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知らずに通り過ぎてない?渋谷駅の壁画『明日の神話』
渋谷駅、山手線と井の頭線をむすぶ連結通路。そこを歩いていると突如、現れる謎の巨大壁画。いまや渋谷の定番観光スポットになった、壁画『明日の神話』の魅力に迫ります。
渋谷駅、山手線と井の頭線をむすぶ連結通路。そこを歩いていると突如、謎の巨大壁画が現れます。
この奇妙な壁画は、一体何なのでしょう?
渋谷駅から、画家・岡本太郎の世界へ
この壁画の正体は、日本人なら誰でも知っている画家・岡本太郎が制作した、『明日の神話』。岡本太郎は、「芸術は爆発だ!」などの、ちょっと奇抜な発言で有名です。
『明日の神話』は、1968年から69年の間にかけて、メキシコで制作されたもの。しかし依頼主の経営状況の悪化により、永らく行方不明になっていたのです。ところが2003年、メキシコシティ郊外の資材置き場にて、この壁画が突如発見されました。その後は修復作業を経て、毎日約300万人以上の人々が利用する、ここ渋谷駅へやって来たのです。
渋谷駅を利用するなら、この壁画を見ない理由はありません!
あなたはどう思う? 2011年の落書き事件
岡本太郎の『明日の神話』に描かれているテーマは、1954年、米国の水爆実験により日本のマグロ漁船が被爆した「第五福竜丸事件」だといわれています。中心から渦巻く赤い閃光に、おどろおどろしい闇に包まれた背景は、毎日たくさんの若者で賑わう渋谷駅には、あまり似つかわしくないかもしれません。
実はこの『明日の神話』、Chim↑Pomというアーティスト集団によって、落書きをされてしまったことがあります。現在は撤去されており落書きを見ることはできませんが、Chim↑Pomは『明日の神話』の右下部分に、2011年5月1日、福島第一原発を模したと思われる絵を、ベニヤ板に描いて付け足しました。ベニヤ板は壁に両面テープで貼付けられ、岡本太郎の壁画本体は傷つけないよう、配慮がされていたといいます。
この事件はtwitterなどのSNSで話題になったほか、新聞・テレビ各社でも報道されました。2011年3月11日の東日本大震災からまだ数ヶ月のうちに発生したこの落書き事件は、「悪質なイタズラ」「壁画に破損はないのだから、純粋なアート行為」などなど、当然ながら賛否両論のさまざまな反応をもたらしました。しかし、『明日の神話』の作者である岡本太郎自身も過激なところがあったためか、岡本太郎記念館館長の平野氏は「太郎が生きていても、きっと怒らなかっただろう」というコメントを出しています。
イギリスには、ロンドンを中心に活躍する覆面アーティスト、バンクシー(Banksy)がいます。こうしたゲリラ的なアーティスト活動を行なうChim↑Pomは、日本でもよくバンクシーと対比されて話題になります。
Chim↑Pomの落書き事件、あなたはどう思うでしょうか?
大人しく、礼儀正しいイメージのある日本人。しかし中にはもちろん、物議をかもすような過激な主張をする人たちだっています。
渋谷駅を通り過ぎる際は『明日の神話』を見て、アートや日本の未来について、考えてみてはいかがでしょうか?
Information
渋谷駅『明日の神話』
住所:東京都渋谷区道玄坂1丁目
Wi-Fi環境:なし
アクセス:JR山手線・京王井の頭線「渋谷」駅下車、マークシティ内連結通路
電話番号:050-2016-1601(JR東日本お問い合わせセンター)
/050-2016-1603(英語・韓国語・中国語)
芸術系大学院卒の会社員。日本のアートの魅力を世界に発信していきたいです。