岐阜・下呂温泉で体験する日本の伝統|秋の夜を彩る馬瀬川の「火ぶり漁」
岐阜県下呂市馬瀬地区で初秋限定に行われる伝統漁法『火ぶり漁』を解説。 松明の炎が鮎を追い込む幻想的な光景は、下呂温泉観光とともに楽しめる 特別な体験です。10月限定ツアーも紹介します。
下呂温泉から車で30分、清流馬瀬川の伝統漁法「火ぶり漁」


※画像提供:マルス写真スタジオ
日本の秋の夜、川面を彩る幻想的な炎の舞を目にしたことはありますか?本記事では、岐阜県下呂市に伝わる、初秋限定の伝統漁法「馬瀬の火ぶり漁」をご紹介します。この神秘的な光景は、きっとあなたの旅の記憶に深く刻まれることでしょう。
日本には、四季折々の美しい自然と、その中で育まれてきた独自の文化や伝統が数多く存在します。特に秋は、紅葉が山々を彩り、各地で収穫の喜びを分かち合う祭りが開かれる、魅力あふれる季節です。今回ご紹介する岐阜県下呂市も、そんな日本の美しい秋を満喫できる特別な場所です。
下呂温泉は名古屋駅から特急電車で約1時間40分
名古屋駅から特急「ひだ」に乗車すれば、約1時間40分で下呂温泉に直通でアクセスできます 。下呂温泉は1000年以上の歴史を持ち、有馬温泉、草津温泉と並ぶ「日本三大名泉」の一つとして知られています 。肌に優しいお湯と、昔ながらの街並み、地元グルメを楽しめる温泉街が魅力で、日本文化と自然の美しさを体感できる場所です 。
馬瀬川はその下呂温泉からさらに車で30分の場所にある、自然豊かな場所です。
伝統漁法「火ぶり漁」とは?
「火ぶり漁」は、岐阜県下呂市を流れる清流、馬瀬川に伝わる伝統的な漁法です。秋、産卵のために川を下る「落ち鮎」の習性を利用して行われます。漁師たちが松明(たいまつ)の炎を水面すれすれで振り回し、その光で驚いた鮎を網に追い込むという、古くから伝わる知恵と技が詰まった漁です。
秋の風が吹き始める9月、太陽が沈み暗闇が訪れる午後7時を過ぎると、馬瀬川で火ぶり漁が始まります。揺らめく炎が作り出す水面の輝きは、まさに「炎のアート」。水面すれすれで火の玉が動き回る様子は、訪れる人々を魅了し、日本の自然と文化が織りなす壮大なパフォーマンスを目の当たりにすることができます。

※画像提供:マルス写真スタジオ
かつて、火ぶり漁は馬瀬の住民にとって冬に備えるための貴重な食料を確保する「生活の一部」でした。最盛期には、一晩に1,000匹もの鮎が捕れることもあったと言われています。しかし、その過酷な労働と地域の高齢化により、火ぶり漁を行う人は減少していきました。
そんな中、「馬瀬の伝統を未来へと残したい」という熱い想いを持った住民たちが立ち上がり、「鮎とり隊」を結成 。2012年から観光客向けの体験メニューとして火ぶり漁の提供をスタートさせました。現在も10名から15名ほどのメンバーが活動を続け、中には小学生の頃から興味を持ち、手伝いに来る子どももいるそうです。火ぶり漁は、川の深さなどを知り尽くした経験がものを言う漁法であり、鮎とり隊内でその技術や知識が代々受け継がれています。
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火ぶり漁の仕組み
神秘的な火ぶり漁は、いくつかの手順を経て行われます。
1.網の設置: 火ぶり漁を行う淵に網を張ります。川の流れが強い場合は、石を重しにするなどして網が流されないように調整します。鮎を効果的に捕らえるためには、網をピンと張るのではなく、少しゆとりを持たせることが重要です 。

※画像提供:マルス写真スタジオ
2.松明を振り回す: 辺りが暗くなると、川に入った漁師たちが松明を振り回し、鮎を光で驚かせます 。水面近くで光をかざすことで、川の深い部分まで光が届き、より多くの鮎を網に誘導します。松明の火が水に触れると消えてしまうため、熟練の技と体力が必要です 。


※画像提供:マルス写真スタジオ
3.光に驚いた鮎が逃げる: 通常、夜になると石にへばりついて休んでいる鮎ですが、松明の光に驚くと石から離れて泳ぎ出します。馬瀬川にはアマゴやウグイ、イワナなども生息していますが、光に反応するのは鮎だけと言われています。
4.逃げた鮎が網に引っかかる: 泳ぎ出した鮎は胸びれあたりで網に引っかかり、抜け出せなくなります。鮎が網にかかると網の位置が変わってしまうため、漁師は網を調整しながら火を振り続けます。
5.網から鮎を外す: 漁の終わりには、川から網を引き上げ、引っかかった鮎を丁寧に外します。鮎とり隊の実演では、この鮎を網から外す作業を体験できる機会もあります。

※画像提供:南飛騨馬瀬川観光協会
火ぶり漁では「松明」と「網」を使う
火ぶり漁で使われる主な道具は、「松明」と「網」の2つです。かつて松明は松の根を細く割って作られていましたが、現在は竹の棒の先に油を染み込ませたタオルを巻き付けたものが使われています。網は軽量で丈夫なナイロン製で、1950年頃から普及し始め、この時期に馬瀬川での火ぶり漁が始まったとされています。

↑ 竹の棒の先に油を染み込ませたタオルを巻き付けたものを松明の代わりに使う
※画像提供:マルス写真スタジオ
「たくり漁」とは?

※画像提供:南飛騨馬瀬川観光協会
火ぶり漁と同時に行われることもある「たくり漁」は、「たくり」と呼ばれる先端にU字の針がついた道具を使って、川の中を覗き込みながら鮎を捕獲する方法です。名人は暗闇の中でも鮎の動きを捉えることができると言います。
火ぶり漁は"日本で最も美しい村"馬瀬で鑑賞できる!

※画像提供:南飛騨馬瀬川観光協会
火ぶり漁が行われる馬瀬地区は、岐阜県のほぼ中央部に位置し、旧馬瀬村のエリアにあたります 。面積の約95%を山林が占め、地域を貫くように馬瀬川が流れています。馬瀬川は、その清らかな水質から「日本一の鮎」が棲むと称されるほどで、全国有数の鮎釣りのメッカとして知られています。鮎釣りのシーズンには、日本全国から多くの釣り人が訪れます。
馬瀬は森・農地・川・人が共生している
馬瀬地区の美しい景観と生態系は、「馬瀬川エコリバーシステム」によって守られています 。森から湧き出る水は川の源となり、川面に落ちる木々の影は水温の上昇を防ぎます 。落ち葉は魚の棲み家となり、森で育った昆虫は魚の餌となるなど、森と農地、人、そして川が密接に共生する農村生態系が築かれています 。また、川辺にはできるだけ人為的な改変を加えない「自然護岸」が多く見られ、地域住民による清掃活動や公衆トイレの設置など、清流を守るための取り組みが積極的に行われています。
馬瀬地区は、日本の農山漁村の景観と文化を守り、地域の発展を目指す「日本で最も美しい村」連合にも加盟しています。この地域全体で自然と共生する文化が息づいているのです。
馬瀬の鮎は「日本一おいしい鮎」として知られています

※画像提供:南飛騨馬瀬川観光協会
馬瀬川で育った鮎は、その品質の高さから「日本一おいしい鮎」として知られています。鮎が川底の石に付着する藻(アカ)を食べて育つため、良質なアカを食べる馬瀬の鮎は「スイカのような香りがする」と言われています。
そのおいしさを裏付けるのが、毎年開催される「清流めぐり利き鮎会」での輝かしい実績です。この大会では、全国各地の清流で育った鮎の塩焼きを、姿、香り、わた、身、総合の5つの基準で食べ比べ、グランプリが決定されます。馬瀬川の鮎は、2010年と2017年の大会で準グランプリに輝き、2023年には見事グランプリを受賞しました。
馬瀬の鮎料理の中でも、やはり「塩焼き」は外せません。串に刺して化粧塩を施し、炭火でじっくりと焼き上げることで、鮎の旨みが皮の内側に閉じ込められ、香ばしくジューシーな味わいを楽しめます。

↑ 鮎の塩焼き ※画像提供:南飛騨馬瀬川観光協会
他にも、新鮮な鮎だからこそ味わえる「鮎の刺身」もおすすめです。新鮮な鮎を三枚おろしにして、わさび醤油でいただく、ぷりっとした淡白な味わいは、産地でしか体験できない逸品です。
特に火ぶり漁で獲れる「落ち鮎」は、秋の産卵期に向けて脂がのり、卵を抱えていることも多いため、夏の鮎とはまた違った格別の味わいを楽しむことができます。
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