和紙に藍染め日本人形まで……埼玉県の伝統工芸5選
日本には各地に古くからの製法を受け継ぐ伝統工芸が残されています。ば東京の隣にある埼玉県にも、数百年以上の歴史を伝統工芸が受け継がれてます。本記事では、埼玉県でいまも息づく伝統工芸(小川和紙、武州正藍染、秩父銘仙、押絵羽子板、岩槻人形)を5つ厳選して紹介します。
日本には各地に古くからの製法を受け継ぐ伝統工芸が残されています。日本を旅行するなら、その土地ならではの伝統工芸に触れ、おみやげを買い、工芸品作りの工程を体験してみてください。
伝統工芸技術が受け継がれているのは京都や東京などの有名観光都市、歴史都市だけではありません。例えば東京の隣にある埼玉県にも、数百年以上の歴史を持つ伝統工芸が受け継がれてます。
和紙や藍染めなど、いずれも美しさと実用性を兼ねた素晴らしい工芸品ばかり。本記事では、埼玉県でいまも息づく伝統工芸を5つ厳選して紹介します。
1.小川和紙
和紙とは、古くからの製法で作られている紙のこと。温かみのある風合いと、独特の手触りが特徴です。
日本には土佐和紙など、全国に伝統の製法を守り続けてきた和紙が存在します。埼玉県小川町で作られている小川和紙もそのひとつです。
周辺の山々に和紙の原料となる木々が生え、また和紙作りに欠かせない気候(冷たい水と大気)に恵まれていた小川町では、古くから和紙作りが盛んでした。小川町における和紙の歴史は、なんと1300年以上も昔だと言われています。
なお小川和紙は小川町で作られる伝統的な和紙の総称で、小川和紙の中にもさらに様々な種類が存在します。特に「細川紙」は2014年にユネスコ重要無形文化遺産にも登録されたほど、世界的に高く評価されています。
細川紙は楮(こうぞ)のみを用いて作られた和紙で、その製法は現在小川町の他、同じ埼玉県の東秩父に伝承されています。素朴で強い耐久性を持ちつつ、美しいツヤのある、実用性と美しさを兼ね備えた伝統和紙です。
文字を書く紙として使うだけでなく、小物や照明の素材にもうってつけ。照明の強い明かりも、小川和紙を通ると柔らかで温かみのあるものに変化します。
小川町にある小川町和紙体験学習センターでは、そんな小川和紙作りを一般の方でも気軽に体験できるコースを提供しています。
ぜひ実際に体験し、その技術と伝統を自分の手で感じ取ってください。
2.武州正藍染(ぶしゅうしょうあいぞめ)
藍染めはタデ科の植物である藍を染料とする染め物です。日本では江戸時代ごろから全国で盛んに製造されました。
埼玉県では羽生市を中心とする北部地域で古くから藍染めが行われてきました。それが武州正藍染。この地域では木綿と藍の栽培が盛んで、農閑期に家族の衣服を作ったのが始まりと言われています。武州正藍染は洗うことでで風合いが増す、使うのが楽しい染め物です。
武州正藍染の約7割が糸の段階で染色される糸染めという製法で染められています。糸の芯まで深く染まり、手染めらしいムラ感が生み出す自然な縞模様は「青縞(あおじま)」と呼ばれ、ファンに好まれています
武州正藍染の名前を知らない方でも、日本人ならは恐らく一度は武州正藍染の製品を見たことがあるはず。それは剣道着です。剣道の道着は約8割が武州正藍染で染められていると言われています。美しさはもちろん非常に丈夫なため、武州正藍染は日本全国の剣道家に愛されているのです。
丈夫さや着心地のよさから、長く愛されてきた藍染め。現在では衣服や小物、インテリア製品も作られています。使えば使うほど風合いの増す武州正藍染をぜひ埼玉で見つけてください。
3.秩父銘仙
秩父銘仙は絹織物の一種。埼玉県では古くから養蚕業が盛んで、高品質な絹製品が作られてきました。
もともとは「選ばれた優良品」を示す「銘撰」の字を当てられていたのが、やがて現在の「銘仙」に代わったと考えられています。
特徴的なのは、「ほぐし捺染」と呼ばれる技法。糸の段階で染め上げる技法で、表裏が同じように染色される点に特徴があります。
見る角度によって色の見え方が変わるので、秩父銘仙の製品を見つけたら試してみてください。
秩父市内にあるちちぶ銘仙館では、そんな秩父銘仙の製造工程を見学できるだけでなく、実際に各種の体験を行うことができます。
体験ブースは3カ所。型染めや手織り、藍染めなどの3工程を体験することできます。
販売ブースでは、秩父銘仙の布地や衣服、コースターなどを購入することができます。おみやげ探しにもオススメです。
蚕の繭
4.押絵羽子板
日本にはお正月の遊びとして、植物のタネに鳥の羽をつけた"羽根"を板でつく羽根つきという遊びがあります。板は羽子板と呼ばれ新春の縁起物として日本人に親しまれてきました。春日部市特産品の押絵羽子板は、浮世絵師の描く役者絵を押絵細工として羽子板に取り付けたのがはじまりです。
押絵とは厚紙を切り抜き、綿をのせて美しい布で包み、物に貼り合わせた細工のこと。その繊細な作業工程を追ってみましょう。
押絵羽子板ができるまで
押絵羽子板が完成するまでに主に4つの工程があり、工程ごとに職人が分かれています。
まずは羽子板の板を切る木地師が末広がりの形に木を切ります。
羽子板の裏の絵を描く裏絵師が縁起物やそのテーマに沿った絵を描きます。
面相師がデザイン図の作成や人物の顔を描きます。
最後に"押絵師"がパーツに綿を布で包み、パズルの様に貼っていけば完成です。
贈り物や縁起物にも
観賞用はもちろん、子供の誕生を祝う贈与用や部屋に飾る縁起物まで種類豊富です。
押絵羽子板専門店の「秀花」や埼玉県内の人形屋で購入することができます。
5.岩槻の人形
さいたま市岩槻区で作られる人形は江戸木目込人形と衣装着人形の2つに区分されます。桐という木の一種の粉を固めて作る人形は壊れにくく、長期間綺麗な状態を保つことができます。
その製造工程と人形の魅力を紹介します。
※写真は全て岩槻人形組合提供
江戸木目込人形
木目込人形とも呼ばれる、筋を掘り入れられた胴体に布地を埋め込んでいく人形です。粘土から人形の原型を作り原型からとった型に桐の粉をつめ原型と同じものを作ります。それを乾燥させ、彫刻刀で表面を修正し白い粉を塗ります。その後布切れを埋め込むために、彫刻刀で筋をつけます。
筋に布をきめこみ(うめこみ)、着せつけを行い完成されます。
衣装着人形
美しい衣装をまとった人形です。縛り固めたわらの束に和紙を貼り、手足をつけて土台を作ってから衣装つけにとりかかります。
衣装は京都の西陣織などの豪華な織物を使います。
職人さんの丹念な着付けにより、完成です。
岩槻駅周辺、特に東口の大通り近辺には約20店舗ほどの人形屋さんが集結しています。ぜひ訪れてみてください。
終わりに
本記事で取り上げた伝統工芸品のほとんどは、埼玉県比企郡小川町にある「埼玉伝統工芸会館」で展示されています。施設では不定期で職人による実演展示や、伝統工芸品の販売も行われています。
気になる伝統工芸品があれば、ぜひ埼玉伝統工芸会館までお越しください。
※今回紹介した施設以外にも体験を行っている施設があります。
埼玉県のこのほかの観光スポットを知りたい方は、こちらの埼玉県特集もご覧ください。