【広島】市内から1時間の秘境温泉旅。湯来・湯の山温泉で出会う”昔ながらの温泉郷”
原爆ドームや宮島など世界遺産が集まる広島。市内から車で約1時間の湯来・湯の山温泉は、その泉質と環境の良さから「国民保養温泉地」に指定された温泉郷。地元民が通う昔ながらの湯治場でのんびり過ごす。そんな広島ならではの癒し旅に出かけてみましょう。
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目次
- 湯来・湯の山温泉とは?
- 湯の山温泉館―江戸時代から続く、冷泉と打たせ湯の名湯
- 森井旅館―湯治場の名残を今に伝える、たった一軒の宿
- 湯来ロッジ―“公共宿泊施設”のイメージを変える、スタイリッシュな温泉リゾート
- 誠の桧湯――地域の想いが蘇らせた、香り高き貸切の湯
- まとめ―“観光の広島”から、“癒しの広島”へ
- 首都圏・関西方面から広島へのアクセス
- 広島駅から湯来ロッジまでのアクセス
湯来・湯の山温泉とは?
中国山地のふもとに位置する湯来(ゆき)・湯の山温泉は、古くから「広島の奥座敷」と呼ばれてきた、静かな温泉郷です。その歴史は古く、湯来温泉は約1500年前、湯の山温泉は約1200年前にさかのぼると言われています。
無色透明の冷泉が特徴で、湧き出たままの温度で浸かる“冷泉浴”と、加温した湯を交互に楽しむ“交代浴”によって血行が促進され、体の芯から温まると評判です。
自然に囲まれた山あいで、地元の人々に長く愛されてきた名湯をご紹介していきます。
湯の山温泉館―江戸時代から続く、冷泉と打たせ湯の名湯

広島市内から1時間、山あいの静かな集落に佇む「湯の山温泉館」は、湯の山温泉の中で最も歴史ある湯処のひとつ。庶民の湯治場として長年多くの人に親しまれてきました。

この温泉の特徴は、地上4メートルの岩盤から勢いよく流れ落ちる“打たせ湯”。23.5℃の冷泉がそのまま使われており、肩や背中にあたる水圧が心地よい刺激になります。

館内の内湯は加温されており、41℃前後の湯でじっくり温まったあとに冷たい打たせ湯を浴びる「交代浴」を楽しむのが通の入り方。温冷を繰り返すことで血行が促進され、体が軽くなると評判です。

入館時は券売機でチケットを購入し、気軽に立ち寄れるのも魅力。屋外には飲泉場もあり、入浴の前後に飲むと体の内側から整うといわれています。昔ながらの素朴な佇まいが魅力の、地元民が日常的に通う人気の一湯です。

温泉館のすぐ上には「湯の山明神」があり、その境内からは実際に湧き出す源泉を見ることができます。岩をくり抜いた小さな浴槽が三つ並び、かつて湯治に訪れた人々がこの湯に身を沈めていた面影が今も感じられます。
森井旅館―湯治場の名残を今に伝える、たった一軒の宿

かつて湯の山温泉には、37もの宿が立ち並び、湯治客でにぎわう温泉街が広がっていました。その中で現在唯一残るのが「森井旅館」。創業以来、四代にわたって森井家が営む、木造づくりのあたたかな宿です。

完全予約制で一日二組限定。木の香りに包まれた館内は、まるでおばあちゃんの家に帰ってきたような懐かしさ。宿泊はもちろん、人気なのが「日帰り温泉と食事付きプラン」。お風呂で温まり、地元食材を使った手料理をいただきながら、畳の部屋でごろりと一休み…そんな贅沢な過ごし方ができます。

お風呂は家族風呂が一つのみですが、一組ずつ湯を沸かし、利用ごとに湯を抜き替える丁寧なスタイル。浴場には、源泉の冷泉と加温した湯のふたつの浴槽が並び、ここでも交代浴を楽しむことができます。一回あたり約1時間、湯船を貸し切ってゆったり入浴できます。

宿の外には、森井旅館が管理する足湯もあります。 小さな湯船の中には「ドクターフィッシュ」が飼われていて、足を入れると温泉でふやけた角質をついばむように食べてくれます。くすぐったくて、思わず笑ってしまいました。

この足湯は料金が決まっておらず、 入口にある箱に“お気持ち”として好きな額を入れる仕組み。 観光客も気軽に立ち寄れる心温まるスポットです。
湯来ロッジ―“公共宿泊施設”のイメージを変える、スタイリッシュな温泉リゾート

湯の山温泉から少し山あいに入った場所にある「湯来ロッジ」は、広島市が運営する公共の宿泊施設。木の温もりとガラスの明るさを活かしたモダンなデザインが印象的なお宿です。清潔で快適、そしてどこか温かみのある雰囲気が旅人を迎えてくれます。

館内の温泉は、湧き出た冷泉を加温。内湯と露天風呂がそれぞれあり、低温湯では源泉そのままの湯に浸かることもできます。無色透明無味無臭のお湯が肌にやさしく、じんわり体を包み込むような泉質が魅力です。露天風呂では、川のせせらぎと四季の山々の風景が広がり、まるで絵画のような景色の中で穏やかな時間を過ごせます。

今回の旅では、湯来ロッジに宿泊。和室のぬくもりに包まれながら、静かな夜を過ごしました。ベッドタイプの洋室もあり、旅のスタイルに合わせて部屋を選べます。

夕食は山の幸と川の恵みが並ぶ豪華な会席。地元野菜や湯来の水で仕上げた料理はどれも滋味深く、朝は彩り豊かなビュッフェスタイルで一日の活力をチャージできます。

こちらの敷地内には足湯や特産品直売所、体験イベントを開催する交流センターも併設。“地域の温泉リゾート”として、観光と癒しを同時に楽しめる滞在拠点となっています。

日帰り入浴だけでも十分に満足できますが、せっかくなら一泊して、光が差し込む露天風呂で目を覚まし、夜は星空を眺めながら湯に浸かる。そんな贅沢な過ごし方をおすすめします。
誠の桧湯――地域の想いが蘇らせた、香り高き貸切の湯

湯来ロッジから徒歩数分。「湯来交流体験センター」で鍵を借りて入る、完全貸切の露天風呂が「誠の桧湯(まさのひのきゆ)」。

1時間4,000円で最大6名まで利用でき、家族や友人とプライベートな温泉時間を楽しめます。予約制で、9:00から16:30までの1時間ごとの枠に分かれています。(2025年10月時点の情報)

この湯は、かつて“共同の無料露天風呂・湯元”として地元の人々に愛されていた場所を再生したもの。観光客の減少とともに閉鎖されてから約20年、クラウドファンディングを通じて地域の人々の手で復活を遂げました。

浴槽や脱衣所には、かつて林業で栄えた湯来町産の檜をふんだんに使用。扉を開けた瞬間に広がる桧の香りは、まさに至福です。源泉が湧く場所に直接造られており、約28℃の冷泉と加温湯の2槽で交代浴も可能。 桧の香りに包まれながら、地域の想いが込められたこの湯に身をゆだねる。それは、広島の山里が誇る“温泉体験”です。
まとめ―“観光の広島”から、“癒しの広島”へ

世界遺産やグルメで知られる広島ですが、ほんの少し足を延ばすだけで、豊かな温泉文化が息づく違った一面を楽しめます。湯来・湯の山温泉は、「人の手で大切に守られてきた湯」を感じられる温泉地です。
観光で訪れるだけでは気付けない、広島のもうひとつの顔。もし何日か滞在するなら、温泉で過ごす時間を旅の予定にぜひ加えてみてください。静かな山あいで湯に浸かり、心をほどく広島の休日もきっと忘れられない思い出になるはずです。
首都圏・関西方面から広島へのアクセス
【新幹線で行く場合】
東京からは新幹線で「広島駅」まで約4時間。大阪からは新幹線で「広島駅」まで約1時間30分。
広島駅からJR山陽本線で「五日市駅」へ向かいます(所要時間は約20分)。その後、「五日市駅」駅前から湯来ロッジ行きの広電バスに乗り換えてアクセスできます。
【飛行機利用の場合】
羽田空港から広島空港まで約1時間20分。
広島空港からはリムジンバスで広島駅へ向かいましょう(所要時間は約45分)。広島駅からJR山陽本線に乗車し、「五日市駅」にて下車。「五日市駅」駅前から湯来ロッジ行きの広電バスに乗り換えるルートが便利です。
広島駅から湯来ロッジまでのアクセス
【広電バス(有料)】
料金:片道1,000円
所要時間:約1時間15分(交通状況により変動)
乗車場所:JR山陽本線・広島電鉄宮島線「五日市駅南口」
行き先:「湯来ロッジ前」行きバス
【最終バス出発時刻】 平日 :19:30 土日祝:18:40 ※2025年10月時点
バスの車窓からは、広島市街から山あいへと変わる風景を楽しめます。 温泉でのんびり過ごしたあとは、帰りの時間にもゆとりを持って。

【湯来ロッジ宿泊者向け:無料シャトルバス(予約制)】
運行日:平日のみ ※土日祝・GW・お盆・年末年始は運休
料金:無料
対象:湯来ロッジ宿泊者限定(要予約)
所要時間:約50分
乗降場所:JR広島駅北口から徒歩3分の指定ポイント
定員:28名まで
【運行スケジュール】 JR広島駅北口 発 → 13:30 湯来ロッジ 発 → 12:00 ※2025年10月時点
【予約方法】 ご利用の際は、事前に湯来ロッジまでご予約ください。

【車で行く場合(参考)】
ルート:広島市中心部から国道433号線経由で約60分
駐車場:無料駐車場あり(湯来ロッジ・温泉館前)
国民保養温泉地とは、温泉利用の効果が十分期待され健全な保養温泉地として、「温泉法」に基づき環境大臣によって指定されています。全国に79箇所の温泉地が指定されています。(2024年10月現在) 国民保養温泉地の選定は、おおむね以下の基準によって行われています。 第1 温泉の泉質及び湧出量に関する条件 (1)利用源泉が療養泉であること。 (2)利用する温泉の湧出量が豊富であること。なお、湧出量の目安は温泉利用者1人あたり0.5リットル/分以上であること。 第2 温泉地の環境等に関する条件 (1)自然環境、まちなみ、歴史、風土、文化等の観点から保養地として適していること。 (2)医学的立場から適正な温泉利用や健康管理について指導が可能な医師の配置計画又は同医師との連携のもと入浴方法等の指導ができる人材の配置計画若しくは育成方針等が確立していること。 (3)温泉資源の保護、温泉の衛生管理、温泉の公共的利用の増進並びに高齢者及び障害者等への配慮に関する取組を適切に行うこととしていること。 (4)災害防止に関する取組が充実していること。