コミックマーケット50周年。日本のオタク文化を支える巨大イベントの魅力と楽しみ方
2025年に50周年を迎えるコミックマーケット(コミケ)は、漫画やアニメ、ゲームなどの同人誌・同人作品の即売会として日本最大級のイベントです。記念すべき年に開催されたコミケのハイライトと、参加するためのヒントをご紹介します。
創造性とコミュニティを称える「コミックマーケット」

Picture courtesy of the Comic Market Committee
アニメや漫画は単なる娯楽ではなく、自己表現のための重要な手段です。
この考えこそ、コミックマーケット(コミケ)の根幹にあります。コミケは、同人(ドウジン)と呼ばれるインディーズのクリエイターが自身の作品を販売し、より多くの人々に届けるために始まったイベントです。個人やクリエイター集団(サークル)が漫画、ゲーム、ライトノベル、音楽、コスプレなど、多岐にわたる作品を生み出しています。
1975年に始まった当初、コミケは32のサークルと約700人の参加者が集まるアンダーグラウンドな集まりでした。それから50年が経ち、今では日本の漫画・アニメ文化を支える重要なイベントへと成長。現在では、2日間で約23,000のサークルが参加し、25万人もの来場者を集め、3,380人ものボランティアスタッフによって運営されています。
コミケを特別なものにしているのは、「表現の自由」という揺るぎない理念です。単なる即売会ではなく、共通の情熱で結ばれた創造性とコミュニティを祝う活気あふれる場なのです。
この記事では、コミックマーケット106の様子をご紹介します。また、海外からの来場者や参加者へのアドバイス、そして50周年を迎える冬のコミックマーケット107に関する情報もお届けします。
コミックマーケット106のハイライト
コミックマーケット106は、2025年8月16日・17日に東京ビッグサイトで開催。東・西・南展示棟の各ホールで、サークル、コスプレ、企業ブースが展開されました。
ここでは、私たちが初日に参加して感じたハイライトをいくつかご紹介します。
サークルエリア

Picture courtesy of the Comic Market Committee
2日間で、約23,000のサークルが作品を展示しました。
8つのホールにわたる各ブースには、同人誌、同人ゲーム、ファッション、アクセサリーなど、多岐にわたる作品が並びます。どれもアニメや漫画の世界からインスピレーションを得たものです。

少女・少年アニメ、RPG、オンラインゲーム、映画、特撮、メカ・SF、鉄道、旅行、Vtuberなど、人気のジャンルはすべて網羅されています。
参加サークルは、東京のクリエイターだけでなく、日本各地や海外からも集まっていました。初参加のサークルもあれば、毎回出展しているベテランサークルも多数。多くのサークルには熱心なファンがおり、強いコミュニティが形成されています。

同人誌エリアで私たちの目を引いたのは、「ツバサ屋&Guiltism」というサークルです。長年にわたり、ゲームのシナリオを基にしたイラスト小説のシリーズを出版しています。繊細なキャラクターデザインから、徹底したリサーチに基づいた作品づくりまで、細部へのこだわりは圧巻でした。

物販ブースでは、「Crab Craft」というキーキャップクリエイターに注目。キーボードのキーを再利用して、ジュエリーやキーホルダー、アクセサリーなどを制作しており、その独創的なデザインと技術力に感銘を受けました。
その他にも、コスプレイヤーのための衣装、アクセサリー、小道具などを制作するデザイナーも多数出展しており、コミケはコスプレイヤーにとって宝の山です。
会場を歩いているだけで、コミケが創造性を讃える場であることが伝わってきます。参加者一人ひとりが、日本の活気あふれるアニメ・漫画文化を支え、高めているのです。
コスプレエリア

Picture courtesy of the Comic Market Committee
コミックマーケット106は、コスプレイヤーにとっての楽園でした。複数の更衣室が用意され、会場全体がコスプレを楽しめる空間となっています。
コスプレイヤーとカメラマンのために、東・西・南の各展示棟に専用のコスプレエリアが設置されています。このエリアは、愛されるキャラクターたちが現実世界に現れたかのような活気あふれる光景です。『セーラームーン』や『鋼の錬金術師』といった古典的な名作から、『鬼滅の刃』や『チェンソーマン』といった人気作まで、多彩なコスプレが見られました。

コスプレは単に衣装を着るだけでなく、高い才能、時間、そして情熱を要するアートです。クリエイターは、メイクや小道具から、キャラクターのポーズや仕草に至るまで、細部にこだわり抜いています。
コスプレイヤーの写真を撮る際には、いくつかの重要なマナーがあります。コスプレイヤーを撮影したい場合、カメラマンは列に並び、順番を待つのが一般的です。また、写真をSNSにアップロードする場合は、事前にコスプレイヤーに許可を得るようにしましょう。
コスプレは、海外からの来場者にとっても大きな楽しみの一つです。他の来場者やカメラマンに敬意を払い、誰もが気持ちよく過ごせるように心がけましょう。
企業ブースエリア

コミックマーケット106には、約100社の出版社や大手アニメ・ゲーム関連企業が出展。西・南展示棟の4階に設けられた企業ブースでは、人気シリーズの公式グッズが多数販売されていました。また、ステージショーや小規模なイベントも開催され、来場者を楽しませていました。
「AnimeJapan」のような大規模なアニメイベントとは異なり、コミケの主な目的は、オリジナル作品のクリエイターを支援することにあります。そのため、企業ブースは限定的ですが、熱心なアニメファンにとっては十分楽しめる内容です。
海外からの来場者が知っておくべきポイント!
コミケは非常に大規模なイベントであり、初めて参加する人にとっては戸惑うこともあるかもしれません。来場前に知っておくべきポイントをいくつかご紹介します。
1. 公式HPでチケットとプログラム情報を確認

Picture courtesy of the Comic Market Committee
コミケへの入場には、事前に指定されたアニメショップなどでリストバンド型参加証やチケットを購入する必要があります。会場での当日券販売はありません。
必ずコミケ公式HP でチケットの販売情報、イベント日程、出展内容などの最新情報を確認してください。
また、お目当てのクリエイターや作品がある場合は、多くのサークルが2日間のうちどちらか1日しか参加しないため、注意が必要です。お気に入りのサークルを見逃さないよう、どの日に出展するかを事前にチェックしておきましょう。
入場まで屋外で数時間並ぶこともあります。コミケは東京の暑い夏に開催されるため、熱中症対策は必須です。こまめな水分補給、日焼け止め、帽子や日傘を忘れずに持参しましょう。
最新情報は、国際部が英語で発信しているコミケ公式Xアカウントで確認できます。
2. 目的を持って参加する

コミケには非常に多くのジャンルがあり、出展者も数千にのぼるため、圧倒されてしまうかもしれません。有意義な時間を過ごすためにも、事前に公式のパンフレットをチェックし、何を見たいか目的を定めておくことをおすすめします。
会場に着いたら、まずは好きなジャンルやサークルを優先的に回りましょう。人気の作品はすぐに売り切れてしまうこともありますし、混雑が激しくなる前に、お目当てのものを手に入れることができます。
3. 困ったときは国際部デスクへ
会場には、多言語対応の国際部デスクが、東・西展示棟に設置されています。ここでは、英語、中国語、韓国語でのサポートが受けられます。
特定のジャンルやブースの場所がわからないとき、またはその他に困ったことがあれば、気軽に立ち寄って相談してみましょう。
4. IOEA:世界中のアニメイベントを支援

国際オタクイベント協会(IOEA)もコミケに出展しています。コミックマーケット106では、西展示棟の1階、入り口付近にブースがありました。
IOEAは、世界中のアニメ関連イベント主催者間の交流を支援しています。ブースでは、様々な国や地域で開催されている主要なアニメコンベンションやイベントのリストを見ることができます。
自国でアニメ関連のイベントを企画している方は、IOEAがプロモーションをサポートしてくれることもあるので、ぜひブースを訪れてみてください。
2025年冬コミケ:コミックマーケット50周年
2025年12月、コミケは50周年を迎えます。東京ビッグサイトの改修工事という課題に直面しながらも、コミケ実行委員会は来年の夏まで続く「50周年イヤー」の間に、様々な企画を実施する予定です。
これらの特別なイベントの多くは、すべての来場者が楽しめる内容になっています。最新情報をチェックして、ぜひ一緒にお祝いしましょう!
コミックマーケット準備会 代表者インタビュー

今回、私たちはコミックマーケット準備会の共同代表である市川孝一氏にインタビューする機会をいただきました。
Q:長年の間でコミケで変わったこと、変わらないことは何ですか?
市川氏:コミケは非常に大きく成長しました。最初のイベントは、参加サークルが約40、来場者は700人ほどでした。今では、2日間で約23,000サークル、20万人以上の来場者が集まります。パンデミック前は4日間開催していましたが、将来的には再び4日間に戻るかもしれません。
しかし、「表現の自由」という核となる理念は決して変わりません。漫画、アニメ、ゲームに関連するあらゆるジャンルのクリエイターを歓迎し、主題やスタイルに制限はありません。この自由に対する来場者全員の敬意が、コミケの真の精神となっています。
Q:コミケが世界的に注目されていることについて、どう思いますか?
市川氏:世界中にコミケのファンがいることを、大変嬉しく思います。作品を展示するために来日する海外クリエイターもいれば、イベントを楽しむため、他のファンと交流するため、そしてオリジナルグッズを購入するために旅をする来場者もいます。海外からお越しの皆さんには、事前に公式HPの情報を熟読し、カタログを確認してイベントに備えることを強くおすすめします。
Q:2025年冬のコミケは50周年を迎えます。この特別なイベントに参加する海外来場者へのアドバイスをお願いします。
市川氏:50周年を迎えられたことを大変感謝しています。この節目を迎えられたのは、皆様の多大なご支援のおかげです。この特別なイベントに多くの海外来場者をお迎えできることを楽しみにしています。私からのアドバイスは、イベントの雰囲気を体験するだけでも、特定のクリエイターの作品を探すだけでも、目的を持って参加することです。そして、常に公式HPで最新情報と重要な情報を確認してください。
コミックマーケット107 開催情報
日程:2025年12月30日・31日
会場:東京ビッグサイト
公式HP: https://www.comiket.co.jp/info-c/C107/C107Appset.html
In cooperation with the Comic Market Committee
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Main image courtesy of the Comic Market Committee
2016年よりMATCHA編集者。 能楽をはじめとする日本の舞台芸術に魅せられて2012年に来日。同年から生け花(池坊)と茶道(表千家)を習っています。 勤務時間外は短編小説や劇評を書いていて、作品を総合文学ウェブメディア「文学金魚」でお読みいただけます。