国内唯一のオイルバス!最北端の温泉郷、北海道・豊富温泉の日帰り&宿泊湯巡りガイド
日本では唯一の油が混じった温泉「豊富温泉」。北海道・稚内空港から車で45分ほどの場所にあり、日本最北端の温泉郷とも言われています。本記事では、世界でも珍しい「油風呂」の歴史や効能、日帰り・宿泊で楽しめる温泉スポットを詳しくご紹介します。
温泉マニアなら一度は訪れたい!世界的にも珍しい泉質の豊富温泉とは

日本最北端の空港・稚内空港から車で約40分。緑いっぱいの風景の中にあるのが、1926年に開湯した「豊富温泉」です。

豊富温泉は、石油の試掘によって偶然発見された珍しい温泉。天然ガスとともにお湯が噴出し、今でも温泉には油が含まれています。
お湯に油が含まれている温泉は、日本では1つ、世界でも2つだけとされるとても珍しいもの。
弱アルカリ性で高張性の湯は、油分を含んでいるため黄色に濁り、リラックスする石油の香りを放ちます。柔らかく、優しい泉質は、身体の疲れを解きほぐしてくれますよ。

また、豊富温泉は1992年に「国民温泉保養地」にも指定。温泉郷の中には、自炊して長期間泊まれる湯治宿もあります。
アトピー性皮膚炎や乾癬などの皮膚疾患への効能が有名で、全国各地から湯治に来る方も多いのだとか。日本最北端の温泉郷としても知られており、温泉好きなら一生に一度は訪れたい名湯です。
日帰り利用も!豊富温泉を満喫できる温泉スポット3選
豊富町内には、さまざまなシチュエーションで利用できる日帰り温泉施設がそろっています。料金や利用時間などをチェックしながら、ぜひ旅のスケジュールに組み込んでみてくださいね。
サウナと温泉が一度に楽しめる「ホテル豊富」

ホテル豊富は、豊富温泉郷の中で最も多くの部屋数を誇る宿泊施設。創業から少しずつ増設し、現在の形になっています。

ホテル豊富の大浴場は、半円型の独特な形をしており、「温泉」「真水沸かし湯」「サウナ用冷水」の3種の温泉が備わっています。
浴場に入ると、まず出迎えてくれるのは香り高い温泉の匂い。檜の香りのようなフレッシュな香りは、油が含まれている豊富温泉特有のものなのだとか。リラックスできる香りと、ほんわかした湯けむりだけで、早くも温泉気分が満喫できてしまいます。

洗い場でしっかり身体を洗い、いよいよ入浴タイム。最初は身体を温めるために「真水沸かし湯」へと入浴しました。
半身浴からゆっくりと全身を預けると、柔らかいお湯が身体を包み込んでくれます。温泉から漂う安らぐ香りも相まって、気づくと目を閉じてリラックスモードに突入。五感で温泉を楽しむことができました。

39〜42度ほどに設定されている「温泉」と「サウナ用冷水」は、サウナとともに楽しむのにぴったり。豊富温泉唯一のサウナ室は、地元の方だけでなく、観光客の方からも愛されています。
ホテル豊富では、全ての浴槽で源泉掛け流しの贅沢なお湯に身体を預けられます。日帰り入浴は11時〜20:00まで利用できます(19:30最終受付)。

大人600円、小人300円で入浴でき、観光で立ち寄った際に気軽に入浴するのにぴったりです。
2種類の温度の温泉が楽しめる「ふれあいセンター」

ふれあいセンターがあるのは、豊富温泉郷の中心部。豊富町が運営する温泉施設です。
ふれあいセンターは、全国の町営温泉施設でも珍しく、2種類の温度の温泉に入れるスポット。1つは「湯治湯」と呼ばれる38〜39度ほどの低温の温泉です。

元々湯治場として栄えた豊富温泉の名残で、ぬるめのお湯の「湯治湯」は今も健在。毎朝加温し、男湯には温泉原油を加えます。

ロープで括っているのは、原油が一気にお湯へ広がらないようにするためなのだとか。ゆっくりと浴槽全体に原油を行き渡らせることで、油分のムラを防ぎます。

ぬるめの「湯治湯」は、夏場でも肩までゆっくり浸かってリラックスできる空間。温度が体温に近いためか、入浴していると身体が軽くなり、無重力空間のような居心地の良さを感じました。

もう一つの温泉は「湯治湯」の後にオープンした「一般浴場」。「湯治湯」よりも熱めのお湯がお好みの方におすすめの浴場です。

湯治湯よりも広い一般浴場は、初めて訪れる方にピッタリ。窓際一面がガラス張りになっており、開放的な気分で豊富温泉を堪能できます。
お湯の温度以外は湯治湯と変わりないですが、よりゆったりと広い浴槽で温泉が楽しめますよ。

日帰り入浴では、この2つの温泉を大人510円、子ども250円で堪能できます。1日2回の入浴ができるため、たとえば朝風呂をしてから観光やアクティビティを楽しみ、夜に再び入浴するといった楽しみ方も可能です。
自由な楽しみ方ができるふれあいセンターの温泉は、時間を余すことなく観光したい方にピッタリですよ。
早朝・夜間も日帰り入浴が楽しめる「ニュー温泉閣ホテル」

ふれあいセンターから歩いて1分の距離にあるのが、1989年創業のニュー温泉閣ホテル。
日帰り入浴の営業時間は、7:00〜8:30と13:00〜21:00となっており、早朝、夜間にも豊富温泉を楽しむことができます。朝風呂や、観光・アクテビティの帰り道など、さまざまな場面で利用しやすいでしょう。

ホテルに入ると出迎えてくれるのは、ノスタルジックなフロントと、名産品がたくさん並んだ売店。

ワクワクした気持ちで受付を済ませ、いざ入浴タイムです。
広々とした浴槽には、毎日心地よい温度に加温された温泉がなみなみと揺らいでいます。温かい蒸気と、気持ちが和らぐ油の香りに出迎えられ、ゆっくりと至福のひと時を堪能します。

タイル張りの落ち着いた浴室内は、静かに目を閉じて、心身を休めるのにぴったり。ご褒美のような入浴タイムを心ゆくまで楽しめますよ。

また、入浴後には、豊富温泉の恩恵である美肌効果も実感できるはず。豊富温泉は肌への浸透率が高いため、入る前よりもしっとりふっくらとした肌に出会えますよ。
1927年創業の老舗温泉宿「川島旅館」を旅の拠点に

日帰り利用はもちろん、宿泊にもおすすめなのが、豊富温泉郷の中でも老舗の「川島旅館」。豊富温泉が発見された1年後、1927年にオープンしました。

2016年に全面リニューアルしたこちらは、ウッドスタイルの洗練された雰囲気が魅力です。おひとり様からカップル、友人同士、ご家族など、さまざまな旅行スタイルで利用しやすいお宿です。

宿の扉を開けると、出迎えてくれるのは2Fへ続く大階段と、アットホームなフロント。フロントでは宿泊、日帰り入浴の受付をしており、丁寧に宿のイロハを教えてもらえます。

今回宿泊したのはシングルルーム。裸足で歩きたくなるような木の床と、天然木の良い香りが漂う心地よい雰囲気は、まさに大人の隠れ家のようです。

トイレと洗面所は共用で、1Fと2Fにそれぞれ1箇所ずつ用意されていました。

宿泊の目玉であるお風呂は、翌朝10:00まで入浴可能。日帰りの場合は13:00から20:00まで利用可能です(19:30最終受付)。

部屋から浴衣やバスタオルを持参し、いざ入浴です。扉を開けると、湯けむりとともにモダンな石造りの浴槽が見えてきます。
間接照明で彩られ、黒を基調とした空間は、これまでの温泉のイメージを変える洗練された印象を受けました。

十分に身体を洗い、温泉に体を預けると、適温のお湯が1日の疲れをゆっくりほぐしてくれるような感覚に癒されます。お湯にはところどころ茶色の湯の花が浮いており、「油風呂」と呼ばれる所以を実感できました。

身体を温めたところで、川島旅館自慢の露天風呂へ移動。
湯口からは時折お湯が放出され、木々の揺らめきや風の音に心身が安まるのを感じられます。

時間によっては、露天風呂をそのまま貸切にすることも可能。また、館内のデラックスルームに宿泊すれば、お部屋から直接露天風呂に入浴することもできますよ。

豊富温泉郷ではミライノトウジと謳い、「睡眠」「運動」「こころの栄養」などと、より湯治の効果を実感するために必要なポイントを伝授しています。

このポイントの1つを構成しているのが「食事」。川島旅館では、日本料亭で修行したシェフを迎え、北海道産の食材をふんだんに使用し、ここでしか味わえないグルメの数々を堪能することができるのです。

今回、夕食でいただいたのは「ビジネスプラン」のコース料理。他にも、良質なバターをふんだんに使用した「バターづくしプラン」や、北海道の恵みを詰め込んだ「板長おまかせプラン」などが選べます。

コースのメニューは日替わりで、サラダ、メイン、ご飯や汁物等がセットになっています。

この日のメニューは、アブラガレイとハマチのお造り・フグの唐揚げ・ローストチキンなど、ボリューム満点のラインナップ。

肉厚で脂たっぷりのハマチや、ぷるんとした口当たりが楽しいフグ、そして香ばしいソースがしっとりとしたお肉によく合うローストチキンと、どれも絶品で食事の手が止まりません。

食事の締めには川島旅館特製の「湯上がりプリン」をいただきました。毎日食べたくなるようなやさしい甘みと濃厚な味わいが口いっぱいに広がり、北海道の恵みを改めて実感できる逸品です。

お腹と心が満たされたら、1Fの共有スペースで話に花を咲かせるも良し、自室にこもって読書をするも良し。ゆったりと流れる豊富温泉の時間を有意義に楽しめます。

翌日の朝食メニューは、日替わりのバイキング形式。いちから仕込んだ漬け物やきんぴら、和え物など美味しそうなメニューが所狭しと並んでいます。

和食のおかずが多い中、ひときわ人気なのが「朝食ブレッド」のコーナー。宿の隣の工房で作っている「フレーバーバター」がちょっとずつ食べられる嬉しいシステムです。

ハチミツやブルーベリー、シャケ、トリュフなどのフレーバーバターが並び、パンやご飯と一緒にいただけます。お気に入りが見つかれば、フロントで購入もできますよ。

ミライノトウジの3要素「睡眠」「こころの栄養」「食事」が一度に体感できる川島旅館。何度でも訪れたくなる居心地の良さをぜひ一度、体感してみてはいかがでしょうか。
豊富温泉へのアクセス
豊富温泉郷への移動は、レンタカーを利用する方法と、公共交通機関を利用する方法の2種類があります。
季節や観光の目的、人数によってもアクセスの良し悪しが変わるため、詳しくご紹介します。
レンタカー利用
レンタカーを利用する場合、まずは稚内空港まで移動するのがベスト。稚内空港付近には複数のレンタカーショップがあるため、お好みの店を予約しておきましょう。
稚内空港から豊富温泉までは、車でおよそ40分ほど。ただし毎年11月〜4月ごろまでは積雪があるため、雪道の運転に慣れていない方は注意が必要です。
レンタカーは時間の縛りがなく自由に観光をしたい方や、大人数で移動する方におすすめです。
公共交通機関での移動
公共交通機関を利用する場合、稚内空港と新千歳空港のどちらからでもアクセス可能です。
稚内空港から出発する場合、空港バスを利用し、30分ほどでJR稚内駅までアクセスします。
その後JRを利用し、45分ほどで豊富駅まで移動。最後にJR豊富駅から乗車できる沿岸バスで10分移動すれば、豊富温泉に到着します。乗り継ぎ次第ですが、所要時間は1時間半ほどです。
新千歳空港からアクセスする場合は、JRを利用して札幌駅へ移動しましょう。札幌駅からは直通の「沿岸バス特急 はぼろ号」に乗車すれば5時間ほどで到着します。
または、JR宗谷本線でJR豊富駅までアクセスし、沿岸バスに乗り換えれば、豊富温泉まで移動できますよ。
公共交通機関の利用は、豊富温泉での連泊や湯治での長期間滞在を考えている方におすすめの移動手段です。
国民保養温泉地とは、温泉利用の効果が十分期待され健全な保養温泉地として、「温泉法」に基づき環境大臣によって指定されています。全国に79箇所の温泉地が指定されています。(2024年10月現在) 国民保養温泉地の選定は、おおむね以下の基準によって行われています。 第1 温泉の泉質及び湧出量に関する条件 (1)利用源泉が療養泉であること。 (2)利用する温泉の湧出量が豊富であること。なお、湧出量の目安は温泉利用者1人あたり0.5リットル/分以上であること。 第2 温泉地の環境等に関する条件 (1)自然環境、まちなみ、歴史、風土、文化等の観点から保養地として適していること。 (2)医学的立場から適正な温泉利用や健康管理について指導が可能な医師の配置計画又は同医師との連携のもと入浴方法等の指導ができる人材の配置計画若しくは育成方針等が確立していること。 (3)温泉資源の保護、温泉の衛生管理、温泉の公共的利用の増進並びに高齢者及び障害者等への配慮に関する取組を適切に行うこととしていること。 (4)災害防止に関する取組が充実していること。