力に自信がない方でも気軽に歩けるコース。途中には日本百名山にも数えられる、雄阿寒岳(おあかんだけ)を間近にのぞむ絶景スポットも。
ムックリはおみやげとして持ち帰ることができる
最後は、アイヌ文化が息づく森の中で、手作りのムックリを演奏します。ムックリは、薄い板についた紐を引っ張り、音を鳴らす楽器。風の音など、自然の中にある音色を奏でることができます。音を出すには少しコツが必要ですが、ガイドが丁寧に教えてくれますよ。静かな森の中にムックリの音が響き、アイヌの世界に誘われます。
自然とともに暮らすアイヌの何気ない、でも私たちにとっては特別な日常を追体験できるプログラムです。
催行期間:6月〜翌3月
最少催行人数:2名(定員10名)
対象年齢:小学生以上
所要時間:約1時間30分
参加料金:5,610円(税込)
2.湖の時間:阿寒湖の絶景とともに
「湖の時間」は、森に加えて、雄大な阿寒湖の絶景も楽しみながら、アイヌの音楽や暮らしの知恵をじっくり学び、体験できるコース。森の時間よりも1時間ほど行程が長く、アイヌの話をしっかりと聞きたい方にオススメです。
阿寒湖の自然の中でも、山や湖といった象徴的なものにはアイヌのユニークな伝説が数多く残されています。阿寒湖に暮らすガイドから物語や伝承を聞きながらツアーを楽しみましょう。
コースでは、まず伝統楽器「ムックリ」を簡単な彫刻で制作。この体験ができるのは「湖の時間」だけです。板を削り、厚みと形を整えて紐を通し、ムックリを作ります。所要時間は30分ほど。
完成したら森へ向かいます。ガイドの案内で、湖岸に沿って森を歩きます。「森の時間」コースよりも、さらにゆっくり森を散策できるロングコースが設定されています。
森の奥へと進んだら、手作りのムックリを鳴らして演奏を楽しみましょう。ムックリはおみやげとして持ち帰ることができますよ。
道中は自然を観察しながら、アイヌ料理の話を聞いたり、遊覧船を横目に見ながら歴史などについて学ぶことができます。
さらに道を進むと、雄阿寒岳と阿寒湖を一望できる絶景スポットに到着! 絶景をバックにアイヌ茶をいただきましょう。アイヌは森に自生している植物を活用して、いろいろなお茶を飲んでいました。疲れた身体にアイヌ茶が沁み渡ります。
散策スタートからゴールまでは約1時間。思い出の写真とともに、アイヌへの理解が深まる忘れがたい時間になることでしょう。
催行期間:6月〜翌3月
最少催行人数:2名(定員10名)
対象年齢:小学生以上
所要時間:約2時間30分
参加料金:7,700円(税込)
3.創る時間:伝統デザインを体験
「創る時間」では、刺繍・木彫体験を通して、アイヌ伝統の文様の特徴や意味を学ぶことができます。
「アイヌ文様」は暮らしに密接に関わる衣服や道具に使われてきた伝統的なデザインで、自然の中からヒントを得て形作られたと言われています。アイヌの人々が文様や道具に込めた想いなど、ガイドの話を聴きながら、刺繍または木彫り作業を体験し、手作りする楽しさを感じられます。
刺繍を教えてくれるのは、西田香代子(にしだ かよこ)さん。阿寒湖アイヌコタンで長年民芸店を営みながら、若手に刺繍の技法を伝えています。
彼女は「相手の顔を思い浮かべながら作るんだよ」と話します。刺繍という営み、またその文様がアイヌの人々にとって何を意味するのか、文化的な背景も含めて丁寧に教えてくれます。
木彫体験では、ネックレスとキーホルダーのどちらかを選択。文様を彫刻刀で彫っていきます。子どもでも小学生以上なら体験可能です。
催行期間:通年
最少催行人数:2名(定員10名)
対象年齢:刺繍体験、木彫体験ともに小学生以上
所要時間:刺繍体験・木彫体験、ともに約1時間
参加料金:刺繍体験・木彫体験、各4,290円(税込)
ツアーへの参加・予約方法
紹介したツアーはいずれも予約制です。4月末頃から予約受付開始、ツアーの催行は2020年6月1日から。下記の公式HPをご覧いただき、予約してください。
また、ツアー内容は変更になることがあります。最新の情報や詳細につきましても公式HPをご覧ください。
「Anytime, Ainutime!」公式HP:https://www.anytimeainutime.jp
阿寒湖の観光スポット
阿寒湖で、真冬の冷えた朝だけに見える霜の花"フロストフラワー" Photo by Pixta
せっかく阿寒湖を訪れたなら、ぜひ阿寒湖とその周辺もゆっくり回ってみてください。阿寒湖の魅力の1つは、雌阿寒岳・雄阿寒岳をはじめとする雄大な山や、深い森などの豊かな自然。散策するだけでも、心が洗われます。
阿寒湖はまた、世界で唯一、天然の球状マリモが群生することで知られ、「阿寒湖のマリモ」は、国の特別天然記念物に指定されています。
現在も約120人が住む北海道で最大のアイヌの集落「阿寒湖アイヌコタン」には、民芸店やおみやげ店が集まり、アイヌの芸術や信仰の魅力に触れられます。
阿寒湖アイヌコタンに隣接して、「阿寒湖温泉街」があります。足湯や手湯もたくさんあり、気軽に温泉を楽しめるのも魅力的。お湯は無臭・無色透明で刺激が少ないことから「万人の湯」と呼ばれ、子どもからお年寄りまで幅広い方に親しまれています。
阿寒湖へのアクセス
阿寒湖エリアの最寄りの空港は「たんちょう釧路空港」、駅はJR「釧路駅」です。東京などから行く場合は、飛行機で釧路空港まで行き、バスまたはレンタカーなどで阿寒湖に向かうのが便利です。
釧路空港まで
釧路空港 Photo by Pixta
東京の羽田空港から釧路空港までは、飛行機で約1時間45分。北海道内で移動する場合、新千歳空港から釧路空港まで、飛行機で約45分。料金は時期や航空会社によって異なります。
釧路空港から阿寒湖温泉まではバスが出ており、約1時間15分。料金は大人2,190円です。時期によって本数が異なるため、バス会社の公式HPをご確認ください。レンタカーなどの車では、空港から阿寒湖温泉まで約1時間ほどです。
釧路駅まで
釧路駅 Photo by Pixta
北海道内で移動する場合は、鉄道という選択肢もあります。JR「札幌駅」から「釧路駅」まで、特急スーパーおおぞらで約4時間〜4時間半。料金は普通車指定席で9,990円です。
「釧路駅」から阿寒湖温泉までは、バスで約2時間。料金は大人2,750円です。車の場合は、約1時間20分ほどで到着します。
アイヌツアーを楽しもう!
アイヌの深い精神性に触れられるツアー「Anytime, Ainutime!」。この機会にぜひ、阿寒湖の大自然で彼らの文化に触れてみてください!
Written by moet
Sponsored by 釧路市
Pictures courtesy of ソーゴー印刷(特に明記していない写真すべて)