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南国フルーツ、満天の星空、島寿司など。世界自然遺産・小笠原「父島」独自の文化と自然を紹介
小笠原諸島は東京都心から1000㎞も離れた場所にある、ユネスコの世界自然遺産に登録された離島です。本記事では小笠原諸島父島の固有種や南国ならではのフルーツ、本土ではなかなか食べられない島寿司など、父島の文化と自然を紹介します。神社や軍事遺跡などの歴史スポットも取り上げています。
小笠原(おがさわら)諸島「父島(ちちじま)」は東京都から南へ約1000㎞の場所にある離島で、東京都心からフェリーで行くことができます。
最寄りの有人島まで600㎞以上あり、19世紀初頭に欧米捕鯨船の拠点となるまで、人が住みつくことはありませんでした。太平洋戦争中は日本の重要な軍事拠点になりますが、戦後はアメリカの占領下に入ります。そして1968年になって日本へ返還されました。
そのような歴史的経緯もあり、特異な自然環境と島民たちの手により、日本本土とは少し異なった歴史や文化がはぐくまれました。また、近年では一度もほかの陸と繋がったことのない海洋島独自の希少な生態系の保護活動も盛んに行われています。
今回は父島に息づく独特の文化や歴史が感じられる場所をご紹介します。
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世界自然遺産たりえる生物の多様性
小笠原諸島は海底火山の活動によりできた島で、今まで他の大陸と接したことが無いため島固有の動植物が進化し独特の生態系を維持しています。希少な生物の多さから、「東洋のガラパゴス」とも言われています。
固有種が豊かなことを評価され、小笠原諸島は2011年ユネスコの世界自然遺産に登録されました。
アカガシラカラスバト
天然記念物の「アカガシラカラスバト」や、カタツムリの一種である「カタマイマイ」などの固有種は絶滅危惧種に指定されている貴重な生き物で、運が良ければ父島の遊歩道で遭遇できることがあります。
「タコノキ」も小笠原の固有種ですが、島中の至る所に自生しているので島を散策しているとよく見かけるでしょう。
シャンティバンガローでは動植物が数多く生息するジャングルを巡るツアーを実施していて、英語版HPから詳細を確認できます。ツアー参加費は半日5,000円~です。
亜熱帯気候がもたらす土地の恵み
小笠原諸島は年間を通して温暖な気候のため、亜熱帯性の農産物や植物の種類が豊富です。
「小笠原亜熱帯農業センター」は固有植物や熱帯植物が無料で見学できる植物園。フルーツの樹々が育つ温室もあるので、果物がなる様子を実際に見てみましょう。
島で栽培されているフルーツはJA農産物観光直売所でも購入可能です。通年で収穫されるバナナに加えて、レモンやブンタンなどの柑橘類が時季ごとに旬をむかえて美味しく頂けます。
パッションフルーツも小笠原の特産品で、島で製造されているラム酒とあわせたリキュールがおみやげ品として人気です。島の飲食店ではパッションフルーツとラムのカクテルが楽しめます。
島を訪れるリピーターが太鼓判を押す野菜はミニトマト。発売日には直売所に行列ができるほど、ファンが多い一品です。甘くて味が濃厚なのでフルーツ感覚で食べられます。
豊かな漁場に恵まれた海の幸
周囲をきれいな海に囲まれた父島では、新鮮で素朴なシーフードも堪能できます。
中でもサワラなど近海でとれた魚を醤油タレにつけて握る「島寿司」はシンプルで滋味深い味。寿司や和食のお店、居酒屋などで提供されていますが、弁当屋でも売られています。
また、珍しいウミガメ料理も小笠原の郷土料理。ウミガメの肉は魚と肉の中間のような食感で臭みはありません。ウミガメ料理は食糧難だった時代の食文化で、現在は種の保全のため捕獲量が年間135頭に制限されています。
宇宙を感じる満天の星空
父島には国立天文台の観測局やJAXA・宇宙航空研究開発機構の施設(※1)があり、宇宙に関する施設が集まる島です。
国立天文台の敷地内にある直径20mの巨大アンテナは観光客でも見学可能です。夜はライトアップされた迫力ある姿が見られます。
※1……JAXA敷地内は立入禁止です。
そして、夜になると明かりの少ない島では真っ暗な闇夜に満天の星空が広がります。こんなにぎっしりと星が見えるのは絶海の離島ならでは。肉眼でも天の川が見えるほどの天空の絶景は滞在中に見てほしい景色です。
小笠原諸島の歴史が残る史跡
小笠原諸島は16世紀に日本人探検家「小笠原貞頼(おがさわら さだより)」によって最初に発見されたと言われていて、彼の名前をもとに「小笠原」と名付けられました。
島の中心地の扇浦地区には「無人島発見記念碑」が置かれ、その隣には小笠原貞頼を祀った小笠原神社があります。
小笠原諸島が発見された後、欧米からの捕鯨船に物資を供給する人が住み始めます。
さらに、太平洋戦争時には日本の重要な軍事拠点となったため、島中に戦争の爪痕が残っています。
小笠原神社境内には「トーチカ」と呼ばれる軍事施設の跡があります。また、初寝浦展望台には武器庫だった建物が放置され、内部には銃弾の跡がたくさんあいています。
こうした戦跡は父島に残る太平洋戦争の生々しい記憶を伝え、平和へ想いを馳せる場となっています。
おわりに
小笠原に生息する多数の固有種による独特で豊かな自然、暖かな気候がもたらす素材を生かした素朴な食文化、捕鯨や戦争など目まぐるしい歴史。どれも本州とは異なる発展を遂げたことで、訪れる観光客を魅了し続けています。小笠原に訪れる際にはこれらの知識を深めて、さらに観光や自然観察を楽しんでください。
新潟生まれ。事業会社でのマーケティングを経験後、2011年からシンガポールへ移住し、出版社や制作会社で編集に従事。2015年に日本へ帰国しMATCHAのライターに。国内外を旅行する中で見つけた新しい発見を、多くの人とシェアしていきたいです。