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【姫路市】店主夫婦とのおしゃべりも楽しい、地域に愛される和菓子店「栄福堂」
昔ながらの杵つき餅から和洋折衷の焼き菓子まで、手間を惜しまない手づくりの味が地域の人に親しまれています。二代目店主の宮本明広さんと奥さんの志野さんにお話をうかがうと、お二人の気さくな人柄がそのままお店の魅力になっているのだと感じました。
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目次
- 知っトク情報
- 家族で営むアットホームな和菓子屋さん
- 毎日欠かさずつくる自慢の杵つき餅
- 涼を味わう、ひんやり夏のお菓子
- 怪談を美しいお菓子で表現する職人技
- おやつに手みやげに、焼き菓子いろいろ
- 訪れる人とのひとときを大切に
- 基本情報
知っトク情報
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家族で営むアットホームな和菓子屋さん
「栄福堂」は、播但線京口駅から徒歩5分のところにあります。小豆を思わせるエンジ色の暖簾をくぐると出迎えてくれるのは、宮本さん一家の元気な声。
BGMにラジオが流れる店内には、朝生菓子や赤飯、焼き菓子などが並びます。
栄福堂の始まりは1967年。伊丹の和菓子店で修業を積んだ明広さんの父・孝志さんが、当時姫路市内にあったショッピングセンターの一角に売り場を構え創業しました。屋号は孝志さんのご実家の漁船「栄福丸」に由来します。明広さんは、18歳で志野さんと結婚すると同時に孝志さんの元で修業を始め、和菓子職人に。2004年、30歳の時に二代目を継ぎ、現在は父子二人でお菓子を手がけています。
現在の場所に移転したのは2018年のこと。店を構えるにあたり、「ふだん使いできるアットホームなお店にしたくて、二人であれこれ考えました」と志野さん。
お客さんと対面できるよう、背の高いショーケースではなく低めの陳列棚を置いたり、外から見て入りやすいように棚や壁を明るめの色味にしたりと、工夫を凝らした空間に。暖簾や看板の達筆な「栄福堂」の文字は、「娘が書いた字なんです」とうれしそうなお二人です。
そんな家族の思いがつまった栄福堂のイチオシお菓子をご紹介します。
毎日欠かさずつくる自慢の杵つき餅
栄福堂の名物は、杵つき餅であんをたっぷり包んだ『あんもち』。白とよもぎの2種類あり、それぞれ、なめらかなこしあん、北海道十勝産の大粒小豆をふっくらと炊いた粒あんが入っています。「ヒヨクモチ」という品種のもち米で搗いたお餅には、もち粉を使う求肥にはない独特のコシがあり、噛むほどにもち本来の甘みが感じられます。「ひとつで満足感がある」と人気で、年配の方からは「昔は家で搗いていたから懐かしい」という声も。口いっぱいに頬張って、本物のお餅の味わいを堪能してみてくださいね。
翌日硬くなってしまったあんもちは、オーブントースターで焼きもちにして食べるのがおすすめ。表面をこんがり焼いた餅はよく伸び、中のあんこはとろっとして、ひと味ちがった楽しみかたができますよ。
「餅のない餅屋はあかん」という孝志さんのポリシーのもと、創業当時から毎日欠かさずつくり続けているお餅。夏でも販売しているお店は珍しく、遠方から小餅めあてに訪れる人もいるそうです。
涼を味わう、ひんやり夏のお菓子
陽射しに夏の気配を感じるこの頃。ひんやり冷たいお菓子が恋しくなりますね。見た目も涼しげな『あんみつ』はいかがでしょうか? ツルンと喉ごしのよい寒天とフルーツ、求肥もち、それらと合うように通常よりやわらかく炊いた粒あんに、さっぱりとした白蜜をからめて召し上がれ。カップのままでも食べられますが、器に盛りつけると一段とおいしく感じられますよ。
栄福堂では、本わらび粉を使ったもっちりと弾力のあるわらび餅が好評です。そのわらび餅でこしあんを包んだ「包みわらび」は、この時期ならではの商品。『宝珠(ほうじゅ)』という菓銘をもつ、その姿にうっとりします。
宝珠がまとっているのは、深煎りの黒須きなこ。明広さんは「深煎りで苦味のあるきなこを使うことで、あんの甘さとのバランスをとります」と話します。香ばしいきなこに、とろけるわらび餅、上品なこしあんが舌の上で一体となり、見た目もさることながら、その口あたりにもうっとり。このほか、夏のあいだはくず餅や冷やしぜんざいなどが登場。涼やかなお菓子が暑さを和らげてくれそうですね。
怪談を美しいお菓子で表現する職人技
みずみずしい葛ゼリーに、かのこ豆と青楓を閉じこめた上生菓子。姫路城世界遺産登録30周年を記念して5月に開催された「平成中村座姫路城公演」の大尽席のために用意したお菓子です。上演される『播州皿屋敷』のヒロインお菊さんにちなみ、菓銘を『菊水』と命名。お菊井戸を葛ゼリー、井戸の石をかのこ豆であらわし、ラムネ味でさわやかに仕上げました。手に取るとふるふると揺れ、水面が揺れているかのよう。『播州皿屋敷』は井戸から現れたお菊さんの亡霊が「一つ、二つ……」と皿を数える怪談ですが、明広さんの手にかかればこんなにさわやかなお菓子になるのですね。夏のあいだは店頭に並ぶそうなので、出会えたらラッキーですよ。30年間和菓子ひとすじで腕を磨いてきた明広さん。どんな時にアイデアが生まれるのか尋ねると、「アイデアはいつも頭の中にあるんです。でも、それは点のようなもの。ある日突然、点と点がつながる時があります」と話します。
おやつに手みやげに、焼き菓子いろいろ
日持ちのする焼き菓子は、日々のおやつにも手みやげにもぴったり。封を開けると、バナナの甘い香りが漂う『甘蕉(バナナ)ケーキ』。バナナピューレを混ぜた生地に黄身あんを入れ、かのこ豆を散らしたフィナンシェ風のお菓子です。フレッシュなバナナを、小田巻(おだまき)という道具でモンブランのように絞ってピューレにするのは、ひと苦労。しかし、「手間ひまかけたら、かけた分だけおいしくなる」と手間を惜しみません。
名前もかわいい『かぼっちゃん』。ほっくり甘いかぼちゃあんをサクサクのパイ生地で包んだかぼちゃパイ饅頭です。もともとは秋だけの商品でしたが、女性に人気で通年提供するように。しかし明広さん、かぼちゃが苦手なのだとか。志野さんは、「お客さんに喜んでほしいからと、涙ながらにつくってるんですよ。味見はわたしがしっかりしてます」と笑います。そんなウラ話もありながら二人三脚で歩むお二人に、自然と笑みがこぼれます。
「日本一こだわり卵」の名で知られる加古川市「セーラー」のたまごを使用したカステラは、フードプロフェッショナルアワード受賞商品。その製造過程で出る切れ端から生まれたのが『かすてらラスク』です。「おいしさは正規品と変わらないので、どうにか商品化したくて」と志野さん。ぱくっと口に放りこむと、たまごの風味がふわっと広がり、さっくり軽い食感。子どもたちに人気で、おこづかいを握りしめて買いに来てくれるそうです。お行儀よく棚に整列しているお菓子たちですが、一つひとつエピソードを聞くと、なんだかどれもいとおしく思えてきます。いろいろ味わって、お気に入りを見つけてくださいね。
訪れる人とのひとときを大切に
「お客さんから教えていただくことも多いんです。『あんみつの求肥が好きやねん』とか、『くず餅をかき氷にのせて食べるとおいしいよ』とか。感想を聞けるとうれしいですね」と志野さん。取材の日も、小さなお子さん連れのお父さんや年配の方、学校帰りの高校生など、幅広い年齢層のお客さんが好みのお菓子を買い求めていました。笑顔でことばを交わし、訪れる人とのひとときを大切にする宮本さん夫婦を見ていると、栄福堂が愛される理由がわかります。
お菓子だけでなく、こんなつながりも。明広さんは大のABCラジオ好き。店内の一角には番組ステッカーやタイムテーブルなどがところ狭しと並んでいます。店内のBGMがラジオなのも納得ですね。リスナー同士のつながりが多く、「店で飾って」とラジオグッズを送ってくれる人もいるのだとか。
「細々とですが、自分たちにできることを楽しみながらやってます」とお二人。家族でつくり上げてきた栄福堂で、これからも人とお菓子を通して楽しい時が紡がれていくのでしょう。毎月第3水曜日には、神戸元町商店街の水曜市にも出店。神戸方面にお住まいの方は足を運んでみてはいかがでしょうか。お菓子はもちろんのこと、宮本さん夫婦とのおしゃべりも楽しんでくださいね。
(ライター ながら)
※本記事は2023年6月時点の情報です。価格は税込み表示です。商品内容や価格が変更となる場合があります。
基本情報
姫路菓子司 栄福堂
住所:姫路市神和町146
電話番号:079-282-0424
営業時間:9:00~18:30
定休日:水曜日
アクセス:神姫バス「城見町」バス停 下車 徒歩1分
駐車場:あり(2台)
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