海底から蘇った戦闘機――愛南町「紫電改展示館」で出会う、日本の記憶
愛南町沖で発見・引き揚げられた旧日本海軍の戦闘機「紫電改」を展示する資料館です。実物機体を通して戦争の記憶と平和の尊さを伝えられています。ここでは紫電改展示館について紹介します。
紫電改展示館とは
愛媛県最南端に位置する愛南町。透き通る海と豊かな漁場で知られるこの静かな町に、日本の歴史が知れる施設があります。それが「紫電改展示館」です。

愛南町の海は黒潮の影響でサンゴや熱帯魚が共存する南国のような多様な生態系と西日本屈指の釣り場であり、透明度が高く美しいことで有名な場所です。このような部分からのどかな海辺の町と戦闘機という組み合わせは結びつきがないように見えます。しかし、この場所には、太平洋戦争末期の日本と、そこに生きた人々の記憶が静かに残されています。
紫電改の特徴
紫電改展示館の最大の特徴は、実物の戦闘機「紫電改」が展示されている点にあります。紫電改は、第二次世界大戦中に旧日本海軍が使用した戦闘機で、高い機動性を誇った名機として知られています。展示されている機体は、1945年に愛南町沖の海上で不時着水し、そのまま海底に沈んだものです。1979年、地元の人々の尽力によって引き揚げられ、現在の展示へとつながっています。世界に現存する4機のうち日本にある唯一の1機です。
館内に足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのは、時間の痕跡をまとった紫電改の姿が見えます。長年海中にあったことで、機体は完全な形ではないです。しかしそれでも、その損傷や錆びこそが、戦争が現実であったことを強く物語っています。新品同様に復元された展示とは異なり、「当時そのまま」の姿であるからこそ、訪れる人に多くを語りかけてくるようにみえるものとなっています。

展示館では、戦闘機そのものだけでなく、当時の写真や資料、搭乗員に関する説明も紹介されています。特に印象的なのは、紫電改が撃墜されたのではなく、燃料切れによる不時着であったという事実があることです。搭乗していた若い搭乗員は命を落としています。紫電改展示館は、単なる軍事資料館ではなく、一人ひとりの命、一つの人生に焦点を当てた「記憶の場所」でもあります。
愛南町の美しい海「宇和海」
展示館は海に面した場所に建てられており、館外からは穏やかな宇和海を望むことができるという利点もあります。その風景は、戦争の激しさとは対照的で、訪問者に静かで大きな余韻を残します。多くの海外観光客が「なぜ、こんな平和な場所に戦闘機があるのか」と疑問を抱きますがが、その問いこそが、この展示館の存在意義と言えます。

紫電改展示館は、戦争を賛美する場所ではなくむしろ、戦争がもたらした喪失と、平和の尊さを静かに伝える場所です。数ある観光地の1つとして愛南町を訪れるなら、ぜひ足を運んでほしいスポットです。ここで出会うのは、教科書や学校などでは知ることのできない、日本の記憶です。
紫電改展示館の歴史
1978年11月: 愛媛県南宇和郡愛南町(旧内海村)の久良湾の海底(水深約40〜41m)で、地元ダイバーにより343海軍航空隊所属とみられる紫電改が発見されています。
1979年7月14日: 34年ぶりに機体が引き揚げられました。当時の姿をほぼとどめていました。
1980年5月1日: 馬瀬山山頂に「紫電改展示館」がオープンし恒久平和を願うシンボルとして公開されました。
1980年代〜現在: 国内唯一の貴重な実機として多くの観光客や修学旅行生が訪れ、累計来館者数は180万人を超えています。元搭乗員による遺品寄贈や証言資料の収集が進められました。
2024年〜2026年(予定): 施設の老朽化に伴い、隣接地に新展示館を建設し、機体を移設・展示するリニューアルプロジェクトが進行中です。新しい展示空間では、海(久良湾)と空を望むコンセプトで、2026年度中の完成を目指しています。
この展示館は、単なる戦争の遺物展示にとどまらず、戦争の悲惨さと平和の尊さを伝えるための重要な史跡として位置づけられています。
詳細
| 住所 | 愛媛県南宇和郡愛南町久良1060(馬瀬山頂公園内) |
| TEL | 0895-72-3212(南レク南宇和管理事務所) |
| 営業時間 | 9:00~17:00 |
| 料金 | 無料 |
| 休業日 | 年末年始(12/29~1/1) |
| 特徴(備考他) | 世界に現存する4機のうち、日本にある唯一の1機です。 |
紫電改展示館へのアクセス方法
松山市方面から愛南町紫電改展示館に向かう場合、国道56号線で南下し、愛南町に入ります。御荘・城辺市街方面へ進み、「みしょうMIC」「南レク公園」の案内表示に従って国道から曲がります。その後は馬瀬山公園方面へ向かい、山側へ登っていくと紫電改展示館の案内看板が出てきます。標識どおりに進めば、馬瀬山の高台にある展示館と駐車場に到着します。
愛南町の入り口から紫電改展示館までは車で約20分~30分で到着します。※交通状況によります。
四国愛媛県の最南端最南端に位置している愛南町は「足摺宇和海国立公園」に代表する豊かな海・山を有し自然環境に恵まれた地域です。気候は四季を通じて温暖でサンゴや熱帯魚などを見ることもできます。