世界的建築家・隈研吾氏が手がけた岡山県の美しい建築4選
岡山県内には2021年東京オリンピックの新国立競技場を設計した世界的建築家・隈研吾氏による建築が点在しています。観光文化施設、地域交流の拠点となる公園、カフェやコワーキングスペースを備えた複合施設等、誰でも訪れることができるスポットを紹介。
-
目次
- 隈研吾氏について:世界が注目する日本の建築家
- 1.GREENable HIRUZEN(真庭市)
- 2.まびふれあい公園(倉敷市)
- 3.吉備高原Nスクエア(吉備中央町)
- 4.岡山大学「共育共創コモンズ」(岡山市)
- まとめ:地域と共に創る隈研吾建築の魅力
隈研吾氏について:世界が注目する日本の建築家

隈研吾氏は、2021年の東京オリンピックで使用された新国立競技場を設計した日本を代表する建築家です。世界中で活躍する隈氏の建築が、なぜ岡山県内に数多く存在するのでしょうか。
なぜ岡山県に隈研吾建築が多いのか(筆者が考えた理由)
その理由は主に3つあります。
1. 地方との積極的なコラボレーション
隈氏は現在、地方自治体や地域と協力した建築プロジェクトを積極的に展開しており、日本各地にサテライトオフィスを設置しています。その一つが岡山県にあります。
2. 岡山県産の優れた建築素材
真庭市の「GREENable HIRUZEN」では、CLT(クロス・ラミネイティド・ティンバー:直交集成板)という木質パネル材料が使用されています。このCLTには、日本一のヒノキ生産地である岡山県産のヒノキが使われており、この素材との出会いが岡山での建築につながりました。
3. 地域とともに創る街づくり
隈氏は高知県梼原町や茨城県境町など、日本各地で長年にわたり地域と協力して街づくりを進めてきた実績があります。これらの町では、複数の隈建築が地域の景観を形成しています。現在、岡山県でも同様のプロジェクトが進行中です。
隈氏の建築の最も大きな特徴は、地域に住む人々の要望に寄り添い、その土地の素材を活用して設計されることです。これから紹介する4つの建築を通じて、その魅力を感じていただけるでしょう。
1.GREENable HIRUZEN(真庭市)

真庭市の蒜山高原(ひるぜんこうげん)にある「GREENable HIRUZEN」は、CLTパネルと鉄骨を組み合わせた革新的な建築です。この建物は、もともと東京の晴海に移設可能な仮設パビリオンとして建設されましたが、イベント終了後に解体され、真庭市に移築されました。メインの建物は「風の葉」という愛称で親しまれ、恒久施設として一般公開されています。「風の葉」の内部にも入ることができますので、ぜひ中からも建築を体感してください。

敷地全体が隈研吾氏のデザイン空間

「GREENable HIRUZEN」は、広大な敷地全体が隈氏によって設計されています。敷地内には「風の葉」のほか、サイクルセンター(自転車レンタル施設)、観光案内所、ミュージアムなど、様々な建物が点在しています。

真庭市蒜山ミュージアム

敷地内にある「真庭市蒜山ミュージアム」も隈氏の設計による建築です。ショップを併設したこのミュージアムは、入館料500円で見学できます。

ミュージアム内の階段や壁にも隈氏のこだわりが随所に感じられます。建物に入ると、木材のやさしい香りと温かみに包まれます。館内には隈氏の建築について紹介するコーナーもあり、建築への理解が深まります。

【真庭市蒜山ミュージアム】
所在地:岡山県真庭市蒜山上福田1205-220(GREENable HIRUZEN内)
TEL:0867-42-1178(真庭市生活環境部スポーツ・文化振興課)
営業時間:9:00~17:00(入館は16:45まで)
休業日:水曜日(祝日の場合営業、翌平日休館)
料金:一般500円、中学生以下無料
駐車場:7台(ヒルゼン高原センター駐車場も利用可)
2.まびふれあい公園(倉敷市)

2018年7月、記録的な豪雨により倉敷市真備町(まびちょう)は甚大な被害を受けました。「まびふれあい公園」は、決壊した堤防の跡地に、市民・市・国が一体となって建設した復興防災公園です。
隈研吾氏がデザインしたこの公園は、「平常時と災害時の両面で活用でき、地域の発展にもつながる公園」というコンセプトのもとに造られました。

公園の中央にそびえ立つのは、竹で作られた印象的なゲートです。真備の山々と調和する大屋根と、地域の特産品である竹を使って造られました。ゲートの左右には、コミュニティ施設「まなびのへや」と防災備蓄倉庫が配置されています。地域の人々の想いと地元の素材を大切にした隈建築の精神が、ここにも表れています。

「まなびのへや」には、被災と復興の記録を展示するスペースがあります。訪れた際には、ぜひこの地で起こったことを知ってください。建物の中に入ると、新鮮な竹の香りに包まれた心地よい空間が広がっています。
3.吉備高原Nスクエア(吉備中央町)

岡山県のほぼ中央、標高約400メートルの高原に位置する吉備中央町。ここにある「Nスクエア」は、コワーキングスペースとカフェを中心とした地域交流・創生施設です。ここでも「GREENable HIRUZEN」の「風の葉」と同様に、岡山県が日本一の生産量を誇るCLTパネルが使用されています。
cafeブラドで休憩

「Nスクエア」の1階にある「cafe ブラド」は、2025年6月にベーグルカフェとしてリニューアルオープンしました。

筆者が訪れたのは午後だったため、地元・吉備中央町産のブルーベリーを使ったNYチーズケーキとコーヒーのセット(990円)をいただきました。クリームチーズと生クリームの濃厚な味わいが絶品です。店内には隈研吾氏のサインや建築模型、書籍コーナーもあり、お気に入りの本を見つけてゆっくり過ごすのもおすすめです。

【cafeブラド】
所在地:岡山県加賀郡吉備中央町吉川4469-126 吉備高原Nスクエア1階
TEL:090-3376-6969
営業時間:7:30~15:00
定休日:なし
※臨時休業などは公式サイトの「cafeブラド営業日のお知らせ」に掲示駐車場:あり
4.岡山大学「共育共創コモンズ」(岡山市)

岡山大学津島キャンパス内にある「共育共創コモンズ」は、木造建築を学ぶ学生たちにとって実物大の教材となることを目指してデザインされた木の教室です。使用されている木材はCLT材。地元の素材にこだわる隈建築の理念が、ここでも一貫して表れています。

建物内部への立ち入りはできませんが、外観は見学可能です。木材建築特有の温かみが感じられる美しい建物です。

木材で作られた案内看板も魅力的です。受験シーズンなど大学の行事に配慮が必要な時期もありますので、訪問前に日程を確認することをおすすめします。
まとめ:地域と共に創る隈研吾建築の魅力

岡山県内で見ることができる隈研吾氏の建築、いかがでしたか。
今回の取材を通じて、隈研吾氏の建築についての書籍を読み、実際に現地を訪れる中で分かったことがあります。隈氏の建築が多様な表現を持つ理由、それは依頼主や地域に寄り添う姿勢があるからです。今回ご紹介した4つの建築は、すべて岡山の素材を使い、その場所に必要とされている建物として設計されました。
地域の人々の想いを形にし、その土地の素材を活かす。そうした思いが伝わってくるからこそ、隈氏の建築には温かみがあるのかもしれません。岡山県内に新しい隈建築が誕生したら、ぜひ訪れてみてください。きっと新しい発見があるはずです。
岡山県は、西日本の中央に位置しており、1年を通して雨が少なくて温暖な気候から「晴れの国」と呼ばれています。京都、大阪、広島の有名観光地めぐりの中間地点でアクセス便利!瀬戸大橋を経由して四国に渡る際の玄関口でもあります。 また、「フルーツ王国岡山」とも呼ばれ、瀬戸内の温暖な気候の中、太陽を浴びたフルーツは、甘さ、香り、味ともに最高品質。 白桃をはじめ、マスカットやピオーネなど、旬のフルーツが味わえます! 「岡山城」や日本三名園の「岡山後楽園」、倉敷美観地区といった、歴史、文化、アートなど世界に誇る観光スポットもあります!