【特集】西ノ島町の美田八幡宮と十方拜礼
平安時代に始まり各地で民俗芸能として根付いていた「田楽」は、島根県の西ノ島にも伝わり、400年以上にわたり受け継がれ、現在も踊り続けられている。
日本には、平安時代に始まった伝統芸能「田楽(でんがく)」があります。もともとは豊作を祈る歌や舞から発展し、長い年月をかけて各地の民俗芸能として根付いていきました。
島根県の離島・西ノ島にも田楽が伝わり、そして400年以上引き継がれたこの伝統芸能は今も島で踊り続けている。
美田尻に鎮座する「美田八幡宮」

西ノ島町の美田尻(みたじり)地区に鎮座する「美田八幡宮」は、地元の人々から「八幡さん」と親しまれています。別府港から徒歩5分、旧黒木小学校の横に位置している美田八幡宮の境内には桜の木が植えており、春になると、桜が咲き誇る姿を楽しむ多くの人が訪れます。

境内には常設の土俵があります。西ノ島に数ある神社の中でも、これを備えているのはここ、美田八幡宮と、浦郷に鎮座する由良比女神社の2社だけです。
毎年9月15日に行われる例大祭では、奇数年ごとに「十方拝礼」と相撲が奉納されます。
古くから受け継がれた伝統芸能「十方拝礼」

鮮やかな衣装をまとった踊り手たちが、鼕の音と囃子の歌に合わせて舞を披露します。中世にタイムスリップしたかのような幻想的な雰囲気が、観客を魅了します。
田楽は豊作を祈願する祭礼などから生まれた芸能で、古くから伝われてきました。美田八幡宮で奉納される田楽は十方を礼拝することから、「十方拝礼」(しゅうはいら)と呼ばれ、1992年に国の重要無形民俗文化財に指定されました。美田八幡宮の棟札からは、1590年に「十方拝礼」奉納の記録がありますが、口伝によると12世紀の時にすでに西ノ島に入ってきたと云われています。
見どころと構成

祭礼の奉納は、3部で構成されます:
1.「神の相撲」(かんのすもう)
実際に相撲を取るではなく、若い少年2人が相撲を取る動きをする儀式です。
2.「獅子舞」

二人立ちの獅子舞で、寝こんだり、ノミ取りをする等の所作をします。
3.「田楽」
踊り手たちが色鮮やかな衣装を着用し、特徴的な模様が描かれた笠や鶏の冠を被り、小鼓やササラまたはコザサラを使って舞います。

神社の拝殿の前に設置された木組みの舞台は踊り手の足の運びによって「響き」を生み出し、演出の一部として観客の耳を楽しませます。
終わりに

中世の面影を色濃く残っている「十方拝礼」は、様々な文化が流入している隠岐の中でも、西ノ島でしか見られません。島前神楽と異なる、優雅で荘厳な「室町の風情」が感じられます。現代の騒ぎを離れ、静かに「十方拝礼」を見つめる時間は、あなたの心にもきっと残る体験になるでしょう。
美田八幡宮の式年祭は今年の9月14日に開催する予定で、相撲と「十方拝礼」の奉納に神輿渡御も行われます。伝統芸能に興味のある方は必見です!
島根県の島根半島の沖合い約65kmの日本海に浮かぶ隠岐諸島にある、西ノ島。隠岐諸島には有人島が4つあり、一つの島で一つの町を形成して2番目に大きな島が西ノ島です。 550万年前の火山の噴火により形成されたこの島は、隠岐を代表する景勝地『摩天崖』や『通天橋』、隠岐のいわがきなどの新鮮な海産物、神楽や田楽などの伝統文化など、「自然」、「文化」、「食」、「ひと」の魅力がある島です。