伝統工芸と絶景の宝庫!「森の京都」で行くべき10スポット
京都市から北西に広がる亀岡市や南丹市、京丹波町、福知山市、綾部市などは、「森の京都」と呼ばれる自然の美しい地域。ここは伝統工芸の宝庫でもあります。伝統工芸や古民家、伝統芸能に触れることのできるオススメ10スポットを紹介します。
「森の京都」を旅しよう
京都市から北西にある亀岡市や南丹市、京丹波町、福知山市、綾部市などの一帯は、「森の京都」と呼ばれています。山や森、川など美しい自然が広がるこの地域では、伝統工芸が人々の生活に息づいてきました。
本記事では、伝統工芸や絶景、地元の名産品を通して「森の京都」の魅力を感じられる10スポットを紹介します。
亀岡市
丹波亀山城跡の遺構/亀岡市
京都市から快速電車で約20分、普通電車では約30分で行ける亀岡市。かつて城下町として栄え、現在も、漆喰と瓦で作られた「なまこ壁」や等間隔に並ぶ縦の格子が印象的な「虫籠窓(むしこまど)」などを見ることができます。
市内には、竹や木を使った工芸品やガラスアート、染物などの工房が軒を連ねています。その多くは見学可能で、ものづくり体験ができるところも。
このほか、「Farmhouse NaNa」「Bishamon House」といった田舎暮らしを味わえるゲストハウスや、「へき亭」「KIRI CAFE」といった伝統的な家屋を生かした食事処、七谷川の桜や、渓谷の絶景を楽しめる保津川下りなども人気です。
1. 京都ほづ藍工房――藍染めを体験する
品のある色合いが人気の日本の藍染め。特に徳島県と沖縄県が産地として有名です。しかし、あまり知られていないものの、かつて京都にも独自の藍染めがありました。
7年前、京都の藍染めに使う藍が再発見されたことから、再び藍の栽培が始まりました。現在、この藍の栽培と染めを担っているのが、亀岡の「京都ほづ藍工房」です。
「京都ほづ藍工房」では、藍染めのワークショップを開催しています。ここでは、ハンカチやTシャツ、スカーフをはじめ、さまざまなものの染めを体験できます。ハンカチ染めの場合は1枚約30~45分。参加費は1,100円(染めたい布の大きさによって変わります)。
ワークショップは、「デザインを決める」「布を絞って柄を作る」「藍液に浸して布を洗う」「絞りをほどく」と、実際の藍染めの工程に沿って行われます。その結果、世界にひとつだけの柄ができあがります。
「京都ほづ藍工房」では、職人たちの作品も販売しています。また、藍の葉を乾燥させて粉末にした「藍茶」は、抗酸化や抗炎症、抗ガン、抗菌、免疫調整の作用がある成分が含まれていると評判です。
2. Glass Studio Calore――ガラス細工を作る
「Glass Studio Calore」はガラス職人一家が運営する工房。中には、日常生活に役立つ美しいガラス細工や装飾品が並んでいます。
ここでは、ガラス吹き体験を実施しています。上の写真に映るサンプルから形や柄、色を選び、コップや花瓶を作ることができます。時間は約20分。料金は3,500円~(税別)。オプションを追加するごとに500円プラスとなります。
体験では、専用の道具を使いながら、ガラスを膨らませたり、柄や色を加えたりします。
炉から取り出されたばかりのガラスの温度は1200℃にもなり、制作終了の時点でも500℃あるのだとか。制作品は専用の炉の中で一晩かけゆっくり冷やすので、受取りは翌日以降となります。
南丹市
南丹市で特に有名なのは、昔ながらの暮らしを見ることができる美山かやぶきの里です。
全50戸のうち約8割が茅葺き屋根の家で、重要伝統的建造物群保存地区に指定されています。中には、博物館が2棟、ギャラリー1棟、そしてゲストハウスが2棟あります。
美山かやぶきの里の最寄り駅であるJR日吉駅へは、JR京都駅から電車で50分ほど。JR日吉駅からはバスが出ています。
南丹市の見どころとしては、ほかに日吉ダムがあります。ここは、桂川や天若湖(あまわかこ)、山々が織りなす絶景が眺められます。その近くには、温泉やバーベキュー、野外活動が楽しめるレジャー施設「スプリングスひよし」も。
3. 美山民俗資料館――茅葺き民家を探訪する
美山かやぶきの里の魅力は、周囲の景観に溶け込むような伝統的家屋。その雰囲気を味わうには、泊りがけで滞在するか、南丹市美山観光まちづくり協会のガイド付きのツアーに参加するのがオススメです。
美山民俗資料館は、茅葺き屋根の家や、昔の田舎での暮らし方を知るのにぴったりの場所。中に入ると、季節の花が飾られている床の間や仏壇、簡素な家具など、田舎の家の設えを見ることができます。
美山の茅葺き民家では、梁をつなぐのに釘を使いません。屋根裏に上がれば、こうした家のつくりをじっくり観察できます。なお、館内には、屋根に使われている茅も展示されています。
京丹波町
兵庫県との県境に位置する京丹波町。由良川沿いの丘陵に広がるこの地域では、和知人形浄瑠璃や和知太鼓、小畑万歳(伝統的な漫才)、和知文七踊りといった伝統芸能が今も息づいています。
京丹波町に行くには、JR嵯峨野(さがの)線の園部駅からバスを利用しましょう。なお、「道の駅 和(なごみ)」に行くには、JR山陰本線の和知駅からが便利です。
4. 道の駅 和――伝統芸能に触れる
「道の駅 和」は地元の特産品を販売したり、イベントを開催したりする施設。京丹波町の食品や工芸品を探すにはうってつけです。
隣にある「伝統芸能常設館」では毎月第四土曜日、公演が行われています。
ここでのオススメは、和知人形浄瑠璃。旅の人形遣い一座が200年ほど前、この地に居を構えたことから始まったと言われる伝統芸能です。地域の人々に愛され、今日まで受け継がれてきました。
通常の人形浄瑠璃では、人形を3人で操るところを、和知では1人で操っています。高い技量を求められることから、京都府の無形民俗文化財にも指定されました。
美しい人形が、人形遣いの手によって命を吹き込まれる様子は、一見の価値があります。ぜひ公演日に訪ねてみてくださいね。
5. 丹波ワインハウス――地元産ワインを飲む
京丹波町では和食に合うワインを造るため、「丹波ワイン株式会社」が1979年に設立されました。以後、丹波ワインは同町を代表する名産品となっています。
これまで100種類以上のワインが生産され、葡萄ジュースなどの関連商品も高い評価を受けています。
この丹波ワインが楽しめるのが、「丹波ワインハウス」。各種の丹波ワインを販売しているほか、葡萄畑やワイナリーの見学、ワインの試飲ができるツアーが開催されています(※)。時間は40分程度。
「丹波ワインハウス」でのオススメワインは、白・赤・スパークリングで味わえる「すめらぎ」です。これは丹波ワインの理念を体現する一品で、醤油や味噌ベースの料理との相性が抜群。赤ワインなら魚料理、白ワインなら漬物と良く合います。
※新型コロナウイルスにより、ワイナリーツアーや試飲、レストランは2021年1月現在、お休みをしています。最新情報は公式HPでご確認ください。
6. 由良川河岸段丘――絶景を満喫する
京丹波町の特徴のひとつは、由良川によって形成された段丘。
和知地区の周辺の丘に上がってみると、土地が4層に分かれているのが見えます。この川沿いの土地を、地元の人々は水田として利用しています。
この美しい景観を楽しむのにオススメのスポットは、京丹波町観光協会で尋ねてみてくださいね。中には、秋と冬の肌寒い朝に雲海が見られる場所もあります。
福知山市
福知山市では、有名な武将である明智光秀(?~1582年)が築いた福知山城や元伊勢三社といった名所があります。
また、標高832.5メートルの大江山は、「酒呑童子」という鬼の伝説が有名です。この鬼は、酒が大好きという弱点を突かれ、源頼光に倒されました。この伝説にちなみ、この地域には「鬼ババァ」というどぶろく(手作りの濁り酒)があります。
このほか、福知山市では、天然の漆の産地であり、天気のよい朝に雲海が見られる夜久野(やくの)高原もあります。
福知山は京都から電車で行けます。効率よく巡るには、レンタカーがオススメです。
7. 元伊勢三社――神秘の森を歩く
Picture courtesy of 福知山市
元伊勢三社とは、大江山の麓にある森に包まれた3つの神社の総称。日本を代表する神社・伊勢神宮の御神体が、三重県の現在の場所に設置される54年前、この場所に祀られていたと言われています。
元伊勢内宮(上の写真)の社務所の後ろを抜けていくと、途中、日室ヶ嶽(ひむろがたけ)があります。ここは夏至の日、三角形の山の頂に太陽が沈むことが知られています。この神秘的な山は、米の豊作をもたらしてくれる神様そのものと考えられており、人々は祈りを捧げてきました。
さらに下った先にある天岩戸神社は、鎖を使って社殿まで登っていくことで有名です。
Picture courtesy of 福知山市
こちらは豊穣の神様をお祀りする元伊勢外宮。時間を超越しているかのような荘厳な社が印象的です。
8. やくの木と漆の館――漆工芸を学ぶ
福知山の夜久野(やくの)では「漆かき」(漆の採集)が盛んでした。その文化や、漆そのものの魅力を伝えるのが「やくの木と漆の館」。
漆製品を販売するショップやギャラリー、漆塗り体験ができる工房が設けられています。また、丹波の漆かきの文化や歴史、漆かきに使う道具などを紹介する資料室もあります。
Picture courtesy of 森の京都
漆の木は、樹液が採取できるまでに最低10年はかかります。また、高品質の漆を生産する漆の木を育てたり、漆掻き(樹液採取)をしたりするためには、高度な技術と経験が求められます。
「やくの木と漆の館」の資料室の展示を見ると、こうした詳しい知識も得られますよ。
日本の漆製品は、品質の良さと高い耐久性で知られています。「やくの木と漆の館」のショップでは、職人製の食器やカトラリー、台所用品、茶道具、装飾品などを手に取ってみたり、買ったりできます。
「やくの木と漆の館」では、漆塗り体験もできます。作業レベルと所要時間が異なる4コースがあり、お皿(上記写真)に色漆で絵付けするコースは、料金1,540円、時間は1時間ほどです。
どのコースも、職人が漆の扱い方を丁寧に指導してくれます。図柄を選び、世界に1つしかない漆器を作ってみましょう。漆にかぶれることもあるので、職人さんの注意に従ってください。
器は持ち帰った後、3カ月後に使えるようになります。
綾部市
京都市から北西に向かった先の山間にある綾部市。そのハブとなるJR綾部駅は、京都駅から普通電車で1時間40分ほど、車では1時間20分ほどで行けます。
森を散策したりゲストハウスでのんびりしたい方にオススメなのは、上林(かんばやし)地区。この地にある君尾山の光明寺は、壮麗な二王門が有名です。
また、綾部には、ミツマタとシャガの群生地があります。3月下旬から4月中旬にかけて黄色いミツマタが咲き、5月には白いシャガが一面に広がります。
綾部市の北西部にある黒谷地区では、800年以上の歴史を持つ黒谷和紙が作られています。ここでは、職人たちの仕事を見学したり、自分で漉いて作ってみたりできます。
9. 光明寺二王門――古代の森を散策する
1248年に建立され、国宝にも指定されている光明寺の二王門。二重の屋根がある珍しい構造の門です。門の中に安置された金剛力士像は鎌倉時代(1185~1333年)の作品で、国の重要文化財に指定されています。
君尾山の静かな森の中にある光明寺は、何世紀にもわたり参拝者の祈りの場となってきました。本堂を飾る精緻な木彫は江戸時代(1603~1868年)のもの。
光明寺に来たら、地元のガイドと共に、寺院の後ろに広がる森へ入ってみましょう。巨木が多く、その内のいくつかは奇妙な形をしています。
地域の人々にとって、この森がどんな意味を持つ場所なのかを学ぶ中で、自然の不思議を再発見することでしょう。
10. 黒谷和紙――伝統の技に驚く
綾部市の黒谷地区やその周辺で生産されている黒谷和紙。和紙の原料である楮(こうぞ)が豊富に取れることや、黒谷川から良質な水を得られることから、800年ほど前から作られるようになりました。
和紙の歴史や、楮から和紙ができる過程を学べるのが黒谷和紙会館。工房で、和紙作りの古い道具を見学したり、和紙を作るワークショップに参加したりできます。
黒谷和紙は数カ月にわたる手作業で作られます。多くの工程を経て出来上がった和紙は高い耐久性を誇り、書道、工芸、室内装飾、文房具などさまざまな用途で活用されています。
2Fの展示室では、黒谷和紙の歴史と、多彩な用途について知ることができます。黒谷和紙は、その高い耐久性から、着物やアクセサリーにも使われていました。
ショップでは、黒谷和紙を使った製品を販売しています。文房具やコースター、財布、名刺入れ、ブックカバーといった日用品、美しくデザインされたクッションなどがそろっています。
京都府の山間部は自然と伝統工芸の宝庫
京都府の山間部にある「森の京都」は、自然と伝統工芸の宝庫。本記事で紹介した10スポットは、「森の京都」の名所のほんの一部ですが、その魅力を知るよいきっかけとなるでしょう。
亀岡市や南丹市、京丹波町、福知山市、綾部市への旅は、あなたを日本文化の深みに誘ってくれるはずです。
あわせて読みたい
Written by Ramona Taranu
Sponsored by Woodland Kyoto DMO, Kyoto Prefecture