旅の準備はじめよう
出産・育児にいくらかかる?日本で子どもを産むと決めたら読んでほしいお金の話
はじめての妊娠・出産は誰でも勝手がわからず戸惑うもの。特に外国籍の方は、日本での出産費用が気になる人も多いのではないでしょうか? 本記事では妊娠・出産・育児にかかる費用に加えて、妊婦が受けられる補助金や医療費控除についてもくわしくご紹介します!
外国籍ママも安心の医療費サポート
日本での出産を考えたとき、「日本人と同じサポートが受けられるだろうか?」と不安に思う方もいるかもしれません。
日本では妊娠・出産に関わる医療費は保険適応されないため高額になりがちです。その代わり、健康保険(国民健康保険・社会保険)に加入していれば、国籍や収入に関係なく受けられる補助金もあります。
本記事では、妊娠中・出産時・産後の3つのシーンに分けて、それぞれ何にどのくらいお金がかかるのか見ていきます。
多言語サービスを上手に活用しよう
妊娠・出産に関わることは病院や役所での手続きも多く、日本語に不慣れな場合はストレスを感じるものです。
そのため役所では、外国語が堪能な案内スタッフを常駐させたり、携帯型翻訳機を導入したりする事例も増えてきています。
たとえば多くの在日外国人が暮らす東京都新宿区では、区役所に英語・中国語・韓国語による生活相談窓口を設置しています(無料)。また、神奈川県では外国人住民のための子育て支援サイトを約10カ国語で作成しています。
住んでいる地域の役所に、在日外国人向けのサポート窓口があるか確認してみるといいかもしれません。
あわせて読みたい
妊娠中にかかる費用はどのくらい?
日本では一般的に、妊婦が出産までに受ける「妊婦検診」の回数を14回程度と定めています。毎回共通で行う健診だけでも1回5,000円~8,000円程度かかります。
通院にかかる交通費や、必要となるマタニティ用品の購入なども考えると、せめて医療費だけでも節約できたらうれしいですよね!
各地方自治体から妊婦へ提供されるもののひとつに「妊婦検診補助券(にんぷけんしんほじょけん)」があります。これは妊婦検診に使用できる総額10万円程度のチケットです。これを使えば、かかる費用が7万~12万円程度に抑えられます。
金額や補償内容は地域によって違いがありますので、役所の窓口や公式HPで内容を確認してみましょう。
ちなみに、自身が支払った検診費用も翌年の確定申告の際にいくらか戻ってくる可能性がありますので、通院の際の領収書や明細は保管しておきましょう! 詳しくはこちらで解説しています。
いよいよ出産!費用はいくら?内訳は?
出産費用には、入院費、検査・薬剤料など出産に関わるさまざまな費用が含まれており、平均的な総額は50万円程度といわれています。帝王切開(ていおうせっかい)や無痛分娩を選択する場合は、費用がさらに10万~20万円程度上がります。
ちなみに出産費用は地域によっても差があります。日本で一番高いといわれる東京都では、平均約62万円、もっとも安いといわれる鳥取県では平均約39万円です。
いずれにしても高額な出産費用。公的な補助金を利用して、自己負担額を抑えましょう。
出産費用の補助金は赤ちゃん1人あたり42万円!
出産費用を全額自己負担するのはとても大変です。そこで日本では、赤ちゃん1人につき42万円(※)が「出産育児一時金(しゅっさんいくじいちじきん)」として妊婦に支払われる制度があります。
この出産育児一時金は、健康保険に加入していれば国籍を問わず受け取れます。さらに「直接支払制度」を利用すれば、保健機関から病院へ直接支払ってもらうことも可能。費用を先に立て替える必要がなく、退院時に差額を後払いできるので便利です。
ちなみに出産費用が出産育児一時金の金額を下回った場合は、妊婦に差額が返金されます。
※:産科医療保障制度に加入していない医療機関などで出産した場合の支給額は、40万4,000円になります。
産後の費用は約50万円!?
産後には、赤ちゃんのために必要な医療費(定期健診、ワクチン接種など)やベビー用品、食費などにお金がかかってきます。
もし共働きの場合は、早い段階から保育園に預けたり、ベビーシッターを雇うことも考えなければならないでしょう。
産後にかかかってくる費用は、人によって差が出てくるところです。ある調査による、と0歳児の年間の子育て費用は平均約50万円(※)ともいわれていますので、出産前から計画を立てておくことをオススメします。
ちなみに、0歳から6歳まで医療費の自己負担額は2割が原則ですが、多くの地域では乳幼児の医療費をサポートする制度を整えています。たとえば、東京都では自己負担額の2割を助成してくれるので、医療費や薬代は実質無料になるんです。
※:財団法人こども未来財団 子育てコストに関する調査研究より
知って得する手当や給付金
これまでに紹介した以外にも、条件を満たすことで受け取れる手当や給付金があります。条件に当てはまっていても自動的にもらえるものは少ないため、自発的に情報収集することが大切です。
1.出産手当金
仕事をしている妊婦にとってうれしい制度が「出産手当金(しゅっさんてあてきん)」です。「出産育児一時金」と名前が似ていますが、このふたつは別の制度なので要注意。
出産手当金は、出産のため休職したことにより収入が下がった人を助ける制度です。勤務先の健康保険への加入が条件ですので、自営業や無職で国民健康保険に加入している人は残念ながら対象となりません。
給付にはいくつか条件がありますので、申請を考えている人は早めに勤務先に相談してみましょう。
ちなみに出産手当金でもらえる金額は、以下のように計算されます。
たとえば毎月の給料が30万円だった場合、1日当たりの給付金額は、
「30万円÷30日×2/3=約6,666円」となります。
給付は、出産日の前42日~出産の翌日から56日目までのうち、会社を休んだ期間を対象に行われます。出産予定日が遅れた場合はそのぶんも給付日数に加算されるので安心です。
2.育児休業給付金
日本では国籍に問わず、子どもが1歳になるまでは育児のために労働者が仕事を休むことを法律で認めています。
出産後(※1)から、一般的に子どもが1歳になるまでの育児休業期間を対象にして給付されるのが「育児休業給付金」です。育児休業期間は基本的に給料が出ませんので、この給付金制度はとても重要。
※1:出産の翌日から8週間は産後休業期間にあたるため育児休業期間にはふくまれません。また、男性が給付金を取得する場合は出産当日からが支給の対象です。
気になる給付金額は、以下のように計算されます。
※2:育児休業前の6ヵ月分の収入(賞与は除く)を180日で割った金額です。
女性だけでなく男性が取得することもでき、条件を満たせば、両親ともに申請することも可能です。
3.児童手当
ここまで紹介したのは働く親の育児をサポートする制度。一方で「児童手当(じどうてあて)」は、日本国内に住む子どもの親すべてを対象としています。
具体的には、子どもが0歳から中学校修了まで(15歳の誕生日の最初の3月31日まで)、1人につき月額1万5,000円、または1万円を支給する制度です(※)。
※:手当を受け取る人の所得が一定額を超える場合、支給額は子ども1人につき月額5,000円です。
子どもの年齢 | 1人当たりの月額 |
0歳~3歳未満 | 1万5,000円 |
3歳~小学校修了前 | 1万円(第3子以降は1万5,000円) |
中学生 | 1万円 |
毎年3回にわけて給付されます。児童手当の使い道は家庭によってさまざま。子どもの将来に向けて貯金をしたり、学資保険や習い事の費用に使う人が多いようです。
そのほかの給付金について
住んでいる地域によって、独自に子育てサポートの制度をもうけている場合もあります。
たとえば出産費用が日本一高い東京都でも、港区では独自の取り組みとして、最大18万円の補助金が受けられる制度があります。
出産時だけでなく、小学校や中学校の入学祝い金を支給する制度や、シングルマザーやシングルファザーを支援する制度など、地域によってその取り組みはさまざま。住んでいる地域の役所の窓口や公式HPで調べておくとよいでしょう。
病院にかかった費用を節約できる医療費控除とは?
出産育児一時金などの補助金を使ったとしても、思いがけず医療費や入院費がかさむことはよくあります。
そんなときに覚えておきたいのが、確定申告による医療費控除。家族全員で1年間の医療費が10万円(所得が200万円以下なら、所得の5%)を超えた場合、確定申告を行うことで、払いすぎた税金を戻してもらうことができるんです。
病院でもらったレシートや領収証は確定申告の際に必要ですので、捨てずに保管しておきましょう。医療費控除の対象には、定期検診への通院費用や出産・入院のために利用したタクシー代もふくまれますよ!
具体的な医療費控除の金額は以下のように計算されます。
実際に戻ってくるお金は、医療費控除額に所得税率を掛けた金額です。たとえば医療費控除額が5万円、所得税率が20%の場合は1万円が手元に戻ってきます。
制度を知って出産と育児を楽しもう
赤ちゃんのためにしてあげたいことはたくさんありますが、子育てにはなにかとお金がかかります。ですから、公的な制度を利用して出費を抑える工夫も大切です。
また、多くの地域には子育て支援センターや保健センターなどの名称で、住民の子育てを助ける取り組みをしている施設もあり、育児に関するさまざまな相談にのってもらえます。
こうしたサポートを活用して、楽しく出産・育児に取り組んでみてはいかがでしょう。
All photos by Pixta
神戸在住。趣味は旅行とアート鑑賞。美味しいもに目がなく、5年間の中国・北京生活で火鍋の美味しさに開眼しました。