【熊野古道シリーズ】紀伊路日帰りトレッキングモデルコース:海南から紀伊宮原へ

「熊野古道」とは、紀伊半島の和歌山県、奈良県、三重県、大阪府に広がる古来からの巡礼の路です。その中の紀伊路は、世界遺産に登録されていませんが、秋冬の日帰りトレッキングルートとしておすすめされています。
紀伊山地の霊場と参詣道
熊野エリアは古来より、日本屈指のパワースポットとされています。このような熊野エリアを訪ね、京都や大阪から熊野三山へ至る複数の参詣道の総称が、「熊野古道」です。
「熊野三山」とは「熊野速玉大社(新宮市)」、「熊野那智大社(那智勝浦町)」、「熊野本宮大社(田辺市)」という3つの神社の総称で、日本全国に数多くある熊野神社(おおよそ3,000社)の総本社です。
2004年7月7日、和歌山県・奈良県・三重県にまたがる3つの霊場(吉野・大峰、熊野三山、高野山)と参詣道(熊野参詣道、大峯奥駈道、高野参詣道)は「紀伊山地の霊場と参詣道」という名前でコネスコの世界遺産(文化遺産)に登録されました。
熊野古道ー紀伊路
今回取り上げるのは、熊野の入口とされた海南市藤白から、日本全国にみかんの産地として知られる有田市(海南駅~紀伊宮原駅)までの紀伊路ルートの一部です。
このルートでは、熊野古道の最初の難所と言われる藤白坂に出会いますが、『紀伊國名所図会』で、「熊野路第一の美景なり」と称賛されている「御所の芝(ごしょのしば)」という景勝地なども点在しています。もちろん、歴史を感じさせる由緒ある神社と、特産のみかんのうまみを満喫できる農園や店舗など、多彩な魅力を持つスポットもぜひ見逃さないでください!
下記で、おすすめのスポットをいくつか紹介します。
では、早速ですが、JR海南駅から出発しましょう。
1.鈴木屋敷
「鈴木姓」は、日本全国で2番目に多い苗字です(約178万人)。鈴木という姓のルーツであるとも云われています。和歌山県海南市の藤白神社の境内にある「鈴木屋敷」です。
「鈴木氏」は熊野旧三家(紀伊国熊野地方に強い勢力をもった豪族)の一つで、平安時代中期から後期にかけ、熊野から現在の海南市に移り住んだ一族は、122代続きました。
長い歴史を刻んできた家系でしたが、1942年(昭和17年)に当主が他界して以来、空き家となっていました。2013年に鈴木屋敷復元運動が始まり、2023年に復元工事が完成しました。

屋敷のお座敷からは日本庭園が一望できます。この庭園は、かつては「旧鈴木邸庭園」として和歌山県の文化財でしたが、現在は国指定史跡の一部となっています。
中央に亀島のある池泉回遊式庭園で、庭園好きの方にもおすすめのスポットです。

藤白坂に登る前には、このような全国における「鈴木氏」の方と深い繋がりがある場所まで是非ともお尋ね観て下さい。
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【JR海南駅】
↓1.0㎞、15分程
【熊野一の鳥居跡】
↓1.0㎞、20分程
【鈴木屋敷】
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2.御所の芝(ごしょのしば)
峠まで続く長い登り坂を登りきると、ようやく目に入ってくるのは、「熊野路第一の美景」と呼ばれる「御所の芝」です。ここには、地元で「峠の地蔵さん」と親しまれる地蔵様が祀られている地蔵峯寺があります。お寺の隣には藤白塔下王子跡があり、休憩所も整備されています。

お寺の裏に広がる高台は、かつて白河上皇(日本国第72代天皇)も足を留められた場所で、遠くには和歌浦、雑賀崎、加太と連なる海岸線を望むことができます。さらに視線を遠くに向けると、友ケ島の島影越しに淡路島や四国、六甲までも見渡せ、海と山の絶景を一望できる格別な場所となっています。

白河上皇の時代から幾多の人々を魅了してきたこの景色は、現代に至るまで、訪れる人々の心に深い感動を与え続けています。
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【鈴木屋敷】
↓0.5㎞、5分程
【有間皇子の墓】

↓1.6㎞、40分程
【藤代塔下王子(御所の芝)】
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3.橘本神社
「橘」という果実が初めて日本の歴史に登場したのは、第11代天皇垂仁天皇が田道間守(たじまもり)に不老長寿の霊菓を探ようと命じ、常世の国(中国)から持って帰られた古墳時代(3世紀中頃 – 7世紀頃)と言われています。
この橘が日本で最初に植えられたのが、現在の橘本神社の北側にある旧社地「六本樹の丘」だとされています。この橘は現在のみかんの原種であり、後に品種改良が重ねられたことから、この地は日本のみかん発祥の地として知られています。
「橘は菓子の長上にして人の好む所なり」との言い伝えがあるように、橘本神社は全国の菓子業者からも深い崇敬を集めています。毎年4月第1日曜日には、「全国銘菓奉献祭(菓子祭)」が開催され、全国の菓子業者から銘菓が奉納されます。
また、10月10日には例大祭「みかん祭」が盛大に行われ、県内外の柑橘業者や果物業者、地域の氏子たちが参拝し、神輿渡御や獅子舞、投餅などの伝統行事で賑わいます。
このような橘本神社は、柑橘や菓子業の祖、また文化の神として広く崇敬される田道間守命を主祭神とし、今も全国に渡って日本の果樹栽培の歴史と菓子文化の発展を守り続けています。

みかんといえば、今や日本を代表する果物の一つと呼んでも過言ではありません。せっかく紀伊路へ訪れたのに、そのみかんの歴史の原点である橘本神社に立ち寄らずに帰ってしまうのは、本当にもったいないですよ!
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【藤代塔下王子(御所の芝)】
↓1.5㎞、25分程
【橘本王子】
↓0.7㎞、15分程
【所坂王子(橘本神社)】
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4-1.みかんを満喫
昼食後、二つ目の峠を越え、湯浅方面へ下ると(途中、適宜休憩を取りながら進むのがおすすめ)、やがて本ルートの目的地であるJR紀伊宮原駅に到着します。
さらに、紀伊宮原駅から徒歩10分ほどの場所には、有田みかんと柑橘製品で知られる「伊藤農園直営ショップ みかんの木」があります。


季節ごとに、新鮮な採れたてのみかんや加工品など、多彩なお土産が店内に並んでいます。みかんバーガー、ジュースの飲み比べ、みかんを使ったパフェなど、みかんの風味を存分に活かした魅力的なグルメメニューも取り揃えています。まさにみかんの魅力を堪能できる至福の空間です!


帰り道へ向かう前に、ぜひお店を訪れ、当地域が誇る名産のみかんをお楽しみください!
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【所坂王子(橘本神社)】
↓3.5㎞、1時間20分程
【拝ノ峠頂上】
↓4.8㎞、1時間25分程
【JR紀伊宮原駅】
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4-2.長保寺
二つ目の峠である拝ノ峠の頂上から下る際、日本の歴史や神社に興味のある方には、このルートが特におすすめです。元の南行きルートから少し逸れ、西に向かってJR下津駅へ進むと、歴史豊かな長保寺に到着します。
長保寺は、和歌山県海南市下津町に位置する古刹で、平安時代中期(西暦1000年)一条天皇の勅願により創建された由緒ある寺院です。本堂、多宝塔、大門の3棟はともに国宝に指定されており、紀州徳川家の菩提寺(先祖代々のお墓があり、菩提を弔うための寺院)として知られています。
春には桜や紫陽花が美しく咲き誇り、平安時代の文化的魅力を今に伝える貴重な文化財です。
※2025年2月現在、以前に起こった土砂災害のため、長保寺は拝観できない状態となっています。
詳細については、HPで確認してください。
http://www.chohoji.or.jp/
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【所坂王子(橘本神社)】
↓3.5㎞、1時間20分程
【拝ノ峠頂上】
↓4.0㎞、1時間程
【長保寺】
↓2.0㎞、25分程
【JR下津駅】
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結語
本記事では、熊野古道・紀伊路の一つのルートの周辺スポットを紹介しました。
海南駅(海南市)~紀伊宮原駅(有田市)までのルートを歩行する場合、標準所要時間はおおよそ7時間です(歩行距離14.4km)。そのため、朝8時半前後に出発することをおすすめします。そうすれば、午後早い時間帯にJR紀伊宮原駅に到着し、電車で大阪まで帰るにも余裕があります。

時間をコントロールすれば、ゆっくりとみかんを味わい、周辺の温泉も楽しむことができます。古道を歩む旅は、単なる移動ではなく、日本の伝統と景観を五感で感じることです。このような紀伊路の魅力は秋から冬にかけても穏やかな季節に存分に味わえるでしょう。
写真・映像提供元
【伝統と現代が出会う場所】 私たちは、和歌山と大阪の魅力を世界へ発信します。 HP:https://www.japanrootsguide.com/jp 一緒に日本を旅し、心に響く物語と忘れられない体験を作りましょう。 和歌山の静寂な寺社仏閣や心を癒す緑豊かな山々、大阪の活気あふれる都市や美食まで、 その魅力を余すところなくお届けします。 ぜひご一緒に、日本の美しさを満喫しましょう。 『本アカウントは南海電気鉄道株式会社によって運営されています。』 【写真説明】 1.関西国際空港と難波を直結する特急Rapi:t 2.熊野古道中辺路 道休禅門(写真提供:(公社)和歌山県観光連盟)