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京都に隣接する滋賀県にある比叡山延暦寺は、日本仏教の聖域。千日回峰行をはじめとする厳しい修行を行う僧侶たちが、今もいます。そんな比叡山延暦寺の見どころや、特別な体験・イベントを紹介します。
ライター
MATCHA-PR
Tokyo, Japan
禅をベースにした「マインドフルネス瞑想」が西洋で注目されるなど、近年、仏教に対する関心が高まっています。
日本には77,000以上の仏教寺院があると言われていますが、中でも「日本仏教の母山」と呼ばれているのが、京都の近くにある比叡山延暦寺です。
本記事では、1994年にユネスコの世界文化遺産にも登録された比叡山延暦寺の歴史や現在、見どころ、仏教文化に深く触れられる体験を紹介します。
Picture courtesy of 比叡山延暦寺
比叡山延暦寺の起源となるお寺は、788年に最澄(767年ごろ~822年)が開創しました。
当時、日本では奈良に朝廷(政府)が置かれていましたが、仏教僧の影響力が強くなるにつれ、政治が混乱し、多くの人が苦しんでいました。
こうした中、最澄は、中国で仏教を学び、新たな宗派「天台宗」を開きます。最澄は「身分に関係なく、すべての人が悟りを開いて仏となれる」と説き、仏教を通して社会をよくしていこうとしました。
延暦寺をつくるうえで、最澄が特に重視していたのは、人材育成でした。そのため、延暦寺はさまざまな仏教の宗派の教えが学べる総合大学のような存在となり、日本史に大きな影響を与えた高僧たちを輩出してきました。
長い歴史の中で、延暦寺は、政治権力との難しい関係に立たされることがしばしばありました。戦国時代には、武将・織田信長による焼き討ちといった憂き目にも遭っています(※)。しかし、江戸時代に再興が進み、現在は再び、日本仏教の中心的な存在となっています。
※延暦寺は、有力な武将だった織田信長より、敵対していた朝倉氏・浅井氏の味方をしないよう通告を受けたが、これに回答をしなかった。これがきっかけとなり、1571年、山のほとんどの建物が焼かれ、多くの僧侶たちが殺害された。
延暦寺の僧侶たちは、現代人が驚くような修行を、今も続けています。
例えば、「常行三昧(じょうぎょうざんまい)」は、ロウソクが灯る堂内で90日間、念仏を唱えながら仏像の周りを歩き続ける修行。その際、立ちながら休むことはできますが、食事以外で坐ることはできません。また、この間は基本的に一切、他人と話をしません。
また、比叡山の修行で特に有名なのは「千日回峰行」(※)でしょう。これは、7年間かけて行われる修行です。
最初の3年間は、1日30キロ以上歩きながら各所で礼拝をしていく取り組みを年間100日以上行い、4年目以降はさらに距離や日数が増えていきます。途中、9日間にわたって水や食事、睡眠を一切取らず、真言を唱え続ける「堂入り」もあります。
※英語で「Marathon Monk」と言われることが多いが、実際にはマラソンではなく、途中でさまざまな祠やお堂に参拝して回る。
なぜ、延暦寺では、このような修行を現在も続けているのか。
延暦寺では、今も大切にされている言葉があります。それは最澄の「一隅を照らす此れ則ち国宝なり」、つまり「物質的な富は本当の社会の財産ではない。自分が今いる場所から社会を良くしていこうという人材が国の宝なのだ」という言葉です。
この「一隅を照らす」ような人材になるには、深く己を見つめ、心の迷いを払う必要があります。そのために、厳しい修行が今も行われているのです。
もちろん、一般の観光客が、このような修行に参加する必要は必ずしもありません。比叡山延暦寺は、美しい建築物が多くあり、観光地としても十分楽しむことができます。
ただ、そうした観光客を受け容れつつも、人々の迷いを払い、心を救う聖域としての厳かな姿を、今も比叡山は保っています。
比叡山延暦寺は、敷地面積が全体で約1700ヘクタールある広大なお寺で、東塔(とうどう)、西塔(さいとう)、横川(よかわ)の3エリアに分かれています。
中心となるのは東塔エリアで、ここには「延暦寺バスセンター」があり、西塔、横川などに行くシャトルバスが発着しています。
西塔は東塔から1キロメートル、横川は4キロメートルほど離れているので、効率的に回りたい場合、レンタカーやシャトルバスを使うのがオススメです。
その一方で、「比叡山で自分を見つめ直したい」という方には、徒歩で回るのがオススメです。3エリアを回る「三塔巡り」は、「千日回峰行」の縮約版になると考えられています。
なお、3エリアには、それぞれ位置づけがあります。
・東塔:薬師如来(現世の願いを叶えてくれる仏)をまつっており、現在をより善くしていこうと決意する場所 ・西塔:仏教の開祖・釈迦をまつっており、自分たちの過去を見つめ直す場所 ・横川:観音菩薩(未来の世界を善くする仏)をまつっており、よりよい未来を創っていこうと決意する場所
これを意識しながら回ることで、比叡山延暦寺での時間をより充実して過ごすことができるでしょう。
以下、各エリアの見どころを紹介します。
延暦寺の発祥の地で、重要なお堂が集まっています。
「根本中堂」は比叡山延暦寺で一番最初につくられたお堂で、東塔エリアの中心です。災害や火災で何度か焼失しており、現在の建物は1642年に竣工されたものです。
ここの見どころは、ご本尊(お堂の中心にまつられている仏像)の前のロウソク。これは、約1200年間ずっと灯され続けており、「不滅の法灯」と呼ばれています。
根本中堂では、僧侶が護摩炊き(平安を祈る仏教の儀式)をしている姿を見ることもできます。
このほか、江戸時代に徳川将軍から寄進された天井絵や、古い漆塗りの柱などの見どころが多く、建物は国宝に指定されています。
なお、根本中堂は2016年~2026年にかけて大改修が行われており、現在、屋根の葺き替えといった珍しい作業を見ることができます。
比叡山では、世界的に知られる禅僧・道元や、日本の主要な仏教宗派である浄土真宗の宗祖・親鸞、浄土宗の法然などが学びました。
大講堂では、これらの著名な各宗派の宗祖の木像がまつられています。さらに、釈迦を始めとして仏教・天台宗ゆかりの高僧の肖像画を見ることができます。
最澄は、日本全国に6カ所の仏塔を建てて、日本を護る計画を立てていました。その中心として建てられたのが、「法華総持院東塔(ほっけそうじいん とうどう)」(※)です。
現在の建物は1980年に再建されたもので、塔内には、有志の方々が書いた法華経が1000部、収められています。法華経は7万文字近くの長いお経なので、大変な労力をかけて作成されたことが想像されます。
※内部は非公開です。
文殊楼(もんじゅろう)は、延暦寺の山門にあたります。もともと3代目の天台座主(天台宗のトップ)である円仁(えんにん、794年~864年)が創建したものですが、1668年に焼け、その後、今の建物が再建されました。
美しい朱塗りの門は、延暦寺のシンボルとなっています。
第2代目の天台座主・円澄(えんちょう、772年~837年)が開いたエリアです。延暦寺の僧侶が修行を行っているお堂などがあります。
西塔の「浄土院」(※)は、最澄の遺骸を安置している場所です。ここでは、比叡山延暦寺から選ばれた僧侶が「十二年籠山行(ろうざんぎょう)」を行っています。
「十二年籠山行」とは、最澄がまるで生きているように、奉仕活動を行う修行です。食事を運んだり、境内や堂内の清掃、坐禅、勉学をひたすら毎日行ったりする日課を、12年間、1日も休まず行います。
「常行堂」と「法華堂」(※)では、前述の「常行三昧」といった修行が行われています。
両方のお堂は、廊下でつながっています。ここは、12世紀に活躍した比叡山の僧侶・弁慶が、この廊下を肩を入れて担ぎ上げたという伝説が残っており、「にない堂」とも呼ばれています。
※「浄土院」と「常行堂・法華堂」は内部非公開です。
横川は、前述の3代目天台座主・円仁が開いたエリアです。
「横川中堂」は、「舞台造り(※)」と呼ばれる建築技法で建てられたお堂です。
「横川中堂」は、下から見ると、海に浮かぶ船のように見えます。これは、7~9世紀にかけて日本から中国に派遣されていた「遣唐使船」をモデルに建てられたため、と言われています。
当時、最澄をはじめとする多くの僧侶が「遣唐使船」に乗り、中国で仏教の勉強をしました。「横川中堂」からは、そうした未来へ向かって進んでいるような力を感じられそうです。
※長い柱を使って山や崖などに建てられた建物。懸造(かけづくり)とも言われる。
元三大師堂(がんざんだいしどう。正式名称は四季講堂)は、天台宗の高僧・良源(912年~985年)の住まいだった場所です。良源は、自分の生き方に迷っている人に対し、観音菩薩の言葉を書いた紙100枚から任意の紙を引かせて、その迷いを払ったと言われています。
これが日本におけるおみくじの起源になったことから、「元三大師堂」はおみくじ発祥の地と言われています。現在も、ここではユニークな形でおみくじをできる(要予約)ほか、魔除けの護符の授与を受けることもできます。
国宝殿 Picture courtesy of 比叡山延暦寺
そのほか、比叡山には、西洋の印象派画家の作品を再現するようにつくられた庭園美術館「ガーデンミュージアム比叡」や、貴重な仏像や資料が収められた博物館「国宝殿」などもあり、観光を楽しむことができます。
比叡山延暦寺では、さまざまな体験を通して、仏教の教えに触れることができます。
比叡山延暦寺では、比叡山のストーリー性を感じながら、この地ならではの食を楽しめるイベント「DINING OUT」が開催されています。
第1回目は、2023年2月に開催されました。今後の予定は「ONE STORY」の公式HP(日・英)をご覧ください。
宿坊である延暦寺会館では、事前予約をすることで写経(※)や坐禅を体験できます。初心者も参加可能です(説明は日本語のみ)。申し込み先などの詳細は、延暦寺会館の公式HPをご覧ください(HP、体験時の説明とも日本語のみ)
※写経……仏教のお経を書き写すことで心を落ち着かせ、集中力を養う修行。
2021年に開催された法要での声明の様子
キリスト教において教会音楽があるように、仏教の天台宗も音楽によって仏をたたえる「声明(しょうみょう)」を行います。
声明が行われる日程は決まっていませんが、延暦寺来訪時に法要(儀式)を行っている場合は、見学をすることが可能です。また、東京にある国立劇場などで、声明のコンサートが開催されることもあります。
東塔エリアにある延暦寺会館では、宿泊や食事をすることができます。ここでは、仏教徒の間で伝統的に食されてきたベジタリアン料理「精進料理」を味わうことができます。そのほか、琵琶湖の眺めが楽しめる大浴場もあり、旅や修行体験で疲れた体を癒すことができます。
そのほか、比叡山には、以下の食事スポットがあります。
・比叡山峰道レストラン ・鶴㐂(つるき)そば 比叡山店 大講堂 ・カフェ・ド・パリ ・カフェテラスyumemi
田の谷峠料金所
比叡山には、複数の行き方があります。
公共交通機関を使う場合、まずは電車で京阪電鉄の坂本比叡山口駅、あるいは叡山電鉄の八瀬(やせ)比叡山口駅に行き、そこからケーブルカーに乗ります。詳細は、比叡山・びわ湖DMOの公式HP(英語、フランス語、繁体字、簡体字、韓国語の案内あり)をご覧ください。
レンタカーを使う場合、通行料金がかかるので注意しましょう。比叡山の入り口となる田の谷峠料金所から東塔エリアまで行く場合は1,700円、西塔・横川エリアまで行く場合は3,270円となります(2023年1月現在)。
なお、冬場は雪が積もり、通行規制がかかることがあります。早朝に入山できなくなることがあるほか、スタッドレスタイヤを付けていない車が通行できなくなる場合があるので注意しましょう。
詳細は比叡山ドライブウェイの公式HP(日本語のみ)をご覧ください。
比叡山延暦寺 〒520-0116 滋賀県大津市坂本本町4220
比叡山延暦寺
Written by Mizzochi Sponsored by 文殊仙寺
2024.11.01
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