【群馬県富岡市】なぜ世界遺産?富岡製糸場~知的好奇心を刺激する、大人の社会見学のすすめ~
中学の歴史の授業で習うほど、日本人なら誰もがその存在を知っている「富岡製糸場」。2014年にめでたく世界文化遺産に登録されたことも記憶に新しいですが、“詳しいことはよくわからない”という方も多いのではないでしょうか?今回は実際に現地へと足を運び、創業に至るストーリーや見学時の見どころについて、富岡製糸場企画活用係の長谷川さんと茂木さんにお話を伺い、記事にまとめました。
富岡製糸場ってどんなところ?
富岡製糸場は、1872(明治5)年につくられた、日本初の本格的な模範器械製糸工場です。当時は全国から300人以上の工女達が集められ、働いていました。創業当初に繰糸技術を学んだ工女達は、やがて指導者となり、日本全国の工場にその技術を伝承していきました。日本の建築様式とヨーロッパの建築様式を組み合わせて建てられた繰糸所・西置繭所・東置繭所は、建設から150年以上経った今でも当時とほとんど変わらない姿が保たれ、国宝となっています。
「明治5年」と刻まれたキーストーン
繰糸所(国宝)
富岡製糸場はどうして出来た?
→欧米に負けない国づくりのため、政府が計画
日本を「欧米の国々と対等に付き合える豊かな国にしよう」と考えた明治新政府は、近代的な産業を起こし、輸出によって外貨の獲得を試みました。富岡製糸場はその代表であり、外国から機械を買い入れ、技術者を招いて作られた国営の工場なのです。
なぜ世界遺産になったの?
→絹(シルク)産業に革命を起こしたから
富岡製糸場の誕生により、長い間生産量が限られていた生糸の大量生産に成功。その質の高い生糸や養蚕技術はやがて海外に広まり、世界規模で絹産業の発展へと繋がっていきました。かつて一部の特権階級のものであった絹を世界中の人々に広め、生活や文化をさらに豊かなものへと変えた功績が認められ、2014(平成26)年に「富岡製糸場と絹産業遺産群」として世界文化遺産登録となりました。
西置繭所(国宝)
「自動繰糸機」説明パネル
ほっこり?意外な見どころ
富岡製糸場は、敷地内に社宅・診療所・食堂・浴場などが設けられ、小さな町のようだったそう。働いていた人々の当時の暮らしぶりを、肌で感じることが出来る社宅群は意外な見どころの1つです。「社宅76」にはレトロな家具や、実際に社宅で生活していた古屋家のアルバム(レプリカ)などが展示されています。蚕の生態展示もあり、こちらもおススメです。
「社宅76」
なぜか感じるなつかしさは、私たちのDNAに刻まれた記憶でしょうか…?
富岡製糸場の現在
もともとは大量の繭の保管に使われていた「西置繭所」(国宝)が、コンサートや講演会などを行える多目的ホールにリノベーションされ、人々の新しい体験を生み出す空間へと進化を遂げています。国宝でイベントを開催出来るとは、なんとも希少価値が高いです。(ちなみに貸出料金は半日で55,000円。意外とリーズナブル…?)過去には結婚式が行われたこともあるそう。詳しくは以下ホームページにて。
まとめ
今回、教科書の中でしか知らなかった場所に実際に足を運んでみて、改めて感じられたことがありました。それは当時の人々の暮らしの上に、今の私たちの便利な生活があるということ。そして、私たちもまた歴史の流れの中の一部にいるのだ、ということです。そんな当たり前だけど普段はなかなか実感出来ない、先人達への畏敬の念と感謝の気持ちが肚の底から込み上げてきました。
富岡製糸場の持つ歴史的価値に気付くことが出来た上、自分の命のルーツにまで思いを馳せることになるとは…。これこそまさしく「大人の社会見学」です!
富岡製糸場のある群馬県には、他にも草津や伊香保などの日本を代表する温泉地、妙義山、浅間山、赤城山、榛名湖、尾瀬など自然溢れるスポットがたくさんあります。癒されること間違いなし!みなさんも是非、足を運んでみてくださいね。
「富岡製糸場」基本情報
住所:〒370-2316 群馬県富岡市富岡1-1
開場時間:9:00~17:00(最終入場16:30)
休場日:年末12月29~31日
見学料:大人1000円、高校・大学生250円(要学生証)、小・中学生150円
群馬県は日本の中央部、東京の北西部に位置する県で、温泉地、スキー場、そして豊かな自然が東京から近い距離で堪能できることで知られています。山、湿原、湖など美しい自然に囲まれた魅力的な温泉地が点在し、日常の喧騒から離れてゆったりと過ごしたい方やアウトドアアクティビティを楽しんで気分転換をしたい方に最適です。一方、養蚕や工芸の伝統が色濃く残る小都市では、日本文化に浸ることができます。 東京から交通の要衝である高崎市まで新幹線に乗れば約1時間で来ることができるため、日帰りの観光も楽しめますが、複数日の滞在でより群馬の魅力に浸ることができます。