【レポート記事】gugulabは古道具を通して新しい未来をつくる

昔ながらの城下町に吹く新しい風

岐阜県郡上八幡は昔から郡上おどりで有名で、夏には何万もの人々が小さな城下町に集まり、輪になって踊ります。2022年、郡上おどりが世界的に評価され日本の風流踊りの一つとしてユネスコ無形文化遺産に登録されました。こうした祭りがあるからこそ郡上八幡は昔ながらの風情が残る町であり続けています。

そんな郡上八幡に新しい風が吹き始めています。

笠井夫婦

gugulabの店主である笠井夫婦。裕也さんと千賀子さんは2人とも郡上市出身。裕也さんは白鳥町で育ち、千賀子さん（みんな「つぼちゃん」の愛称で呼んでいます）は八幡町で育ちました。

裕也さんは映像の仕事をメインにしており、高校時代にスノーボード仲間の映像を撮っていたのがきっかけで、現在はウィンタースポーツから結婚式、自動車メーカーのPV撮影まで幅広く活動しています。つぼちゃんは幼い頃から絵を描くことが好きで、今はイラストレーターとして活躍しています。店舗関係のイラストを描いたり、以前は町屋で個人ギャラリーを開いていました。

gugulabのきっかけ

二人はデザインの才能と地元への愛を活かし、古道具屋「gugulab」を開店しました。郡上の古民家から集めた古家具や古材を改装・再利用して販売しています。

きっかけは、長野県諏訪にある「ReBuildingCenter JAPAN」（リビセン）を訪れたことでした。ReBuildingCenterは元々アメリカのオレゴン州ポートランドが発祥で、廃棄物削減のために素材の再利用を行う非営利団体です。日本のリビセンは歴史のある田舎の町で古民家の道具、木材、骨董品などをリユースできるようのお店です。いまだに１００年すら経っていない家を取り壊して建て直す日本において、環境のために再利用の文化を根付かせようとしています。

リビセンへの旅が二人に強い印象を与え、「郡上でもこれができる！」と感じ、gugulabを始めました。旅から1年も経たないうちに、郡上八幡の中心部にある酒蔵の跡地にオープンしました。同じ敷地内にはコーヒー屋、レストラン、ギャラリーなど、主に地元の若者が経営するお店が並んでいます。観光客だけでなく地元の方も楽しむことができ、新しい観光の形づくりに取り組んでいます。

古道具の再利用

gugulabは郡上周辺の古民家から古い道具や家具、建具を集めて販売しています。主に地元の高齢者の方たちからの依頼が多いですが、郡上の空き家に引っ越してきた移住者からの問い合わせもあるそうです。gugulabのおかげで、かつてはゴミになっていたものがまちなかで再利用されています。

食器、棚、本、人形。出てくるものは様々です。アンティークのお店で販売してそうな箪笥や、普段なかなか見かけないレトロなガラスや味わい深い木箱なども店に並んでいます。

道具は丁寧に掃除され、時にはリメイクもされています。例えば、箪笥にテーブル脚をつけて新しいサイドテーブルを作ったり、箱にオリジナルのデザインを印刷したりします。古いものが新しく生まれ変わり、誰かのゴミが次の人に愛される家具に変わります。

つぼちゃんは自身のデザインを活かしてgugulabのブランディングを手がけています。店内には手書きの看板やつぼちゃんのイラストがたくさん飾られています。そのイラストはTシャツやカレンダーにも印刷されて販売されています。改装された酒蔵ならではのおしゃれな雰囲気が生まれています。

そして、gugulabでは長い歴史を持つシルクスクリーン印刷とレーザー加工のワークショップも開催しています。詳しくはこちらをご覧ください。

郡上の未来

gugulabは古道具だけでなく、地元のアーティスト、職人、作家などの商品も販売しています。鮎釣りに使われる郡上の伝統的な魚籠、着物をリメイクした服、踊り期間中大人気だったつぼちゃんデザインの踊りTシャツなど、たくさんのクラフト商品が購入できます。地元の歴史を大切にしつつ、新しい郡上文化を支えていこうとしている2人の素敵なプロジェクト。gugulabを通して、彼らは郡上の未来を応援するコミュニティスペースを作り上げています。