栃木県那須塩原の秘湯・板室温泉:歴史と魅力を徹底解説

板室温泉は栃木県那須塩原市の山間にある千年の湯治場。1971年に国民保養温泉地に指定され、自然景観も魅力。肌に優しい無色透明のアルカリ性単純温泉で、湯上がりはしっとり滑らか。本記事では、その歴史や入浴法、周辺の自然をご紹介します。
1:板室温泉の歴史

板室温泉の歴史は平安時代まで遡ります。1059年に那須三郎宗重が狩りの途中でこの温泉を発見したと伝えられています。その後、「下野の薬湯」として知られ、多くの人々が湯治のために訪れるようになりました。1695年には、会津中街道(会津と関東を結ぶ主要な交易路)の整備によって宿場町としても発展し、温泉地としてさらに賑わいを見せるようになりました。
2:板室温泉の特徴
泉質と効能

板室温泉の泉質は無色透明のアルカリ性単純温泉で、源泉温度は38~45℃と適温です。温泉に浸かり湯の中で肌をなでると、ぬるりとした感触があり、次の瞬間には驚くほどさっぱりとした肌触りに変わります。

肌に優しく、湯上がり後もこのさっぱりとした感覚が持続するのにもびっくり。この泉質は、神経痛、筋肉痛、関節痛、疲労回復、健康増進など、さまざまな症状に効果があるとされ、「薬湯」と称される所以が理解できます。
独特の入浴法「綱の湯」

板室温泉には、伝統的な入浴法「綱の湯」があります。これは、浴槽の梁から下がる綱につかまりながら、胸腰まである深めの浴槽に立ったまま浸かる方法です。この入浴法により、胸から足先まで均等に水圧がかかり、血行促進や関節痛の緩和に効果があるとされています。

かつては共同浴場が一般的でしたが、現在でも「板室健康のゆグリーングリーン」や「幸乃湯温泉」など一部の温泉施設で体験可能です。湯治の後には杖が不要となるほどに回復したといい、板室温泉は「杖いらずの湯」とも呼ばれるようになったそうです。
3:おすすめの日帰り温泉施設
板室健康のゆグリーングリーン

那珂川沿いに立つ日帰り入浴施設で、常に地元の方々や観光客で賑わっています。大浴場にはジャクジーや寝湯も備え、開放的な露天風呂からは那珂川の清流を望むことができます。
特に、先述の「綱の湯」を体験できる施設として知られ、垂れ下がるロープにつかまりながら入浴することで、血行促進や関節痛の緩和が期待できます。(※綱の湯のある浴室は男女週替わり・営業時間は季節によって異なるため事前に確認が必要です。)

その他にも、広々とした休憩所や食事処もあり、昼食の時間帯は、軽食の提供もしています。ゆったりとくつろげる空間が魅力で、地元の方々の憩いの場にもなっています。
春には目の前を流れる那珂川に102匹のこいのぼりが飾られ、休憩スペースからその様子をみられるのも魅力の1つ。四季折々の自然の景色を楽しみながら過ごすことができます。
幸乃湯温泉

大正時代の雰囲気を感じさせる宿「幸乃湯温泉」は、日帰り温泉としても利用できます。数種類の湯船があり、ミネラル豊富な自家源泉を贅沢にかけ流しで楽しめます。湯量豊富な自家源泉は毎分290ℓが流れ、加温や加水は一切行われていないため、自然そのままの温泉を堪能できます。

落差4mの豪快な「大滝打たせ湯」は、迫力満点の湯流れが魅力の露天風呂です。打たせ湯では、お湯を直接身体の部位に当てるのではなく、身体に沿わせるように流すのがポイントだそう。

こちらの施設でも「綱の湯」を体験可能です。深さは125cm~140cmほどあり、浴槽の底に玉砂利が敷き詰められているのが特徴。入浴中に足裏を適度に刺激し、血行促進や疲労回復に寄与すると考えられています。

その他にも天候に左右されない全天候型かやぶき露天風呂等もあり、様々なお湯を堪能できるのが魅力。露天風呂は日替わりになるので、「大滝打たせ湯・鮫川岩湯・開放型桧湯」側になるか、「綱の湯・全天候型かやぶき露天風呂・十和田石湯」側になるかは当日行ってみてからのお楽しみ!

幸乃湯には宿泊者専用の「お座敷風呂」もあります。宿泊の様子をご覧になりたい方は下記のリンクよりご覧ください。
4:自然を楽しめる周辺スポット
板室温泉は、日光国立公園内に位置する山あいの静かな保養温泉地です。標高は約530mで、四季折々の美しい景観を楽しむことができます。春には新緑、夏には深緑、秋には紅葉、冬には雪景色と、訪れる季節ごとに異なる日本の豊かな自然を肌で感じることができるでしょう。
木の俣渓谷

那珂川の支流である木の俣川が流れる美しい木の俣渓谷は、春の新緑や秋の紅葉など、四季折々の自然美を楽しめるスポットとして人気です。
渓谷沿いには遊歩道が整備されており、植物や大岩、奇岩が織りなす景観を眺めながらの散策が可能です。特に4月~10月までのグリーンシーズンは多くの観光客が訪れます。
沼ッ原湿原
沼ッ原湿原は、那須連山の西端、標高1,230メートルに位置する亜高山帯の湿原です。約230種の植物が確認されており、ニホンザル、オオジシギやカッコウなど、多様な動物たちの生息地でもあります。
整備された木道を巡りながら、自然観察を楽しむには絶好の場所です。
那須フィッシュランド

渓流釣りやバーベキューを楽しむことができ、家族連れにも人気のスポットです。釣った魚はその場で塩焼きやからあげにして味わうことができ、新鮮な渓流魚の美味しさを堪能できますよ!

また、屋根付きのバーベキュー場も完備されており、手ぶらで訪れてもバーベキューを楽しむことができます。

5:まとめ

板室温泉は、千年以上の歴史を誇る栃木県那須塩原市の秘湯であり、古くから湯治場として人々に親しまれてきました。無色透明のアルカリ性単純温泉は、肌に優しく、美肌効果や疲労回復に優れた泉質として知られています。
四季折々の自然に囲まれた温泉地で、周辺にはハイキングや観光スポットも点在し、温泉とともに自然の美しさも堪能できます。都会の忙しさを離れ、静かな温泉地でリフレッシュしてみてはいかがでしょうか?
6:アクセス
▶東京からの交通手段
・東北新幹線利用:東京駅から東北新幹線に乗車し、那須塩原駅で下車します。所要時間は約70分です。
・在来線利用:東京駅から宇都宮線(東北本線)を利用し、黒磯駅で下車します。所要時間は約3時間です。
▶那須塩原駅から板室温泉へのアクセス
バス

那須塩原駅西口の3番乗り場から関東自動車のバスが運行しており、板室温泉までの所要時間は約50分です。(黒磯の駅も経由しますので、在来線を使って黒磯に来られる方もこちらのバスを利用できます)

※乗り場番号は地面に記載されているのでお間違えのないように!
レンタカー
公共交通機関の本数が限られているため、板室温泉へのアクセスはもちろん、その周辺の観光を快適に楽しむためには、レンタカーの利用が非常に便利です。那須塩原駅周辺には複数のレンタカー会社があり、以下の店舗がございます。
タクシー
那須塩原駅から板室温泉までタクシーを利用する場合、所要時間は約25分~30分です
国民保養温泉地とは、温泉利用の効果が十分期待され健全な保養温泉地として、「温泉法」に基づき環境大臣によって指定されています。全国に79箇所の温泉地が指定されています。(2024年10月現在) 国民保養温泉地の選定は、おおむね以下の基準によって行われています。 第1 温泉の泉質及び湧出量に関する条件 (1)利用源泉が療養泉であること。 (2)利用する温泉の湧出量が豊富であること。なお、湧出量の目安は温泉利用者1人あたり0.5リットル/分以上であること。 第2 温泉地の環境等に関する条件 (1)自然環境、まちなみ、歴史、風土、文化等の観点から保養地として適していること。 (2)医学的立場から適正な温泉利用や健康管理について指導が可能な医師の配置計画又は同医師との連携のもと入浴方法等の指導ができる人材の配置計画若しくは育成方針等が確立していること。 (3)温泉資源の保護、温泉の衛生管理、温泉の公共的利用の増進並びに高齢者及び障害者等への配慮に関する取組を適切に行うこととしていること。 (4)災害防止に関する取組が充実していること。