淡路島の食文化:生産者から食卓へつなぐ物語
淡路島は古くから「御食国」と称される食の宝庫。特産の玉ねぎ収穫体験や酪農の日常に触れる淡路島牧場、それらを味わえる地元の食堂や居心地の良いカフェなど、生産者から食卓へ繋がる物語を巡ります。
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神戸と徳島に挟まれた瀬戸内海に浮かぶ淡路島。ここは豊かな食文化と自然景観で知られる場所です。穏やかな気候、肥沃な土地、そして豊かな漁場。こうした自然の恩恵が、数世紀にわたって淡路島の農業、畜産業、漁業を支え続け、この島を日本屈指の食の宝庫として形作ってきました。
今回の旅では、淡路島の食文化の源流を訪ねます。玉ねぎ畑や牧場から、島のごちそうを味わえる食堂、そして心安らぐ隠れ家カフェまで。自然から生まれた食材が、どのような軌跡をたどって食卓へと届くのか。生産者や料理人のひたむきな姿に触れることで、淡路島の旅は惜しみない手間と細やかな気遣い、そして積み重ねられた時間が紡ぎ出す豊かな体験へと変わっていきます。
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目次
- 「御食国」としての淡路島:受け継がれる食の系譜
- 淡路島濱田ファーム:海風と太陽が育む玉ねぎ
- 淡路島牧場:酪農の営みを五感で知る
- 洲本「赤富士」——農園から食卓へ
- NeKi 額縁と珈琲 —— 旅の終わりに、静かな一杯を
- 食と共に生きる
「御食国」としての淡路島:受け継がれる食の系譜
淡路島は古くから、食の宝庫「御食国(みけつくに)」としてその名を知られてきました。
この言葉のルーツは平安時代まで遡り、かつて皇室へ食材を献上していた国々を指します。淡路島(兵庫県)は、若狭(福井県)、志摩(三重県)と並び、その豊かな食材と、宮廷の食文化を支え続けてきた歴史において特別な存在とされてきました。
この歴史的な役割は、称号としてだけではなく、食に対する向き合い方そのものとして、今も淡路島に息づいています。食材を単なる消費財としてではなく、世代を超えて静かに受け継がれてきた文化の営みとして大切に扱う。そんな敬意の念が、島の日常に溶け込んでいるのです。

淡路島では、農業、畜産業、そして漁業が互いに深く結びつき、島全体でひとつの循環を生み出しています。この絶妙な調和こそが、日本でもトップクラスの「食料自給率100%超」という驚異的な数字を支える基盤となっています。
こうした姿勢は、単なる生産の枠にとどまりません。栽培、加工、そして地域での販売が密接に結びつき、地域農園やアグリツーリズムを通じて、住民も訪れる人も共に日々の食の営みに触れることができます。ここでいただく一皿は、豊かな自然、人々のたゆまぬ営み、そして積み重ねられた時間がもたらす恵みそのものなのです。淡路島において、食は日常から切り離されたものではなく、生活のなかに深く根ざしています。
こうした視点を持って島を巡れば、一皿の料理がテーブルに運ばれるずっと前から、その「食」の物語が始まっていることに気づくはずです。
淡路島濱田ファーム:海風と太陽が育む玉ねぎ
海を望む広大な畑が広がり、潮風がかすかに香る南あわじ市。ここに、濱田一家が営む「淡路島濱田ファーム」があります。秋から初冬、春から初夏にかけての繁忙期には、家族総出で畑に立ち、ワイワイ賑やかな雰囲気で満たされます。

淡路島の玉ねぎは、長い日照時間と温暖な気温、 そして海に囲まれた島ならではの土壌と海風によって、じっくりと育まれます。こうした自然の恩恵が、淡路島産玉ねぎ特有のまろやかな甘みと、とろけるような柔らかさを生み出しているのです。

淡路島濱田ファームでの玉ねぎ作りは、毎年9月から始まります。9月から12月にかけては苗を植え、11月中旬から翌6月中旬までは収穫シーズンが続きます。時期に合わせてさまざまな品種が育てられているため、淡路島濱田ファームでは一年中、島の季節の移ろいを感じさせる一玉に出会うことができます。

淡路島濱田ファームでは、特定の時期に実際に畑に入って農家の方々と共に過ごし、栽培方法やそのサイクル、日々の農作業について学ぶことができます。自らの手で土に触れ、一玉ずつ丁寧に土を払いながら玉ねぎを収穫する体験は、淡路島でどのように食が育まれているかを肌で感じられる貴重な機会となるでしょう。
この体験は年齢を問わず誰でも参加でき、農業の経験も一切問いません。初めての方でも気軽に参加できます。事前予約制となっており、以下ボタンから申し込みが可能です。
島の清々しい空気に包まれ、土に触れながら畑に立つ。 そのひとときは、この土地、流れる時間、そして人の手が三位一体となって、いかにして「食」を形作っているかを、鮮やかに教えてくれるはずです。
淡路島牧場:酪農の営みを五感で知る
「淡路島牧場」は、広々とした放牧場や牛舎で牛たちがのびのびと育てられている、活気ある酪農の現場です。ここは観光向けに用意された施設ではなく、日々、ありのままの酪農の営みが続けられている場所。訪れる人々は、その日常の風景に加わり、体験を通じて淡路島の牛乳がどのように生まれるのかを肌で感じることができます。

乳搾りや手作りバター体験、そして子牛へのミルクやり。どの体験も、自ら手を動かすことで、私たちが毎日手にする乳製品が出来上がるまでの道のりを教えてくれます。

なかでも、バター作りは大人も子供も夢中になれる体験のひとつです。容器に入れた新鮮な牛乳を、脂肪分が分離して固まるまで自分の手で振り続けます。わずか数分の作業ですが、繰り返し手を動かすなかで牛乳の質感が変化していく様子には、思わず引き込まれてしまいます。出来上がったばかりのバターをクラッカーに乗せて一口食べれば、そのフレッシュで濃厚な味わいに驚くはずです。それは、パッケージされた市販品とは一線を画す、この場所だけの特別なご馳走です。

何より印象的なのは、 酪農そのものの環境の素晴らしさです。牛たちは清潔で広々とした空間で過ごし、徹底して管理された食事を与えられ、日々の細やかな体調管理のもとで健やかに育てられています。こうした真摯な向き合い方は牛乳の味わいにも如実に現れており、その美味しさはまさに感動的です。

島の人々の間で評判なのが、特産の「モーツァルト牛乳」。その名の通り、牛舎でクラシック音楽が流れる穏やかな環境で育った牛たちから絞られた牛乳です。ストレスを抑えた環境で育てることで、驚くほどまろやかな口当たりの牛乳が生まれます。このモーツァルト牛乳は、プレーンタイプとコーヒー牛乳の2種類があり、島内のいたるところで親しまれています。淡路島を訪れた際は、ぜひ手に取ってみてください。
洲本「赤富士」——農園から食卓へ
淡路島・洲本市にある「赤富士」は、和朝食とシンプルな定食で親しまれている小さなお食事処です。朝は6:30から10:00まで、昼は11:00から14:30まで。島の朝を彩る場所として、早くから暖簾が掲げられています。

お品書きの主役は、淡路島産の米、魚や肉、お味噌汁、そして卵焼きといった、土地の恵みをふんだんに取り入れた定食。さらりといただける淡路鶏がゆなどのメニューも用意されています。島で育ったお米を毎日丁寧に精米し、炊き上げる。そんな、日常のありふれた食材を実直に調理する姿勢に、このお店のこだわりが凝縮されています。
最新の営業時間やメニューについては、店主が自らInstagramで発信しています。

ここでいただく料理は、雑味がなく、心身が整うような完成された味わい。お腹を満たしながらも、体への負担を感じさせない優しさがあります。ゆったりと進む食事の時間は、一皿の料理が運ばれてくるまでに費やされた人の手と歳月に、そっと想いを馳せるひとときを運んでくれます。
NeKi 額縁と珈琲 —— 旅の終わりに、静かな一杯を
淡路島南部、閑静な住宅街にひっそりと佇む「NeKi 額縁と珈琲」。ここは、一日のすべての予定を終え、あとはただ心ゆくままに過ごすだけ…そんな時間に訪れたくなるカフェです。

古い建物を改装したこぢんまりとした店内に入ると、そこにはいつまでも留まっていたくなるような心地よい空気が流れています。控えめな話し声が似合うその空間では、時の流れがいつもより穏やかに感じられるはず。一人で訪れ、本を片手に過ごす人。一杯のコーヒーとともに、予定よりも少しだけ長く足を止める人。誰もが急ぐことなく、思い思いの時間を慈しんでいます。
店主は額縁作家としての顔も持ち、その感性が店内の隅々にまで息づいています。壁に飾られた手仕事の額縁や作品たちが、この場所に唯一無二の個性を与えています。席に座れば、木目の美しさ、カウンターにカップが置かれる音、そして店内に差し込む光が、時間とともに形を変えていく様子など、ふとした細やかな情景に自然と心が向いていくでしょう。

島を巡った一日の終わりに訪れるNeKiは、ただ腰を下ろし、何をするでもなく最後の一杯をゆっくりと味わえる場所。そうして過ごすうちに、その日の出来事や風景が、静かに心に馴染んでいくのを感じるはずです。
食と共に生きる
淡路島では、日々の営みそのものが「食」を物語っています。土から玉ねぎを引き抜く感触、着実に、丁寧に作業を続ける農家の方々、そして酪農の現場で子牛にミルクをあげるひととき。いずれも、観光のために特別に用意されたものではなく、島のありのままの日常をそっと開いて見せてくれているかのよう。けれど、そうした何気ない光景に触れることで、私たちは気づくはずです。普段、当たり前のように並んでいる食べ物の背後に、どれほどの慈しみと積み重ねられた時間があるのかを。

さらに驚くべきは、これほど豊かな日常が、実は主要都市からそれほど遠くない場所に位置していることです。大阪や神戸からわずか一時間余り。淡路島は、都市の喧騒から切り離された穏やかな時を刻みながら、決して遠い場所ではありません。
ゆったりとした時の流れに身を置き、日常の営みを愛おしむ。そんな旅を楽しみたい方にとって、淡路島は訪れる価値のある特別な場所となるはずです。
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淡路島観光協会では、四季折々の花々や「御食国」と称される豊かな食文化など、淡路島の多彩な魅力を国内外へ発信しています。