世界遺産になる前の富岡製糸場の暮らしとナイトライフ
世界文化遺産として知られる富岡製糸場が最も栄えた時代は、昭和の中頃(1960年代)で東京オリンピックの開催もあり日本中が熱気に包まれていました。その頃の富岡市の暮らしや製糸場で働いていた人々の生活を友人から聞いた記憶も交え、ご紹介します。
最も栄えた1960年代の富岡製糸場

富岡製糸場は富岡を代表する企業で、最も生糸生産が多くなった時期は昭和の中頃(1960-1970年頃)でした。
1939年からの名称は「片倉製糸紡績株式会社(現片倉工業)」で、2005年まで、民間最後のオーナーを務めます。


その後、第二次世界大戦後は、最新の自動繰糸機が導入され、生産量が飛躍的に伸びました。
ですが、 日本の製糸業の衰退とともに1987(昭和62)年3月工場の偉業は終焉を迎えました。

現在の富岡製糸場前
富岡製糸場で働く従業員の「社宅での暮らし」

従業員のうち、約80人が社宅に住んでいたと思われています。社宅は役職や家族構成によってそのつくりに違いがありました。

管理職になると、一軒家で部屋数も多く、玄関も広々としていました。このような広い家に住めることを想像すると、従業員のモチベーションもきっと上がったことでしょう。

当時、1つのクラスに1〜2名は在籍していた富岡製糸場で働く両親を持つ友人達は、「うちは、片倉だぞ!!」と、何か強いプライドがあったようでした。

一度、社宅に遊びに行きましたが、工場の敷地内に入るにも手続きが必要だったため、そのぐらい「箔が高い」意識があったのかもしれません。

私の友人が住んでいた社宅は、とても立派な部屋とは言い難かった記憶があります。これは、聞くところによると、質素で、自分の暮らしにお金をかけないという片倉工業の社長の考え方に根ざしていたからかもしれません。

社宅に住んでいた友人のところに遊びに行った時は、よくベーゴマで遊んでいました。当時の記憶で、親が帰って来る前に、早く帰って欲しいと友人から急かされた記憶があります。私の友人も、質素な部屋を気にしていたのかもしれません。
当時の町の暮らしとお祭り

上州名物やきまんじゅう
Photo by PIXTA
1960年代頃の富岡市では、お祭りもたくさんありました。今でも続く鬼子母神祭(きしぼじんさい)は、毎年11月12日(昔は12日〜13日の二日間)に開催されます。小中学生だった頃、よく、祖母に「焼きまんじゅう(味噌を塗ったまんじゅう)」を買ってくるように頼まれて、お祭りに行きました。中にあんこが入った甘いタイプもあるこのおまんじゅうを、自分は、それほど美味しいと思ったことはありませんでしたが、祖母は大好きだったようです。
夏には、山車が並んでいるお祭りがあり(宮本町)、揃えの浴衣を着て盆踊りに参加する人が多かった。お祭りの2週間前から太鼓の練習が行われ、町中に鳴り響いていました。

画像提供:富岡市
また、春には富岡の工女たちは古くから桜をみる慣習があったと記録から分かっています。現代では「観桜会」というイベントが開催され、富岡に住む人々はもちろん市外や県外の人も一緒に美しい桜を楽しむ文化は引き継がれています。このイベントでは、製糸場の美しい建物をバックに、咲き誇る桜の花を見ることができます。
1975年頃(約50年前)の富岡のナイトライフ

富岡製糸場の東方100m x 200mぐらいのスペースに、富岡製糸場の従業員が取引先との接待で利用することが多い、120軒近くの呑み屋街が存在しました。バブル期前までは、夜毎に呑べえがあふれ返る街並みは、ある意味、富岡製糸場のいこいの場でもありました。居酒屋、スナック、バー、キャバレー等、様々な夜の業態が揃っていたのです。

私も、この飲屋街に週に5日通っていた呑べえでした。バブル崩壊と共に、この街の勢いも衰退してしまったのは、非常に残念です。
私は小さな「からっ風」という居酒屋の常連客で、広島の清酒”義侠”が好きでした。「からっ風」は富岡周辺で11月ごろに吹くとても強くて冷たい風のことをいい、ほかの地域では「浅間おろし」というらしいです。
この頃の飲み屋では、常連客の席が暗黙に決まっていて、みんな、浮気することなく行くお店を決めているので、何時に行くかだけを話し合って、そこで集合し、夜中の2時頃までよく飲んでいました。
バブル時代は好景気の反面、残業も多く、本給と同額近く残業代も稼げたため、たくさん働いて、たくさん飲んで、遊んでいました。社長クラスの人が行くお店には、芸子さんもいたりしました。
昔の富岡の面影に出会える場所

昔の味がそのまま楽しめるお店があります。お薦めは、伊勢屋さんのラーメン。みたらし団子やおにぎりも楽しめます。
富岡製糸場が世界遺産に登録される歴史の中で、1960年代頃の富岡の中心部の面影をしのんでいただけると嬉しいです。今も、当時の面影を、感じさせてくれるこの街は、どこか懐かしさと温かさに満ちています。
【アクセス情報】
伊勢屋
〒370-2316 群馬県富岡市富岡1031
上州富岡駅から徒歩7分
営業時間 9:30-11:30 水曜日定休
一般社団法人富岡市観光協会は、富岡製糸場及び妙義山を中心とした富岡市全般の観光資源を活用し、観光地域づくり法人(登録DMO)として、観光に関わる人たちと連携し「稼げる観光地域づくり」を推進して観光振興を図ることにより、交流人口の増加及び地域経済の発展に寄与することを目的とする。