日本の真ん中、岐阜県。その北部にある飛騨高山で行われる「絵馬市(えまいち)」。夏の風物詩である絵馬市に参加し、絵馬を購入してみましょう。
神社で願い事をする時、馬の描かれた木の札を奉納します。飛騨地方では和紙に馬を描き、さらにこれを自宅や会社の玄関へ貼る風習があります。幸運を載せた馬が家へ駆けこむよう、馬の頭が家の中へ向くように貼ります。この紙に描かれた絵馬を「紙絵馬(かみえま)」と言い、紙絵馬を購入できる場所が絵馬市です。
神に願い事をする時、馬の描かれた木の札を奉納します。古来、神は馬に乗って人間の世界を訪れるものと考えられており、神事においては本物の馬を奉納していました。時代が下り、本物の馬に代わり土や木で作った馬を奉納するようになり、これが現在の絵馬の元となっています。
飛騨地方では和紙に馬を描き、さらにこれを自宅や会社の玄関へ貼る風習があります。描かれた馬は背に宝の入った袋を載せ、縁起の良い文字が描かれた馬具を身につけています。幸運を載せた馬が家へ駆けこむよう、馬の頭が家の中へ向くように貼ります。
飛騨高山の中心街より徒歩で40分ほどの場所にある松倉山(まつくらやま)。ここに松倉観音堂(まつくらかんのんどう)があります。旧暦の7月9日、近隣の農家が松倉観音堂に泊って養蚕の繁栄を祈り、翌10日に馬を飾って参拝し、牛や馬の安全や無病を祈る風習がありました。これが「松倉絵馬市」の始まりです。
現在の「松倉絵馬市」は毎年8月9日、10日に開かれます。本物の馬の代わりに紙絵馬を販売し、人々は持ち帰った紙絵馬を自宅や会社の玄関に貼り、家族の健康や商売の繁盛など、幸運を祈ります。紙絵馬はサイズによって値段が異なり、1,000円~4,000円です。注文の際に自分の名前を告げ、墨書きしてもらいます。
「松倉絵馬市」の特徴は、深夜遅くまで行っていることです。暗い山道を15分ほど歩いていくと、遠くにぽつんとかがり火に照らされた祠が見えてきます。僧侶が祈りを捧げる読経の音と声が低く響き、紙絵馬を求める人々のざわめきが耳に入ってきます。まるでこの世のものと思えないような幽玄な雰囲気はこの日、この場所でしか体験することができません。昼から夜にかけて長時間行われる「松倉絵馬市」ですが、夜に出かけることを強くお勧めします。
ただし、昼は容易に歩ける山道も、夜は暗く転びやすくなります。ライトを持ち、歩きやすい靴で出かけると良いでしょう。また、山の中は虫が多く、刺されることがあるため、虫よけのスプレーを薬局で購入し、事前に体へ塗布しておくと良いでしょう。長ズボンを穿けば足首周りの防御となります。
もちろん、昼間も「松倉絵馬市」は行っています。お子様をお連れの方は昼間に訪れると良いでしょう。かんたんな山道ですので、小さなお子様連れでも問題ありません。気持ちの良いハイキングを楽しみながら夏の風物詩を体験することができます。
昼に出かける場合も夜と同じく、虫に刺されないよう、虫よけのスプレーや長ズボンを穿いて身を守ると良いでしょう。お子様が虫に刺されるとひどく腫れる場合があります。虫に刺されないよう、事前に準備しておくことが大切です。また、黒い衣服は蜂を刺激します。黒色は身につけない方が良いでしょう。
「松倉観音堂」の近くには野外博物館として有名な「飛騨の里(ひだのさと)」があります。「飛騨の里」の見学のあと、足を伸ばし、「松倉絵馬市」に参加してみてはいかがでしょうか。日本の風土に根付く民間信仰に触れる機会は多くなく、あなたの日本旅行の貴重なハイライトの1つとなるに違いありません。
2024年8月9日(金)12:00~23:00
2024年8月10日(土)6:00~14:00
松倉観音堂
Google Map 松倉観音堂
飛騨高山の市街地のほぼ中心に「山桜神社(やまざくらじんじゃ)」があります。こじんまりとしたお社は静かで心落ち着く場所ですが、年に一度、大変なにぎわいを見せる催しがあります。これが「馬頭絵馬市(ばとうえまいち)」です。
「山桜神社(やまざくらじんじゃ)」の由来は、飛騨高山を治めた第4代高山城主 金森頼直(かなもりよりなお)公の愛馬「山桜(やまざくら)」にあります。
その昔、各地の城主は領地と江戸(東京)に交代で勤務する習わしでした。金森頼直公が江戸で勤務していた1657年、江戸を大火が襲いました。歴史上でも有名な明暦三年(めいれき3ねん)の大火です。この折、頼直公は江戸城の鎮火に従事しましたが、大変な猛火が御身の周囲を覆い、脱出の道を塞がれてしまいました。その時、愛馬の山桜が主君を乗せ従者三人を従えて、江戸城の広大な水堀を飛び超え、その危急を救ったと伝えられています。
功労を打ち立てた山桜は晩年を向町の厩で過ごしました。この厩の址に「山桜神社」は建立されました。山桜は馬頭観音(ばとうかんのん)として祀られ、今日に至るまで厚い信仰を集めています。
※馬頭観音:仏教における信仰対象である菩薩の一尊。観音菩薩の変化身(へんげしん)の1つで、頭の上に馬の頭を冠のように乗せている姿で表される。家畜の安全と健康や、旅人を守るとされている。
幸運のシンボルである馬を描いた絵馬はお土産にぴったり。好きな色の絵馬を選び、名前を告げて購入しましょう。あなたの名前と今日の日付が墨書されます。自宅に持ち帰ったら玄関に貼りましょう。馬の頭が家の中へ向かうように貼れば、絵馬があなたとあなたの家族に幸運をもたらします。絵馬を見るたびに、素晴らしい日本の風景とその思い出が蘇ることでしょう。
2024年8月1日(木)~8月10日(土)
10:00~15:00
絵馬市は夏のイベント。この時期以外に飛騨高山を旅行する人は絵馬市に参加できません。でも大丈夫、紙絵馬を購入できる場所があります。「松倉絵馬市」の版元である「池本屋(いけもとや)」では一年を通して紙絵馬を販売しています。
150年ほど前から続く伝統的な技法で和紙に絵馬を刷り、彩色する店主。彼は紙絵馬を1枚、2枚とは数えません。1頭、2頭と数えます。生きている馬のように大切に紙絵馬を扱う職人から、絵馬の由来や選び方を聞きながら購入するのも素晴らしい日本旅行の経験となるでしょう。
池本屋(いけもとや)
営業時間 8:00~19:00
定休日 金曜日
Google Map 池本屋
公式サイト 池本屋
HIDA TAKAYAMA TOURIST INFORMATION
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飛騨高山観光公式サイト「飛騨高山旅ガイド」