旅の準備はじめよう
日本酒の種類ガイド!純米・吟醸・本醸造から、お燗と冷や、清酒、甘口・辛口などの違いを紹介
近年、世界的に愛好者が増えている日本酒。本記事では、純米酒や吟醸酒と本醸造酒などの違い、甘口・辛口など味の違い、日本酒度による違い、薰酒・熟酒といった香りによる分類、お燗・冷やなどの飲み方による違いを紹介します。また、八海山、獺祭など初心者におすすめの日本酒の銘柄も紹介します。
日本酒の種類を知ろう!
日本の伝統的なお酒である日本酒。どんな種類があるのかを知れば、日本酒がもっと楽しくなります!
本記事では、日本酒好きのライターが、日本酒の種類をはじめ、初心者におすすめの銘柄、酒蔵見学も楽しめる日本酒の名産地などを紹介します。
目次
日本酒と清酒の違いは?
純米酒、吟醸酒、本醸造酒など(特定名称酒)の違いは?
甘口・辛口・酸味など、味ごとの違いは?
淡麗甘口・薰酒など、香り・味ごとの違いは?
燗酒、冷やなど、飲み方ごとの違いは?
初心者にオススメの銘柄は?
日本酒の名産地は?
日本酒と清酒の違いは?
Photo by PIXTA
では、ここから日本酒の種類について、見ていきましょう。
まず、日本酒については、「清酒」という言葉が使われることもあります。日本酒と清酒は同一のものなのでしょうか?
日本の「酒税法」の定義によれば、次のようになります。
・清酒:米、米麹、水を主原料に発酵して造ったお酒で、アルコール度数が22度未満のもの。
・日本酒:清酒のうち、原料に国産米のみを使い、かつ国内で醸造したもの。
日本酒の価値を守るため、日本酒は2014年に地理的表示(GI)に登録されました。 これ以降、海外産の米を使ったり、海外で醸造されたりしたお酒は「日本酒」とは言えなくなりました。
純米酒、吟醸酒、本醸造酒など(特定名称酒)の違いは?
日本酒は、精米歩合と醸造アルコールの有無によって8種類の「特定酒」に分けられます。
精米歩合
精米歩合とは、原料米から表面のタンパク質や脂質など削った後に残る白米の割合を指します。 例えば、一般的な食用の白米の精米歩合は90%で、お米の表層の約10%が削り取られていることになります。
米の外層には栄養分が豊富に含まれています。しかし、醸造過程で雑味の原因となるため、食用米よりも多く除去されます。
日本酒の個性を決めるのは精米度です。精米度が低いほど不純物が少なく、臭みが少なくすっきりとした味わいになります。
醸造アルコールの有無
醸造アルコールとは、主にサトウキビを発酵・蒸留して作られる高純度アルコールです。 醸造アルコールを加えると香りが増し、よりすっきりとした味わいになります。
醸造アルコールが入っているものは非純米酒、入ってないものは純米酒となります。
純米酒
名称 | 精米步合 | 香味の特徴 |
純米酒 | 無規定 | 香りも色も良い |
特別純米酒 | 60%以下または特別な醸造方法 | 香りも色も特に良いです |
純米吟釀酒 | 60%以下 | 芳醇でフルーティーな吟醸香と発色の良さが特徴です。 |
純米大吟釀酒 | 50%以下 | 芳醇でフルーティな吟醸香がより華やかになり、色も特に優れています。 |
非純米酒系列
名称 | 精米步合 |
本釀造酒 | 70%以下 |
特別本釀造酒 | 60%以下または特別な醸造方法 |
吟釀酒 | 60%以下 |
大吟釀酒 | 50%以下 |
甘口・辛口・酸味など、味ごとの違いは?
日本酒については、「辛口」「甘口」といった味での分類もあります。また、酸度という基準もあります。
これらは、表示が義務付けられていませんが、多くの日本酒のラベルに記載されています。
酒度:甘口/辛口
+6.0以上 | +3.5~+5.9 | +1.5~+3.4 | -1.4~+1.4 | -1.5~-3.4 | -3.5~-5.9 | -6.0以上 |
大辛口 | 辛口 | やや辛口 | 普通 | やや甘口 | 甘口 | 大甘口 |
日本酒に含まれるアルコールは水より軽く、糖分は水より重たいため、お酒に含まれるアルコール・糖分の度合いによって。お酒の比重は変わってきます。
純水に対する日本酒の「比重」は、「日本酒度」と呼ばれています。これが、「甘口」「辛口」の区別に使用されます。
日本酒は、発酵の過程で酵母が糖分をアルコールに分解するため、発酵が進むにつれて日本酒の比重は軽くなっていきます。 「日本酒度」が小さいものは糖分が多く含まれた「甘口」で、「日本酒度」が高いものはアルコールが多い「辛口」となります。
「甘口」は糖分が多いですが、グラニュー糖と違いもともとお米なので、風味が豊かでフルーティな甘さが特徴です。
糖分の少ない「辛口」は味が濃いですが、一般的に言う「辛さ」ではなく、すっきりしたドライな味わいになります。
酸度
日本酒の味は、日本酒度以外の要素もあります。そのひとつが、酸度です。これは、日本酒に含まれる有機酸の量のこと。有機酸は、お酒の酸味・旨味をもたらします。
日本酒の一般的な酸度の範囲は0.5~3.0です。
1.4~1.6:中庸
<1.4:口当たりが柔らかく軽くて飲みやすいので「淡麗」と呼ばれています。
>1.6:濃厚でまろやかな味わい「濃醇」
アミノ酸度
アミノ酸度は日本酒のアミノ酸含有量を表します。うま味成分のため、高ければうま味が増し、コクなどを感じます。
淡麗甘口・薰酒など、香り・味ごとの違いは?
日本酒度・酸度による分類
日本酒のラベルには、日本酒度や酸度に応じて、次の4つの味の分類がされることが多いです。
・濃厚辛口
・淡麗辛口
・濃厚甘口
・淡麗甘口
香りと味での区別(薰酒、熟酒など)
日本酒造組合中央会によると、日本酒は香りと味わいに応じて次の4つに分類されます。
薰酒(くんしゅ):フルーティな香りがし、軽めの味わいが特徴。食前酒にもおすすめ。
熟酒(じゅくしゅ):日本酒を熟成したお酒で、香りが複雑で、かつ味も濃厚なのが特徴。
爽酒(そうしゅ):軽い香り、軽くて爽やかな味わい。しっかり冷やして飲むと、キレの良さを感じられる。
醇酒(じゅんしゅ):木のような丸く柔らかな香り。甘味、酸味、苦味のバランスが取れており、濃厚な味と長い余韻が特徴。発酵食品などにも合う。
初めて日本酒を飲む人は、まず試飲を通じて好みの香りや味を見つけてみてください。 購入時は、まず酒屋のスタッフに好みの味を伝え、店員さんに試飲を勧めてもらって好みの味を決めることができます。
燗酒、冷やなど、飲み方ごとの違いは?
日本酒は、温めても冷やしてもおいしく飲めます。ただし、温度によって味わいが変わるため、ここでも種類が分かれています。
1. 燗酒
日本酒を燗にすると、お米の味わいが感じやすく、旨みが口の中に広がります。
温度 | 名称 | 特徴 |
55℃以上 | 飛び切り燗 | 酒を持ち上げるのが難しいほど熱く、強烈な香りが引き出されます。口当たりはとても辛口 |
50℃ | 熱燗 | 香りが引き立ち、味わいはすっきり |
45℃ | 上燗 | 香りがまろやかになり、味わいが豊か |
40℃ | ぬる燗 | 体温より少し高い温度にすることで香りが増し、味がより濃厚 |
35℃ | 人肌燗 | 体温より少し低い温度で、米麹の風味と米の香りを味わえる |
30℃ | 日向燗(ひなたかん) | 辛さを感じず、ほんのり香りを引き出し、まろやかな味わい |
あわせて読みたい
2. 冷や(常温)
日本語の「冷」には「冷たい」という言葉がありますが、これは冷たいお酒のことではなく、常温のことを指します。 一般的には20℃くらいです。
ほかのお酒は常温で飲むにはあまり適しませんが、日本酒は常温で飲むと本来の風味を味わうことができます。
冷蔵庫のなかった時代、温めるか常温しか選択肢がなかったので、常温のお酒のことを「冷や」と呼んでいました。しかし、冷蔵庫で冷やした酒の選択肢が増えた今、お店に飲みごろ温度を伝える際には「常温」と言ったほうがよい場合もあります。
3. 冷酒
冷蔵庫が使われるようになって以降、冷たくして飲む「冷酒」も増えてきました。
日本酒は冷やして飲むとより繊細ですっきりとした味わいになるので、爽やかな味わいの爽酒や薫酒はもちろん、大吟醸などを冷やして飲むのもオススメです。
温度 | 名称 |
15℃ | 涼冷え(すずびえ) |
10℃ | 花冷え |
5℃ | 雪冷え |
初心者にオススメの銘柄は?
純米大吟醸 八海山
Picture of Courtesy Amazon
新潟の天然軟水「雷電様の水」を使用しており、フルーティな香り、繊細でしっとりとした味わい、すっきりとした臭みのない味わいです。
獺祭シリーズ
Picture of Courtesy Amazon
「獺祭(だっさい)」の純米大吟醸45は日本の公式晩餐会で取り上げられたことで有名になりました。45%精米していますので、お米の香りがしっかりと感じられ、フルーティーな芳醇な香りが味わえます。
精米歩合39%、精米歩合23%の商品もあり、それぞれ違う味のものをセットで購入することもできます。
久保田 純米大吟醸
Picture of Courtesy Amazon
すっきりとしたキレのある味わいと、上品で華やかな香りが特徴。甘味と酸味のバランスが取れており、「久保田」ならではのシャープな味わいが存分に発揮されています。
上善如水 純米吟醸
Picture of Courtesy PRTimes
華やかなフルーティな香りとすっきりとした味わいが特徴の新潟の「上善如水(じょうぜん みずのごとし) 純米吟醸」は、そのまま飲んでも、食中酒としても最適です。
純米吟醸 古都
京都の二条城の北側にある佐々木酒造は、俳優・佐々木蔵之介の実家で、京都市中心部に現存する唯一の酒造です。同社が発売している「純米吟醸 古都」は、爽やかな酸味と濃厚な甘みを持ち、口当たりが爽やかです。
日本酒の名産地は?
日本には、各地に日本酒の名産地があります。こうした場所では、見学ができる酒蔵も多くあります。特に有名なスポットを紹介します。
兵庫県「灘五郷」
「【兵庫神戸】日本酒の聖地「灘五郷」の楽しみ方を徹底解説!おすすめの日本酒バーもご紹介!」より
兵庫県神戸市灘区から西宮市にかけての沿岸は、古くから日本酒造りが盛んでした。そのうち、特に有名な5つのエリアが「灘五郷」と呼ばれています。
この地域の地下水は硬度が高く、ミネラル分が豊富ですが、水の色や味、風味に影響を与える鉄分がほとんど含まれていません。 また、灘は特に有名な酒米の「山田錦」の生産地としても知られています。。
良質な水と米、優れた醸造技術と相まって、灘は、日本酒三大産地の一つに数えられています。
灘五郷の特徴は、ミネラルが豊富で発酵が盛んなため、新酒の香りと味わいが印象的です。
酒蔵:白鶴、菊正宗、日本盛、白鷹
京都府「伏見」
Picture of Courtesy PRTimes
京都伏見は古くから酒造りが盛んで、良質な地下水があり、弥生時代から酒造りが始まったと推定されています。
豊臣秀吉による伏見城の築城、城下町の大規模開発、宇治川の整備により、伏見は近畿の水路の要衝のひとつとなり、良質な酒原料が集まりやすくなり、多くの人々が集い、酒造りが栄えました。
伏見水はカルシウムやマグネシウムなどのミネラルを豊富に含む硬水ですが、灘水に比べて発酵に時間がかかります。そのため、この地で造られる日本酒は、酸味が少なく、まろやかな口当たりです。
酒蔵:月桂冠、黄桜
広島県「西条」
広島県の中部にある東広島市西条町は、酒蔵が数多くあり、醸造技術を研究する総合酒類研究所もあります。
西条は酒米の栽培に適した寒暖差のある盆地で、また良質な地下水が豊富に含まれています。 しかし、この地域は水質が軟水で、当初はおいしい日本酒を醸造できる酒蔵があまりありませんでした。
しかし、19世紀末に三浦仙三郎が「三浦式軟水仕込み法」を開発してから、この地では酒造りが盛んになりました。軟水で醸造した日本酒は、より柔らかく、まろやかな味わいになります。
酒蔵:賀茂鶴、福美人、白牡丹
あわせて読みたい
新潟県
新潟県には、酒造りに適した米と水があることから、古くからおいしい日本酒を数多く造ってきました。現在は、日本でもっとも多くの酒蔵がある日本酒王国となっています。
新潟の酒蔵は、雑味の少ない新潟産の酒米「五百万石」を使い、軟水を使用しながらゆっくりと発酵させることで繊細ですっきりとした味わいを醸し出しています。軽くて辛口で、どんな飲み方をしても飽きのこない、おいしいお酒が多くあります。
酒蔵:白瀧、吉乃川
終わりに
日本酒は、とても奥深い世界が広がっています。本記事を参考に、ぜひ、皆さんが自分の好みの日本酒を見つけてもらえればと思います。
また、機会があれば、酒蔵見学をしてみると、いっそう日本酒がおいしく感じられるようになるでしょう。
ただし、お酒の飲み過ぎは健康を損なうので、ご注意を! また、日本では、20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。