【人形町】鉄道ファン御用達の立ち飲み缶詰バー「キハ」
ビジネスパーソンが行き交う東京・人形町。レトロでありながら新しさも感じさせる路地裏に、鉄道ファン必見の小さなバー「キハ」がひっそりと佇んでいます。わずか数坪の店内には、鉄道弁当の掛け紙やオリジナルのカップ酒、そして本物の車両そっくりの座席が並び、まるで電車旅をしているかのような非日常感を味わえます。
一歩足を踏み入れれば、鉄道の旅が始まる

「鉄道ファンはどこで集まっているの?」と聞かれて「秋葉原」しか思い浮かばないなら、情報が少し古いかもしれません。ここでは、鉄道ファンに愛される東京の秘密基地「キハ」をご紹介します。
少しはにかんだような笑顔が印象的な店長(二上さん)が、2006年に人形町でこの小さなバーを開きました。しかし、ご本人は「鉄道ファンではない」と冗談めかして話すので、最初は少し驚きました。もともと鉄道ファンだけをターゲットにしていたわけではなく、「旅が好き」という純粋な気持ちから、「遠出をしなくても、電車旅の非日常感を味わえる空間」を作りたいと考えたのがきっかけだったそうです。
昭和の鉄道旅に欠かせない、缶詰とカップ酒

「キハ」では、焼き魚や揚げ物といった温かい料理も提供していますが、店内にずらりと並んだ缶詰とカップ酒も、この店の大きな魅力です。

10年ほど前、電車旅のお供といえば、手軽に持ち運べるカップ酒が定番でした。当時は、鉄道に乗って各地の日本酒を楽しむというテーマの雑誌も発行されていたほどです。当時のレトロな電車旅の雰囲気を再現し、仕事帰りのビジネスパーソンが気軽に一杯飲めるようにと、「缶詰+カップ酒」というスタイルを始めたそうです。

店内には約50種類の缶詰が用意されており、焼き鳥やイワシ、コンビーフといった定番商品が常連客に人気です。

日本酒も約5種類を常備。電車が描かれたオリジナルのカップ酒は、新潟県の蔵元「金鵄盃酒造(きんしはいしゅぞう)」が「キハ」のためだけに特別に製造しているもので、この酒蔵と「キハ」でしか手に入らない貴重な品です。
鉄道ファンが作り上げた「駅弁の掛け紙」の壁

店内は1階が「1号車」、2階が「2号車」と呼ばれています。1号車から2号車へと続く階段の壁には、日本全国の駅弁の掛け紙が100種類近くも飾られています。

これらは、店長や常連客が旅の記念として持ち帰ったもので、それぞれの旅の思い出が美しいアートのように壁を彩っています。

その中には、台湾の鉄道グルメ「台鉄弁当」の掛け紙もあり、ひときわ目を引いていました。
驚くほどリアルな電車内の再現度

2階(2号車)は、電車内をイメージした空間になっています。座席、つり革、荷物棚などは、店長の二上さんが車両メーカーに特別にオーダーして作ってもらったそうです。車内上部の広告も、季節やイベントに合わせて定期的に貼り替えられており、そのこだわりには驚かされます。

座席の横には、立ち飲み用のテーブルが置かれています。テーブルの上には、店長と常連客が旅の記念に残しておいた切符がずらり。常連客は、これらの切符を眺めながら、旅の思い出話に花を咲かせるそうです。

2号車はバーとしてだけでなく、不定期で落語(※1)や演劇のイベントも開催しています。独特の雰囲気から、テレビ番組や映画のロケ地として使われることも多く、壁には多くの有名人のサインが飾られていました。
※1:落語…日本の伝統的な話芸。演者一人で複数の登場人物を演じ分ける。
最後に

店長である二上さんは、お店の営業があるため、遠くへ旅をすることがなかなかできないそうです。そのため、鉄道旅のほとんどは東京近郊ですが、中でも千葉県の銚子と、新潟県の酒蔵や鉄道基地がある新津(にいつ)が特におすすめだと言います。
「鉄道旅に行きたいけど、どこに行けばいいか分からない…」そんなときは、まずこの2つの場所を訪れてみてはいかがでしょうか?そして、旅の記録を携えて、「キハ」の二上さんに会いに行ってみてください。
In cooperation with キハ
現在はMATCHAの台湾版編集者を務めています。台湾の彰化県出身で、過去台湾で日本人向けの可能ガイドや日本のテレビ局での取材コーディネーターに従事していました。旅行プランの立案が得意で、特に食べ物や温泉などに関連する観光スポットが得意分野です。趣味は写真を撮ることで、特に食べ物やポートレートの写真が好きです。バーや居酒屋などおじさんがよく行くところが好きなので、「MATCHAおじさん」と自称しています。