お酒好きにオススメ!「鹿島嬉野酒蔵ツアー」で九州が誇る日本酒文化を体験
日本の九州地方にある佐賀県鹿島市・嬉野市は、食通にとって体験すべき日本酒と食の文化があります。本記事では、おいしい日本酒とその文化の発見が盛りだくさんの、2日間の酒蔵ツアーを紹介します。
佐賀県鹿島市で日本の酒文化を発見しよう!
九州地方にある佐賀県鹿島(かしま)市では、代々日本酒造りが盛んに行われてきました。
鹿島の酒蔵の多くは200年以上もの歴史があり、いくつかの酒蔵は観光客にも開かれています。そのため繊細な味をもつ日本酒を知り、楽しむには最適な場所なのです。
2日間にわたる鹿島嬉野酒蔵ツアーでは、江戸時代の町並みを歩き、さまざまなお酒と地域の美食を味わい、さらに酒造りも楽しめます!
日本酒ファンの筆者が参加し、その魅力を体験してきました。
1日目:鹿島の日本酒を体験
初日は日本三大ラーメンの街・福岡県の博多でガイドと待ち合わせ。これから体験できるお酒や食事に胸を弾ませ、ジャンボタクシーに乗って鹿島へ向かいます。
「HAMA BAR」で味くらべ
佐賀県に入り、緑あふれる山や畑の風景を眺めながら1時間30分ほど行くと、鹿島に到着します。
まず立ち寄った場所は、アクセスに便利な肥前浜駅にある「HAMA BAR」。2021年1月にオープンしました。
ここで、鹿島にある6つの酒蔵で作られた、6種類の上質な純米吟醸(※1)を飲み比べ。それぞれによさがありましたが、IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)でチャンピオン・酒を受賞したこともある富久千代(ふくちよ)酒造の鍋島は、辛口で後味がいつまでも残る満足感があり、印象的でした。
幸姫(さちひめ)酒造の 幸姫 ‘Dear My Princess’はコクのある深い後味で、名前も可愛らしく、ボトルも華やかです。
※1:純米吟醸……60パーセント以下に削った米を使った、上質な日本酒の種類のひとつ(米の粒の40パーセントが取り除かれる)。
鹿島の酒蔵通りを散策
贅沢な利き酒でほろ酔いになったら、鹿島の酒蔵通りを散策。600メートルの通りに歴史ある立派な建物が並び、交易の要地だった江戸時代の趣を、いまも残しています。
大きな白壁の蔵、武家屋敷が連なるなかに、木造の茶屋や宿、商店や住宅が通りに立ち並んでいます。思わず入りこんで、中の様子を覗いてみたくなりますよ。
酒蔵を体験
体験中の筆者
私たちは通りにある観光酒蔵「肥前屋」に入りました。1688年から続く、光武(みつたけ)酒造が経営。レトロな雰囲気を維持しながらも、鹿島の日本酒を盛り上げ、若い世代に魅力を伝えています。
明るいガイドに酒蔵を案内してもらっていると、有名なアニメのキャラクターを使ったボトルなど、大胆なデザインが目をひきました。ノンアルコールの甘酒(※2)や、おいしさが際立つ梅酒、佐賀県産のボタニカルをブレンドしたクラフトジンも味わえます。
※2:甘酒……米から作られる甘い飲み物。麹菌(ニホンコウジカビ)入りはノンアルコール、酒粕入りは1パーセント以下のアルコールを含む。
次に入ったのは幸姫酒造。鹿島市にある祐徳稲荷神社の御神酒を作っていることで知られています。
幸姫酒造は1934年に創業。国際コンテストで多くの受賞歴があり、高い評価を受けています。建物は堂々とした木造2F建て。こちらも観光客に開かれた酒蔵です。
純米酒造の幸姫は、辛口がほんのり効いていて、繊細でバランスのよい味に感じました。さまざまな食べ物と合わせられそうです。また地酒ソフトクリームも人気があるとのこと。とてもおいしそうだったので、また来るしかありません!
和多屋別荘でぜいたくな宿泊
充実した鹿島の酒蔵観光終えて、近くの町・嬉野にある温泉宿「和多屋別荘」に向かいます。
嬉野は、うれしの茶と呼ばれる緑茶や嬉野温泉、肥前吉田焼といわれる磁器が有名です。情緒ある街並みを通って、宿に到着しました。
和多屋別荘に入ると、モダンで上品な施設内はとても居心地のよい雰囲気。
和風のインテリアが優雅さを作り出し、伝統と現代の融合でできた趣きが、すみずみにまで表れています。
泊まった客室もとても印象的。それぞれに日本庭園を見おろす展望付露天風呂がついています。
夢のような雰囲気に浸ったら、いよいよ、日本酒のペアリングディナーです!
日本酒のペアリングディナー
夕食は、敷地内にあるレストラン「李荘庵(りそうあん)」でいただきました。佐賀牛をはじめ、地域の食材がふんだんに使われた10品のコース料理は、心を奪われるおいしさ。
料理には、嬉野にある「瀬頭酒造」の瀬頭平太(せとう へいた)さんが選んだ日本酒がそえらます。
それぞれの料理と日本酒のペアリングについて、説明もしてもらえます。説明を通して、嬉野にある文化や自然、歴史とのつながりをより深く感じることができるでしょう。
最初にいただいたお酒は、一週間前にしぼったばかりの「東長(あずまちょう)」の生酒。これから始まる食事に合わせて、お酒の温度は食欲を刺激する5℃に調整されていました。ふくよかな旨味が食欲をかきたてます。
佐賀牛を使った独創的な料理が日本酒のおいしさを更に引き出してくれます。
佐賀牛ミニバーガー、温泉で炊いた熟成の牛タン、酒粕に漬けこんだサーロインステーキ、ビーツソースが添えられたフィレステーキ……一生忘れられなさそうな豪華な食事です!
佐賀県で作られた磁器との組み合わせにも注目。皿の上に広がる芸術作品のようです。
竹崎カニのスープにぬる燗を注いだり、ステーキに日本酒風味の塩をまぶしたり。次はなにが出てくるのか、一品一品が楽しみです。
筆者は日本文化に詳しいと思っていましたが、ここでの体験はどれも新鮮で、驚きの連続でした。思い出に残る食事の時間になるでしょう!
レストランを出て美術品が並んだ廊下を進むと、お茶農家が運営する茶寮&Barがあります。和菓子とうれしの茶とともに、瀬頭酒造の日本酒を楽しみました。
2日目:酒造り体験
朝食を取ったら、夢のような滞在だった和多屋別荘からジャンボタクシーに乗り、次の目的地に出発です。2日目は2つのグループに分かれ、ひとつは昨夜たくさん飲んだ蔵元の瀬頭酒造へ、筆者を含むグループは、鹿島へ戻って矢野酒造を目指します。
矢野酒造で酒造り体験~精米ともろみ仕込み~
酒蔵ツアーは日本各地で数多くありますが、蔵人(酒造りの職人)体験はとても貴重です。酒造りをする酒蔵には通常、関係者以外は立ち入り禁止です。また、体験があっても日本語のみだったりと、とくに日本語が得意ではない人にとって、とてもハードルが高いのです。そのため、今回の体験をもっとも楽しみにしていました!
体験ができる酒蔵は、1796年創業の「矢野酒造」。200年以上続く酒造場です。9代目の経営者の矢野元英(やの もとひで)さんは杜氏も担っています。
矢野さんは親しみやすく、とても情熱的な方。代々受け継がれてきた酒造りへの思いを伝えていくことにやりがいを感じています。彼のモットーは、新しい技術やトレンドのデザインを、伝統の技と味に取り入れる「温故創新」。話を聞いていると、その様子がまさに伝わってきます。
帽子に白衣、長靴を履いて、手をよく洗ったら、体験の始まりです。蔵人たちと一緒に、先祖代々続く造り方を楽しく学ぶことができました。
とくに興味深かった工程は、製麹という米に麹菌を振りかけて、菌を繁殖させるところ。全ての米に麹菌が行き渡るようにするために、暑い室内で行われます。
瀬頭酒造で試飲と見学
Picture courtesy of UNA Laboratories
別のグループが訪れたのは1789年創業の「瀬頭酒造」。日本酒に情熱を注ぐ瀬頭さんが案内してくれます。
Picture courtesy of UNA Laboratories
瀬頭酒造では酒米の山田錦を自分たちで育てるなど、原料にとても力を入れているそう。酒蔵を見学しながら、米作りから発酵後の酒しぼりまでにいたる全工程を、瀬頭さんから丁寧に教えてもらえます。
Picture courtesy of UNA Laboratories
見学ではこの貴重な米を、蒸した状態と麹菌で発酵した状態で、味見させてもらえます。また、日本酒の入った大きなタンクの前で、実際に日本酒が飲めるのも、とびきりぜいたくな体験です。
Picture courtesy of UNA Laboratories
石の重みを利用して人力で酒をしぼる道具など、瀬頭酒造の数々の歴史が残された部屋も見ることができます。
とくにオススメの体験は、瀬頭さんと並んで座り、瀬頭酒造や日本酒業界全体のことについて、気軽に話せること。日本酒に関して私たちは素人ですが、瀬頭さんの親しみやすい人柄のおかげで、気になることを次々に聞くことができます。
見学後はそれぞれ訪ねた酒造から、おみやげの日本酒をいただきました。参加者はみんな、家族や友人たちとこの極上の味を酌み交わそうと、とても楽しみにしていました。
博多へ戻ってツアーは終了
日本酒をめぐる冒険も終わり、これで最後の移動です。再びジャンボタクシーに乗って博多へ向かいました。お腹も満たされ、新しい知識もたくさん。こんなに楽しい経験ができて、あっという間の2日間でした。
日本に根付く豊かな日本酒文化
ツアーを通して、ガイドや蔵人の話を聞いたり、共に酒を飲み交わすことで、地域の文化や歴史を知ることができました。
鹿島・嬉野の日本酒の世界にどっぷりと浸かる、ほかには類のないこのツアー。外からはなかなか見ることができない文化の内側を体験してみましょう。
Written by Steven Csorgo
Photos by Yuji Tanaka, with the exception of the photos taken by Inui Yuki
Sponsored by 鹿島酒蔵ツーリズム推進協議会