若狭・三方五湖をめぐる旅― 五色に輝く湖と日本の原風景に出会う5つの方法 ―
福井県南部、若狭湾に面した若狭エリアには、海と山、そして“五色に輝く”湖が織りなす豊かな景色が広がっています。本記事では福井県美浜町と若狭町にまたがる「三方五湖(みかたごこ)」を中心に楽しむ旅をご紹介します。
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目次
- 敦賀から始まる若狭の旅
- 旅人の「五感」を満たす三方五湖の5つの楽しみ方
- 1.ゴコイチサイクリング — 五感で三方五湖を感じる自転車の旅
- 2.福井県年縞博物館 — 世界の時間を測る「7万年のものさし」
- 3. 「御食国」若狭の食と宿—湖と海の恵みを味わう旅へ
- 4.レインボーライン —5つの湖を“見下ろす” 360度の大パノラマ
- 5.三方五湖ネイチャークルーズ — “電池推進遊覧船”で湖の物語へ出発
- 旅のまとめ
敦賀から始まる若狭の旅
若狭エリアは魅力的な観光地が多いことに加え、2024年に北陸新幹線が敦賀駅まで延伸したことで、金沢・東京とのアクセスが格段によくなり、関西方面・中京方面とのアクセスもよいことから、日本で訪れるべき旅の目的地として海外からの旅行者の注目が集まっています。敦賀駅前には、ホテル、飲食店、物販店などを備えた「TSURUGA POLT SQUARE otta」があり、市内へのバスやタクシー、レンタカーもすぐ乗れるので、若狭エリアへの観光拠点としてとても便利です。敦賀市内には気比神宮、敦賀赤レンガ倉庫、気比の松原など魅力的なスポットもあり、三方五湖(みかたごこ)への旅、さらに広がる若狭エリアの旅をここからスタートするのもおすすめです。




敦賀駅、三方五湖へのアクセス
敦賀駅まで
東京駅ー敦賀駅:北陸新幹線 で約3時間10分
京都駅ー敦賀駅:北陸本線 サンダーバードで約50分
名古屋駅ー敦賀駅:新幹線+特急で約1時間
美浜駅(三方五湖の最寄駅)まで
敦賀駅ー美浜駅:JR小浜線で約20分
車の場合は名神高速自動車道・北陸自動車道を利用し舞鶴若狭自動車道 美浜IC下車
●ゴコイチバス:土・日曜と祝日限定で敦賀駅・美浜駅・観光地を巡回
(2025年11月24日まで、2026年以降の運行は要確認)
https://www.pref.fukui.lg.jp/doc/n-kankou-chiiki/202504gokoichi-bus.html
旅人の「五感」を満たす三方五湖の5つの楽しみ方
敦賀駅から三方五湖の最寄駅であるJR美浜駅まではJR小浜線でわずか20分です。三方五湖は、福井県美浜町と若狭町にまたがる淡水と海水が交じり合う5つの湖の総称で、水質や水深がそれぞれ異なり、まったく違う青色を見せることから「五色の湖」とも呼ばれています。若狭湾国定公園を代表する景勝地で、国際的に重要な湿地として2005年にラムサール条約に登録されています。のどかな水郷、海と湖に隣接する漁師町、湖底から世界の歴史年代を決定する7万年分の年縞が発見された湖をはじめ、この土地ならではのグルメも魅力的で、三方五湖は旅人の五感を満足させてくれる見どころが多彩です。
三方五湖の5つの湖
三方湖(みかたこ):最も南に位置する湖で、5本の川が流入している唯一の淡水湖。
久々子湖(くぐしこ):早瀬川(はやせがわ)で日本海と通じるため、常に海水の流入がある汽水湖。三方五湖の中で最も多くの種類の魚が確認されている。
日向湖(ひるがこ):日本海とつながり、流入河川もないため、三方五湖の中で最も塩分濃度が高い海水湖。ハマチ、フグなどの蓄養場がある。
水月湖(すいげつこ):三方五湖の中で面積が最大の湖。海水と淡水の混じる汽水湖で水深が深く、世界標準となった年縞が発見された。
菅湖(すがこ):三方五湖の中で面積が最小の汽水湖。季節風の影響を受けにくいため、冬には多くの野鳥が飛来し観察できる。
1.ゴコイチサイクリング — 五感で三方五湖を感じる自転車の旅

三方五湖の魅力を“体感”するなら、サイクリングほど最適な方法はありません。車では気づきにくい湖面の輝き、風の匂い、鳥の声、そして地域の人たちの気配……湖畔の小道を自転車で走れば、三方五湖の風景がゆっくりと身体に溶け込んでいきます。JR美浜駅の駅舎内にある「若狭美浜観光協会」では、電動アシスト自転車、ロードバイクのレンタルから、地元ガイドが案内する「ゴコイチサイクリング」ツアーの提供もしています。ガイドは地域の自然・歴史・文化に精通し、サイクリングツアーは湖の成り立ちや梅の産地としての背景、日本海と湖がつながる珍しい地形など、旅が何倍も深まるストーリーを聞きながら進みます。
「若狭美浜観光協会」は、観光情報や宿・アクティビティの相談まで揃う便利な拠点なので、サイクリングだけでなく、旅行計画の段階から公式サイトで情報収集したり、旅のスタートに立ち寄るのがおすすめです。

ゴコイチサイクリング
三方五湖の外周約30kmを、約4〜5時間かけてめぐるサイクリングプラン。ガイド付きなら、道に迷う心配もなく、ビュースポットや歴史スポットにも立ち寄りながら安心して楽しめます。
•ランチ付きプラン(30km、約4〜5時間) 料金:11,000円(税込)/1名 最少催行人員:2名
•湖畔でのコーヒー付きプラン(30km、約4〜5時間) 料金:4,500円〜/1名 最少催行人員:2名
•おためしプラン(10〜20km、約3時間) 料金:3,700円/1名 最少催行人員:2名

サイクリングで感じる季節の魅力
三方五湖の5つの湖は、それぞれに水の色合いや周辺環境が異なり、走るたびに風景が変わり続けるのも魅力です。
•春:湖畔に梅の花が咲き誇り桃源郷のよう
•初夏:梅の収穫期で、風に乗って甘酸っぱい香りが漂う
•秋:紅葉した山の色が湖面に映りこみ写真愛好家に人気
•冬:雪化粧した山と静かな湖が幻想的な静寂に包まれる




一般社団法人 若狭美浜観光協会
福井県三方郡美浜町松原35-7(JR美浜駅内)
TEL 0770-32-0222(受付8:30-17:15)
2.福井県年縞博物館 — 世界の時間を測る「7万年のものさし」

三方五湖の中でも「水月湖(すいげつこ)」は特別な湖です。ここから発見された 7万年分の「年縞(ねんこう)」 は、年ごとに湖底に積み重なった “地球の年輪”とも呼ばれる縞状の地層。これが国際的な年代測定の基準「IntCal」に採用され、世界中の歴史・科学の研究に活用されています。その年縞を展示・紹介しているのが2018年に開館した「福井県年縞博物館」です。年縞は地質年代の「ものさし」としてだけでなく、過去の「できごと」を1年ごとに記録した最高の「記録計」でもあります。この博物館は湖から世界史へと視点が広がる不思議な展示構成の“体験型ミュージアム”で、科学が得意でなくても、大人も子どもも楽しめます。英語表示や多言語の音声ガイドもあり、海外からの旅行者にも人気があります。
見どころポイント
•実物の年縞コア展示
•年縞がどのように歴史年代を決める「ものさし」になるのか学べる
•湖と周辺の自然環境の変遷がわかる映像展示
•三方五湖ジオパークとしての地形・生態系も紹介





福井県年縞博物館
福井県三方上中郡若狭町鳥浜122-12-1(縄文ロマンパーク内)
TEL 0770-45-0456
[開]9:00-17:00(入館16:30まで)
[休]火曜(休日の場合は翌日休館)、年末年始(12/29~1/2)
※ゴールデンウイークと夏休み期間は休まず開館
[料]500円、小・中・高生200円
https://varve-museum.pref.fukui.lg.jp
3. 「御食国」若狭の食と宿—湖と海の恵みを味わう旅へ
日本海にのぞみ、豊かな自然に恵まれた若狭地域は、古代から「御食国(みけつくに)」として塩や海産物など豊富な食材を都に運び、都の食文化を支えてきた地です。そして、三方五湖は、湖と海が近接するユニークな地形から、食文化も特別に豊かです。淡水・汽水・塩水の湖に生息する魚介は種類が多く、ウナギやシジミはこの地を代表する名産。日本海からは、ブリ・カニ・フグのほかさまざまな魚種が水揚げされます。サバを塩と米糠で漬けて発酵させる「へしこ」の特産地で、梅の名産地としても知られています。こうした土地の食文化を楽しむのも旅の醍醐味、レストランや旅館・ホテルなどで存分に楽しんでください。
料理と食材にこだわる小さな宿「いそや」

久々子湖(くぐしこ)と日本海のすぐそばに佇む料理自慢の宿「いそや」は、歩いて1分足らずで美しい浜辺が広がる立地です。夫婦で営むアットホームな和風旅館で、手入れの行き届いた中庭、数寄屋門、落ち着いた和の空間ともてなしにほっと心が和みます。素泊まりもできますが、ただ泊まるだけではもったいない、食材と調理にこだわった 夕食や朝食が付いたプランで滞在を楽しむのがおすすめです。季節の魚介を中心に、自家製の野菜、久々子湖の天然シジミなど食材にもこだわりが光り、丁寧な仕込みと味付けで提供されます。若狭の海の幸、湖の幸を味わいたい人におすすめの宿です。




料理と食材にこだわる小さな宿 いそや
福井県三方郡美浜町久々子17-1
TEL 0770-32-0263
チェックイン 15:00から
チェックアウト 10:00まで
口細青うなぎの名店「うなぎや 源与門」

「うなぎや 源与門(げんよもん)」は老舗のうなぎ専門店で、特に漁期の5〜11月は三方湖の天然ウナギ「口細青うなぎ」を味わうことができます。「口細青うなぎ」は一般的なウナギに比べて表面がほのかに青味がかり、尾尻が太くて長く、口先が細く尖っています。口細なのは沙蚕(ゴカイ)を好んで食べているからといわれ、その風貌から「口細青うなぎ」と呼ばれています。身が締まっていて風味が濃く、一般的なウナギとはひと味違う深みがあります。そして、「うなぎや 源与門」ではウナギを裏山の雲母山(きらやま)を水源とする地下水「雲母山水(きらさんすい)」で活かし込み、素材本来の味を引き出して調理しています。ウナギは蒸さずに焼くので、身はふっくら、皮がパリッと香ばしいのが特徴です。11月頃は脂が最ものる旬の季節です。

うなぎや 源与門
福井県三方上中郡若狭町三方52-6
TEL 0770-45-0035
[営]11:00-13:30
[休]木曜
湖を望む絶景の和食処「活魚料理 味一休」

「味一休(あじいっきゅう)」は、炭火で焼き上げたウナギに加え、旬の魚、美浜のへしこ、冬は若狭湾で育った良質で身が引き締まったトラフグと越前ガニやブリなど、四季折々の福井の味を堪能できる日本料理店です。窓の向こうには久々子湖が広がり、食事と景色の両方が旅の特別な時間を演出します。料理は日本の美意識に溢れた盛り付けで、お酒は地酒「早瀬浦」をはじめ地酒も取り揃え、少人数対応の個室、宴会やパーティーにも利用できます。ランチ限定の「海鮮丼」は地元で水揚げされた旬の魚介がたっぷり味わえ、「天麩羅丼」もボリューム満点で人気です。「若狭ぐじ」「へしこ」などこの土地の名物もぜひ味わってみてください。

活魚料理 味一休
福井県三方郡美浜町久々子80-3
TEL 0770-32-0152
[営]11:00-14:00、夜は予約制17:00-19:00LO
[休]不定休
4.レインボーライン —5つの湖を“見下ろす” 360度の大パノラマ

三方五湖を訪れるなら「レインボーライン山頂公園」からの絶景を見逃してはいけません。レインボーライン(県道三方五湖レインボーライン線)は、美浜町の日向ゲートから若狭町の海山ゲートをつなぐ全長11.4kmのドライブコースです。眼下に三方五湖を眺めながらドライブできますが、山腹にある駐車場からリフト・ケーブルカーに乗り込んで標高400メートルの梅丈岳の山頂へ向かうと、さらなる絶景が待っています。山頂には5つのテラスとカフェを備えた「レインボーライン山頂公園」があり、三方五湖、日本海、そして大空が広がる360度の大パノラマが楽しめます。四季折々の景色はもちろん、足湯やカフェ・レストランで楽しむグルメも魅力です。
見どころ
天気のよい日は三方五湖の5つの湖と日本海・空からなる7色の青と、新緑や紅葉する山々が織りなすグラデーションが美しく、特に夕暮れ時は湖面に沈む太陽が黄金色に輝き神秘的です。
•足湯テラス
•カフェ・レストランのスイーツ&ドリンク
•フォトスポットが充実
•初夏と秋にはバラ園が見頃





レインボーライン山頂公園
福井県三方郡美浜町日向75-2-6
TEL 0770-47-1170
[営] 夏季9:00-17:00(3/1-11/30)、冬季9:00-16:30(12/1 -2/28)
[休]年末年始(12/31-1/2)、2月上旬に5日間の休業あり
[料]入園料 大人1,000円、小学生500円(リフト・ケーブルカー代含む)
県道三方五湖レインボーライン線
通行時間 8:00-18:00 (夜間通行止め)
[料]山頂公園 駐車料金800円
※自転車・徒歩は通行不可
※タクシー・レンタカーなどをご利用ください
※ゴコイチバス:敦賀駅、美浜駅などから三方五湖周辺の観光地への移動に便利な路線バス
土・日曜と祝日の限定運行、冬季運休あり
(2025年11月24日まで、2026年以降の運行は要確認)
https://www.pref.fukui.lg.jp/doc/n-kankou-chiiki/202504gokoichi-bus.html
5.三方五湖ネイチャークルーズ — “電池推進遊覧船”で湖の物語へ出発

「美浜町レイクセンター」では、日本国内初の再生可能エネルギーを動力とする環境に優しい電池推進遊覧船で「三方五湖ネイチャークルーズ」を運航しています。静粛性に優れたこの船は、湖面を泳ぐ水鳥のように滑らかに進み、自然との一体感を感じさせます。基本コースは、久々子湖(くぐしこ)を出発し、浦見川(うらみがわ)を通過して水月湖を約50分でめぐります。船内ガイドによる見所の紹介や遊覧船の仕組みの解説も行われ、この地の自然と文化を学ぶことができます。「美浜町レイクセンター」の施設内にはカフェもあり、湖を眺めながらコーヒーやスイーツも楽しめます。また、ゴコイチサイクリングのコース上に位置し、レンタサイクルの受付や乗り捨てスポットとして利用できます。





美浜町レイクセンター
福井県三方郡美浜町早瀬24-4-1
TEL 0770-47-5960
[営] 9:00-17:00
[休]水曜、年末年始
三方五湖ネイチャークルーズ
1日5便運航、所要時間50分
1便 9:30発、2便 10:45発、3便 13:00発、4便 14:15発、5便 15:30発
[料]大人(中学生以上)1,980円、小学生990円、未就学児 無料
https://mihama-lakecenter.com/home/cruise
旅のまとめ
三方五湖は、ただ美しいだけの観光地ではありません。湖の色が移ろい、山がつなぎ、海が寄り添い、人が暮らし続けてきた“生命の景観”そのものです。サイクリングで風を受け、年縞で時間を遡り、若狭の食を味わい、山頂から絶景を見渡し、遊覧船で湖に抱かれる——。5つの湖にちなんだ5つの視点でめぐる旅は、きっとあなたの五感と記憶に深く残るはずです。
北陸エリア全体を盛り上げる取り組みを行なっています