【独占取材】PHILOCOFFEA表参道店|世界チャンピオンが手がける新店舗へ
世界中のコーヒー業界に影響を与え続ける、ワールド・ブリュワーズ・カップ(WBrC)チャンピオン・粕谷哲(かすやてつ)氏。彼が生み出した独自の抽出法「4:6メソッド」は、誰もが美味しいコーヒーを淹れられると話題になり、バリスタの育成や、一杯のコーヒーが持つ価値を高める活動に力を入れています。そんな彼の思いが詰まったカフェブランド「PHILOCOFFEA(フィロコフィア)」が、コーヒーファン待望の東京初出店を、ここ表参道で果たしました。
世界チャンピオンの粕谷哲氏

Picture courtesy of PHILOCOFFEA
アジア人として初めてワールド・ブリュワーズ・カップ(WORLD BREWERS CUP)で優勝を飾った粕谷哲(かすやてつ)氏。彼は業界に入って日が浅いにもかかわらず、その比類なき情熱と探求心でわずか3年で世界の頂点に上り詰めた、異色の経歴を持つバリスタです。

Picture courtesy of PHILOCOFFEA
彼の代名詞ともいえる「4:6メソッド」は、コーヒー愛好家なら一度は耳にしたことがあるはず。この抽出法は、経験がなくてもプロ顔負けの味を再現できるほどシンプルで分かりやすいのが特徴です。
粕谷氏は、この理論的なアプローチを通じてコーヒーの概念を覆し、自宅でのコーヒー体験を身近なものに変えました。筆者がこれまで訪れたベトナム・ホーチミンや台湾・台北のカフェでも、現地のバリスタがこのメソッドを巧みに使いこなしている姿を目にするたび、彼の影響力の大きさを実感させられます。
粕谷氏はバリスタとしてだけでなく、多岐にわたる活動を行っています。登録者数15万人を超えるYouTubeチャンネルでは、高度な抽出テクニックからコンビニコーヒーのテイスティング、さらにはブランド経営のノウハウまで、幅広い情報を分かりやすく発信。2025年には、ファミリーマートと共同開発したオリジナルのコーヒーマシンが全国の店舗に導入される予定です。これは、彼の抽出方法を忠実に再現したマシンで、より多くの人々が手軽に本格的な一杯を味わえる画期的な取り組みです。
表参道から世界へ、コーヒーの魅力を発信「PHILOCOFFEA 表参道店」

「PHILOCOFFEA」のロゴマークに描かれているのは、幸せを運ぶコウノトリ。これは、日本から世界へ特別なコーヒー体験を届け、たくさんの人々とコーヒーがもたらす幸福を分かち合いたいという、チームの願いを象徴しています。
これまで千葉県内に3店舗を展開してきた「PHILOCOFFEA」。満を持してオープンした表参道店は、東京のトレンド発信地から世界中の人々にブランドの理念を伝える、重要な拠点となります。
プロフェッショナル集団としてのこだわり

表参道店はテイクアウトが中心ですが、お客様へのきめ細やかな配慮は変わりません。コーヒー豆の産地や好みに合わせた抽出方法など、どんな疑問にもプロのバリスタが丁寧に答えてくれます。

「PHILOCOFFEA」のチームは、誰もが自由にアイデアを出し合い、それを形にする文化を大切にしています。この環境は、スタッフにとって単なる仕事場ではなく、ともに成長できるプラットフォーム。粕谷氏自身も、競技会を目指すバリスタの指導に直接あたり、彼らの成長を力強く後押ししています。
エディターの忘れられない一杯。

Picture courtesy of PHILOCOFFEA
表参道店を訪れたら、ぜひ試してほしいのが限定のブレンド豆「011 TOKYO BLEND」です。浅煎りのこのブレンドは、時間の経過とともに豆の産地や配合が変わることで、常に新しい表情を見せる東京の街を表現しています。

今回、筆者がいただいたコロンビアとエチオピアのブレンドは、まろやかな果実感と爽やかな酸味が見事に調和し、一口飲むごとに旅をしているような気分にさせてくれました。アイスラテも、コーヒーのフルーティーさとミルクのコクが絶妙に絡み合い、忘れられない一杯になりました。

ハンドドリップのアイスコーヒーは、口に含んだ瞬間に広がるほのかな甘みと、スッキリとした後味が特徴。飲み飽きることなく、最後まで美味しくいただけます。

「PHILOCOFFEA」のコーヒー豆には、すべて番号が振られているのも面白い点です。
・0から始まる番号:定番のブレンドやデカフェなど、ブランドを象徴するクラシックな豆。
・偶数から始まる番号:個性が際立つシングルオリジン(単一農園)の豆で、日常に彩りを与えてくれます。
・奇数から始まる番号:競技会などで高い評価を得た、特別なスペシャルティコーヒー。ブランドのこだわりが詰まった、貴重な味わいです。
店内には粕谷氏が選んだおすすめの豆も並んでおり、まるで彼が直接語りかけてくるかのような、温かい交流が生まれています。
初心と夢:粕谷哲氏にインタビュー
幸運にも粕谷氏に直接お話を伺う機会をいただきました。穏やかな笑顔と誠実な語り口から伝わってきたのは、彼が単なる技術者ではなく、温かい心を持つ夢追い人であるということです。
Q1:入院中にコーヒーに興味を持たれたとのことですが、人生を賭けてまでこの道に進もうと決意した、きっかけを教えていただけますか?
粕谷氏: 「2011年の東日本大震災のあと、ボランティアで被災地に行きました。そのとき、人はいつか必ず死ぬんだ、と命の有限性を強く感じたんです。翌年、1型糖尿病と診断されたのですが、幸い命に関わる病気ではない。私はまだ生きられる、と前向きに捉えました。ちょうどその入院中に自分でコーヒーを淹れ始めたのですが、その一杯が人生を変えるきっかけになったんです。人生は一度きりだから、やりたいことをやろう、と決心しました。」
Q2:東京では、人件費や家賃の高騰で、コーヒーの価格が700円から1,000円になることも珍しくありません。台北やソウル、ホーチミンといったアジアの都市と比べて、カフェで過ごせる空間や時間に制約がある現状をどうお考えですか?
粕谷氏: 「東京は確かに人件費や家賃が高いので、その分コーヒーの価格も上がってしまいます。しかし私たちは、そこに付加価値をつけることで補っているつもりです。例えば、お客様はPHILOCOFFEAでコーヒーを飲むだけでなく、プロのバリスタから自分にぴったりのコーヒー豆や抽出方法のアドバイスを受けることができます。お客様とコーヒーとの関わりを大切にする、それが私たちのコアバリューです。」
Q3:「4:6メソッド」は、今や世界中のコーヒー業界に影響を与えています。今後、挑戦したいことや広めていきたいことは何でしょうか?
粕谷氏: 「夢を持つことは大切です。私は、従業員の待遇を改善し、バリスタという仕事の地位を高めながら、コーヒーを通じてより多くの人に幸せを届けられるような、総合的なコーヒー事業体をつくりたいと考えています。」
Q4:これからPHILOCOFFEAを訪れる方や、まだブランドを知らない方へメッセージをお願いします。
粕谷氏: 「コーヒーが好きでも嫌いでも、ここに来たらコーヒーに対する考え方が変わるかもしれない。日本に来たら、PHILOCOFFEAというお店に寄ってみよう、と周りに言ってもらえるような、そんな存在になりたいと思っています。」
結び
競技会の舞台から日常まで、粕谷哲氏はその真摯な情熱と探求心で、コーヒーを国境を越えたコミュニケーションの手段へと昇華させました。「PHILOCOFFEA」は、その夢の延長線上にあるブランド。プロフェッショナルな技術と温かい心が、一杯のコーヒーに込められています。東京のトレンドを体験したい方も、ただ美味しい一杯を求めている方も、いつでも温かく迎え入れてくれる場所です。
In cooperation with PHILOCOFFEA表参道店