旅の準備はじめよう
休日の大人旅~まさに極楽浄土~
暦の上では秋を迎える頃(7月下旬から8月下旬)、栗原市を象徴する大きな沼「伊豆沼(いずぬま)」そして隣接する「内沼(うちぬま)」には大輪のハスの花々が咲き広がり、その時期になると毎年「伊豆沼・内沼はすまつり」が開催されている。沼一面にゆったりと浮かび、太陽の光を受けて輝くハスの花々は、まるで一年に一度だけ現れる水上の花世界のようで、その神秘的な光景を一目見ようと、毎年国内外から多くの観光客が訪れている。
伊豆沼・内沼はすまつり
今日は、この「伊豆沼・内沼はすまつり」を目当てに、一人の女性が伊豆沼に降り立った。仕事に追われる日々の合間を縫って、たった一人の自由な旅「大人の休日旅」を満喫する、それが目的だ。この日のために準備した涼やかな浴衣に身を包み、真夏の日差しに目を細めながら、その表情はどこか儚げな雰囲気。そんな表情が許されるのも、誰にも心配をかけずに自分の時間を過ごせる「大人の休日旅」の醍醐味だ。
伊豆沼は近年の温暖化の影響によって、天候や日照時間、災害などで毎年の開花状況が異なっていると言う。今年(2023年)は昨年の豪雨で沼の水位が上昇し、一部のハスは水没して枯れてしまったが、その中でも生き延びたものたちが可憐な花を咲かせていた。
そして、毎年はすまつりで大活躍するのが地元の船頭さん。可愛らしいハイカラな屋根を付けた6、7人乗りの小舟を操り、乗船客に約20分間の美しい水面の旅を提供してくれる。
『はい、出発しますよぉ!救命具を着てしっかり捕まっててね。』
小舟はブルルルンと軽快なエンジン音を鳴らしながら、ぐるりと周り水面の旅へと出発!
真夏の暑さを忘れてしまうほどの爽やかな風が、スゥッと船の中を通り抜け、さっきまで居た桟橋が小さく見え始めた頃、目の前には大人の手を広げたほどの大きなハスの花たち!
風にゆらゆらとなびく桃色の花たちは、沼の奥からスラリと伸び地上に顔を出していて、その姿は力強さに加えて、凛としたたくましさも感じる。伊豆沼に生育しているハスは食用ではない種類で、食用のハスは茎の部分を「蓮根(レンコン)」として市場に出している。また、花の色は伊豆沼のような桃色(赤)の他にも白色が存在し、その違いは食用とは無関係と言われている。見れば見るほどハスの魅力に惹き込まれて行きそうだ。
そんなハスの花を見つめながら『ふぅ』っと深呼吸。
日頃の慌ただしい時間を忘れて、やわらかな風と水面に咲く花々に自然と笑顔が浮かぶ。青空に映える桃色のハスの花は芸術的な魅力以外にも、見るものにエネルギーを与えてくれる、そんな不思議な世界が存在しているかのようだ。
『あそこに座ってもいいですか?』
『ふふっ』と、ほころんだ表情を見せながら足早に船首(せんしゅ)に座ると、ハスの花たちはそれを見守るかのようにして、フワリと揺れ動いた。伊豆沼の大自然が人々に笑顔を呼び込み、日々の目まぐるしい時間の中に「大切な時」を与えてくれる。
ポツリと溢れ出す言葉は
『来てよかったなぁ』
20分間という水上の幻想的な時間は、普段あっという間に感じる時の刻みとは違い、ハスの花たちがゆうらり揺れ動くような、そんなゆっくりとした時間が流れていた。
『ゆっくりしていきなさい、のんびりしていいんだよ。』
まるで、ハスの花々からそんな声を掛けられたかのようで、思わず笑みがこぼれた。
広大な水面に広がる美しいハスが、これからもここに生き続けられますようにと願いつつ、『また来よう』そう心の中でつぶやいた。
うーんと伊豆沼の透き通るような空気を吸い込むと、なんだか美味しい珈琲を飲みたいなと閃いた。こんな風に突然思った時にフラッと立ち寄ってみる、それができるのも大人の休日旅の良いところ。時間を気にしないで自由に動く。
『こういう感じ、良いよね。』
パッと調べてみるとここからほど近い場所に、素敵なジャズ喫茶「カフェ・コロポックル」というお店の情報を発見。ここから車で1、2分(徒歩で約10分)、なんて素敵!と思いつつ、早速カフェへと向かった。
宮城県の北西部に位置する市で、市全域が栗駒山麓ジオパークです。市の北西端に位置する標高1,626mの栗駒山は、国定公園に指定されており、秋の紅葉「神のじゅうたん」が全国的にも有名です。 また、南東に位置する伊豆沼・内沼は、ラムサール条約登録湿地で、夏は沼一面に咲き誇るハス、冬はマガンやハクチョウなど多くの渡り鳥が訪れます。 その他にも、ジオパークビジターセンターや細倉マインパーク、くりでんミュージアムの三大パーク、温泉や地酒、田園風景や古民家など、ゆったりとしたくりはら時間が魅力的です。