淡路島で出会う本物の「ジャパン・ブルー」。藍染め工房とリトリートの旅
淡路島の「AWAJI藍LAND project」は、藍の栽培から染色までを一貫して行う工房です。伝統技法による藍染め体験や併設の宿でのリトリートが魅力。自然と共生するサステナブルな営みから生まれる、日本の伝統文化と深い癒やしをご紹介します。
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目次
- AWAJI藍LAND project:藍を蘇らせる、ある夫婦の物語
- 藍染めとは? 日本人と藍の歴史
- 蒅から藍甕へ。藍と対話するワークショップ
- 循環する藍。地域と共に育む、サステナブルな工芸
- 藍の宿「藍宿ル1185」で過ごすリトリート
- なぜ今、藍なのか
- AWAJI藍LAND projectへのアクセス(神戸・大阪方面から)
- ワークショップ・宿泊の予約方法
食と自然の豊かさで知られる淡路島。この島で、日本で最も美しい伝統の一つが静かに守られていることを知る人はそう多くないかもしれません。 その伝統とは「藍染め」。何世紀もの時を超えて受け継がれてきた天然の染色技術です。かつては着物や作業着など、日本人の暮らしに欠かせなかったこの深く美しい青は、今や「ジャパン・ブルー」として世界中で愛されています。

AWAJI藍LAND project:藍を蘇らせる、ある夫婦の物語
「AWAJI藍LAND project」を営むのは、大阪出身の絵理さんと誠一さんご夫妻。二人はここで、昔ながらの伝統的な手法による藍染めを現代に蘇らせています。
もともと穏やかな農ライフを求めていた二人が始めたのは、野菜作りと、友人たちとの種交換でした。ある日、友人から手渡された小さな封筒。中に入っていたのは藍の種でした。試しに蒔いてみたところ、淡路島の温暖な気候と柔らかな土壌に抱かれ、藍は驚くほど元気に育ちました。

小さな実験から始まったその営みは、やがて本格的な藍の農園へ、そして淡路島の藍を体験できるリトリートへと成長しました。種を蒔き、刈り取った葉を発酵させて染料を作り、そして藍甕(あいがめ)で布を染める。ここは、そんな藍染めのすべてのサイクルが一つの土地で完結する、日本でも数少ない貴重な場所となっています。
藍染めとは? 日本人と藍の歴史
藍染めは、日本の文化に深く根を下ろしています。その起源は奈良時代にまで遡り、正倉院には当時の鮮やかな藍染めの布が今も保存されています。平安時代の法典『延喜式』にも染料植物としての記述があり、江戸時代には主要な農業産業として全国で栽培が盛んになりました。中でも徳島の「阿波藍」は、最高品質の「蒅(すくも)」の産地としてその名を轟かせました。

藍を育てるその営みは、今も昔も変わりません。6月から9月にかけて、花が咲く前の藍の葉を数回にわたり収穫します。地域によってはその年の「一番刈り」が特に珍重されます。秋風が吹く頃、小さな白い花が咲き、やがて種を結びます。その種を大切に乾燥・保存し、翌年の初夏にまた土へ還すのです。
日本では、藍は単なる色ではありません。それは巡りゆく季節そのものであり、文化の象徴なのです。
蒅から藍甕へ。藍と対話するワークショップ
蒅作りは、一年がかりの大仕事。100日以上もの間、藍の葉を切り返し、温め、灰汁と水を与え続けることで、葉はゆっくりと発酵し、土のような深い香りを放つ染料へと姿を変えます。
この蒅が入った藍甕は、まるで生き物。温度や成分バランス、酸素、そして毎日の優しい手入れが必要です。人の手による細やかな手入れがなければ、あの美しい色は決して生まれないのです。

AWAJI藍LAND projectのワークショップでは、魔法のような色の変化を肌で感じることができます。布を藍甕に浸し、引き上げた直後は緑色。それが空気に触れた瞬間、酸化によってゆっくりと、あの象徴的な「ジャパン・ブルー」へと変化していくのです。 布を折る、ねじる、結ぶ。その手の動き一つひとつが、銀河や波、雲のような模様を描き出します。
無から鮮やかな青が浮かび上がる様子を見つめる時間は、どこか瞑想的であり、自然との対話のような癒やしを与えてくれます。

ワークショップの藍染め体験では、自分の好きなように布を折り、静かに藍甕へ沈め、深い青色が徐々に浮かび上がるのを待ちます。化学染料とは違い、その仕上がりは予測不能。この偶然に身を委ねる感覚こそが、藍染めという工芸の美しさでもあります。

また、天然藍には嬉しい効能も。抗菌・消臭作用があり、肌に優しく、環境への負荷もありません。染色時の排水は、そのまま川や海に戻しても安全なのです。
循環する藍。地域と共に育む、サステナブルな工芸
「AWAJI藍LAND project」は、単なる体験工房にとどまりません。それは地域に根差した、工芸のあり方を示すモデルケースでもあります。 ご夫妻は地元の福祉施設と連携し、社会的な課題を抱える人々や、引きこもりがちな若者たちに就労の機会を提供しています。

近隣神社で販売されているお守り、そして淡路島特産のお線香を入れた匂い袋「ドンザのお結び袋」も彼らの作品です。中に入っているお線香は、通常であれば製造過程で破棄されてしまう端材です。捨てられるはずだったものが藍に包まれ、価値のある品へと生まれ変わります。
また、染色の過程を終えた葉や有機物はすべて畑の肥料へ戻されます。ここでは、完全な循環型(ゼロ・ウェイスト)のサイクルが実現しています。
「自分たちが居なくなった後も、地域のみんなのものとして残り、この土地を支え続ける。そんなものを作りたい。」 そんなシンプルな哲学が、彼らの活動を支えています。
藍の宿「藍宿ル1185」で過ごすリトリート
AWAJI藍LAND projectの集大成として誕生したのが、工房に隣接するゲストハウス「藍宿ル1185」です。ここは、藍染めの余韻に浸るために設えられた特別な場所。

細部までこだわり抜かれたこの空間は、大きな窓から藍畑と海を一望でき、柔らかな自然光が部屋いっぱいに降り注ぎます。ロフトにある寝室は、ダブルベッドが2台。隠れ家のような居心地の良さに、心がほどけていくのを感じられるでしょう。

小さなキッチンには調理器具も完備。室内には、藍染めのテキスタイルをはじめ、漆喰やヘンプクリートなどの自然素材がふんだんに使われています。中には、兵庫県赤穂市で手織りされた貴重な伝統織物「赤穂緞通(あこうだんつう)」の古布も。細部まで美意識が宿っています。

なぜ今、藍なのか
何でもすぐに手に入る現代において、天然藍は私たちに「待つこと」の意味を教えてくれます。 種が芽吹き育つまで数ヶ月、蒅の発酵にじっくり100日。そして藍甕は、まるで生き物のように、毎日の丁寧な手入れを必要とします。

「藍は生きています。無理強いすれば色は出ません。呼吸をさせてあげないと」と、ご夫妻は語ります。
こうした思想は、ある種の瞑想へと通じています。 藍と向き合う作業に必要なのは、忍耐、柔らかな心、そして信じて委ねること。淡路島の潮風とゆったり流れる時間に包まれながら、多くの旅人がここで、そうした感覚を再発見します。 手にするのは、単なるお土産以上のもの。文化やサステナビリティ、そしてこの工芸を守り続ける人々の想いに触れる、ささやかな「癒やし」の体験です。染め上げた布が乾いた後も、その体験は長く心に留まり続けるでしょう。
AWAJI藍LAND projectへのアクセス(神戸・大阪方面から)
大阪・神戸方面から「AWAJI藍LAND project」への道のりはシンプルです。
最もスムーズなのは、神戸からの高速バス。「東浦バスターミナル」行きのバスが定期運行しており、所要時間は約1時間です。
大阪方面からは、まず電車で神戸(三宮)へ(JR・阪神電車で約25〜30分)、そこから淡路島行きの高速バスに乗り換えてください。
東浦バスターミナルからは、島内コミュニティバス「あわ神あわ姫バス」に乗り換え、「釜口(かまぐち)」で下車。そこから徒歩約10分です。バス停からは上り坂となるため、荷物がある場合は少し坂道がきつく感じるかもしれません。事前にAWAJI藍LAND projectへ連絡すれば釜口バス停からの送迎も可能です。
島内を自由に回りたい方は、東浦バスターミナルからタクシー、またはレンタカー(要予約)の利用がおすすめです。
ワークショップ・宿泊の予約方法
ワークショップへの参加や、宿の宿泊は予約制です。
ワークショップはこちらから簡単に予約ができるほか、公式Instagramからも予約を受け付けています。

宿泊や長期滞在については、公式サイトから空室状況の確認と予約が可能です。公式サイトは日本語のみとなりますので、翻訳ツールなどを活用してご利用ください。
淡路島観光協会では、四季折々の花々や「御食国」と称される豊かな食文化など、淡路島の多彩な魅力を国内外へ発信しています。