淡路島「土のミュージアムSHIDO」:土のアートミュージアム完全ガイド
淡路島にある「土のミュージアムSHIDO」は、老舗土壁メーカーが手掛けるユニークな文化施設です。伝統的な土壁の魅力をアートとして再定義した空間や、土に触れるワークショップも充実。五感を通じて素材の可能性を体感できる、島の新名所を紹介します。
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目次
- 土のミュージアムSHIDOが生まれた背景
- 館内を巡る:淡路島の土が形作る建築空間
- 「tutito(土と)」:土に触れるアート体験
- カフェで味わう:土のスイーツとスムージー
- 予約方法
- 土のミュージアムSHIDOへのアクセス(公共交通機関)
- 周辺の楽しみ方:淡路島の「食」を楽しむ
- 「土のミュージアムSHIDO」を訪れるべき理由
淡路島といえば、美食や海岸沿いの絶景、そして豊かな自然で広く知られていますが、ここには日本でも類を見ないユニークな文化施設があります。それが「土のミュージアムSHIDO」です。
2023年に淡路島西海岸にオープンした「土のミュージアムSHIDO」は、その名の通り「土」という素材に特化したミュージアム。昔ながらの土壁工場の敷地内にあり、建築資材としての土だけでなく、建築そのものとして、展示空間として、そして五感で楽しむアートとしての土の可能性を探求しています。
土のミュージアムSHIDOが生まれた背景
SHIDOを立ち上げたのは、流行りのクリエイティブ企業ではありません。1912年創業、100年以上の歴史を持つ老舗土壁メーカー「近畿壁材工業」です。
同社は1世紀以上にわたり、天然の土、砂、藁、水を原料とする日本の伝統的な「土壁」と向き合ってきました。調湿性や断熱性に優れ、その土地ごとの土の色や質感を表現できる土壁は、古くから住宅や寺院、蔵、茶室などに欠かせない要素でした。

しかし、20世紀に入りコンクリートなどの近代建材が普及すると、土壁は日常から徐々に姿を消していきました。「土」は建材として使われ続けてはいましたが、あくまで壁の内側に隠れた存在になってしまいました。暮らしの中でその質感や温かみに触れることはなくなり、単なる建築素材の一部として扱われるようになってしまったのです。
同社の濵岡淳二社長によれば、土のミュージアムSHIDOはこの認識を変えるために作られました。

淡路島には美術館がそう多くはありません。だからこそ、ここでは「土」そのものを主役に据えました。目指したのは、土を「壁の中の構造材」から解放することでした。職人の手仕事があれば、土は空間を形作り、アートにもなり得る。SHIDOはその可能性を提示することで、伝統的な建材を現代の文化的メディアとして再定義しているのです。
館内を巡る:淡路島の土が形作る建築空間
「土のミュージアムSHIDO」は、ただ展示作品を眺めるだけの場所ではありません。 建築、企画展、ワークショップ、カフェ、そしてSHIDOオリジナルのプロダクト。そのすべてが、「土こそがこの土地と文化の源である」という一つの思想でつながり、訪れる人を迎えます。

SHIDO館内のコンセプト、その中核にあるのが「地文」です。それは山や川、平野が織りなす大地の紋様であり、長い時間をかけて大地がどう形成されたかという記憶でもあります。
SHIDOでは、この概念をそのまま建築として具現化しました。 ひび割れた大地、むき出しの斜面、荒々しい地層……。 館内の土壁は、自然が形作られる過程そのものを表現しており、長い時間をかけた大地の営みを、目で見て、肌で触れられる体験へと変えているのです。

このコンセプトは、淡路島という土地と深く結びついています。淡路島は「国生みの島」として知られており、近くにある伊弉諾神宮には、山や川、草木、火、水の創造を司る神、伊弉諾尊(イザナギノミコト)と伊弉冉尊(イザナミノミコト)が祀られています。SHIDOでは、こうした神話を直接的に説明するのではなく、素材を通して表現しました。隆起した大地がそのまま空間になったかのような土壁は、圧倒的な存在感を放っています。

常設展示に加え、自然の素材や現代アートと「土」を掛け合わせた企画展も魅力の一つです。

以前開催された展示では、乾燥した麦藁で作るフィンランドの伝統装飾「ヒンメリ」が土の空間を彩りました。軽やかな麦藁と重厚な土。同じ自然界から生まれた素材でありながら、対照的な二つが響き合う空間は、素材が持つ力の違いを浮き彫りにしました。

濵岡社長によると、土の建築と自然のアートが織りなすこの「響き合い」は意図的なものだといいます。かつて自然素材に囲まれて暮らしていた私たち。現代生活で忘れかけていたその感覚を、この空間は呼び覚ましてくれます。多くの来館者が感じる不思議な落ち着きは、単なる空間演出によるものではなく、DNAに刻まれた土への回帰本能なのかもしれません。
「tutito(土と)」:土に触れるアート体験
SHIDOにおいて、土は「見る」だけの対象ではありません。歩き、触れ、五感で感じるものです。より深く土と関わりたいなら、体験スペース「tutito(土と)」へ足を運んでみてください。

2023年12月、ミュージアムの向かいにオープンした「tutito」。コンセプトは至ってシンプルで、「土はただ見るだけでなく、混ぜ、形作り、自らの手で触れてこそ理解できる」というもの。すべてのワークショップで淡路島の土を主原料としており、 初めての方でも気軽に楽しめるよう工夫されています。

一番人気は「土のテクスチャーアート」。淡路島の土と絵の具を使って、立体的な抽象画を描くワークショップです。参加者にはA4サイズの木製キャンバス、白い土、絵の具、ペインティングナイフが手渡され、まずは白い土に絵の具を混ぜ、自分だけの色を作るところからスタートします。

上手な絵を描く必要はありません。大切なのは、土の感触を楽しむこと。色の配合は直感に任せましょう。ナイフで土を塗り広げていくと、意識は自然と「思考」から、手に伝わる「感覚」――土の重みや抵抗感、水分、そしてバランス――へとシフトしていきます。じっくり時間をかけて素材と向き合えば、いつ作品を完成とすべきか、土そのものが教えてくれるはずです。

特別な技術は不要ですし、出来栄えの良し悪しを問われることもありません。土が持つ自然な風合いのおかげで、初めての方でも家に飾りたくなるような素敵な作品に仕上がります。ワークショップの所要時間は60〜90分ほど。乾燥させた作品はそのまま持ち帰れますし、電車やバスでお越しの方は後日配送(国内のみ)も可能です。
カフェで味わう:土のスイーツとスムージー
ワークショップの後は、カフェでひと休み。ここにも、「土」をテーマにしたユニークなドリンクやデザートが揃っています。メニューに並ぶのは、大地や地層、あるいは風景の形をそのまま模したような、目でも楽しめる品々ばかりです。

中でも話題なのが「土のスムージー」。実際に食用珪藻土が使われています。「土を食べる?」と驚くかもしれませんが、珪藻土を食生活に取り入れる文化は、アメリカをはじめとする世界各地に存在してきました。

主成分のケイ素は、美容や健康のサプリメントとしても知られるミネラル。バナナ風味のスムージーにブレンドされており、想像以上に滑らかで優しい味わいです。

もちろん、土が入っていないメニューも充実しています。ミュージアムの世界観を見た目で表現しつつも、馴染み深い素材で作られているため、「土を食べるのはちょっと……」という方でも気兼ねなくカフェを楽しめます。(※カフェ利用には別途入館料が必要です)

天気の良い日は屋上へ。淡路島の海岸線と、瀬戸内海に沈む夕日を一望できる特等席です。
予約方法
土のミュージアムSHIDOへの入館は事前予約不要。現地でチケット(500円/中学生以下無料)を購入できます。
一方、「tutito(土と)」でのワークショップは事前予約制です。特に週末や連休は混み合うため、こちらのサイトからの予約をおすすめします。
完成した作品は、乾燥したらそのまま持ち帰ることができます。公共交通機関でお越しの方には、別料金にて自宅や宿泊先のホテル(国内)への配送も対応可能です。
土のミュージアムSHIDOへのアクセス(公共交通機関)
SHIDOがあるのは、淡路島西海岸の多賀エリア。海水浴場として人気の「多賀の浜」の近くです。
大阪・神戸方面からのアクセス
・各線「神戸三宮駅」へ。 (JR、阪急、阪神線)
・「三宮バスターミナル」から淡路島行きの高速バス(淡路交通、または本四海峡バス)に乗車。
・「淡路IC」または西海岸ルートの近くの停留所で下車。
・路線バスまたはタクシーに乗り換え、多賀エリアへ(タクシーで約15〜20分)。
周辺の楽しみ方:淡路島の「食」を楽しむ
SHIDOを訪れた後は、地元のグルメを楽しむのも良いでしょう。西海岸エリアには、旬の魚や淡路どり、淡路ビーフなどを扱うこだわりの店が集まっています。

徒歩5分ほどの場所にある「食堂酒場 山嵜」は、2024年8月にオープンしたばかりの注目店。商店街の元電気店をリノベーションした、どこか懐かしくも新しい食堂です。

店内は、厨房をぐるりと囲むU字型のカウンターが中心。開放的でありながらも機能的で、誰もが居心地よく食事を楽しめる空間となっています。
メニューは、地元食材を使ったバランスの良い定食が中心です。
・お造り定食
・淡路どりの唐揚げ(キムチ味)
・地あじのフライ定食
・黒毛和牛ミスジステーキ定食

SHIDOで感性を刺激された後は、徒歩圏内の食堂でお腹を満たす。そんな、淡路島の日常に溶け込むような半日旅はいかがでしょうか。
「土のミュージアムSHIDO」を訪れるべき理由
日本建築や素材、現代アート、そして「体験」に関心があるなら、SHIDOは間違いなく訪れるべき場所です。展示物をただ眺めるだけの従来の美術館とは異なり、ここでは土の上を歩き、手で触れ、自ら形作り、味わうことさえできます。単なる鑑賞ではなく、素材に基づいた体験を中心としている点において、日本でも極めて稀有なスポットと言えるでしょう。

クラフトに焦点を当てた旅やゆったりとした旅程、そして地元の産業と文化表現をつなぐ場所を楽しむ旅行者にとって、この場所は特に魅力的です。淡路島では、伝統工芸や食文化、小さな工房が今も土地と深く結びついています。SHIDOは、そうした島内でのクリエイティブな体験とも非常に相性が良く、自然と旅の一部に溶け込みます。
神戸や大阪からもアクセスの良い淡路島。もし少し長めの滞在を計画されるなら、陶芸や藍染め、地元の食文化を巡る旅のプランに、ぜひ「土のミュージアム SHIDO」を組み込んでみてはいかがでしょうか。
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淡路島観光協会では、四季折々の花々や「御食国」と称される豊かな食文化など、淡路島の多彩な魅力を国内外へ発信しています。