阿蘇の特産品「阿蘇高菜漬け」を細かく刻み、油で炒め味付けをし、白いご飯と混ぜた「高菜めし」。阿蘇市で昔から食べられてきた家庭料理で、阿蘇観光の際にはぜひ味わいたい“ご当地グルメ”のひとつです。
今回はそんな「高菜めし」と、熊本名物「だご汁」がセットで味わえる食事処を紹介。いずれも熊本市内から阿蘇方面へと向かう国道57号線沿い(だご汁街道)にあるので、ドライブ途中に立ち寄れますよ。
国道57号線沿いにある「元祖たかなめし」の赤い看板が目印。老舗の味を求め、平日・休日問わず多くの人が訪れる「あそ路」は、それまで各家庭で親しまれていた“高菜めし”をレストランメニューとして初めてお客さんに提供したお店です。看板メニューの“高菜めし”は、現在の店主・井芹正吾さんの曾祖母がおふくろの味として子ども達に作っていた味がベース。刻んだ高菜漬けの茎部分とタケノコを炒め、熱々のご飯に混ぜたシンプルな料理ですが、自家製の阿蘇高菜漬け(古漬け)を使っているため、独特のコクと深みがあるのが特徴。創業から50年以上たった今も、当時と変わらぬ素朴な味を楽しむことができます。
ゆったりとした造りの店内。入口から向かって右側がテーブル席、奥の左側が座敷席になっていて、窓の外には美しい庭園と、阿蘇の雄大な景色が広がります。
だご汁、おから、ホルモン煮込み、自家製漬物が付いたボリューム満点の「たかな飯定食(1430円)」は一番人気のメニュー。汁物はだご汁のほか、ぶた汁、ご汁、みそ汁からセレクトOK
シャキシャキっとしてコクのある高菜漬けの茎と、甘めに味付けされた錦糸卵のバランスが絶妙の「たかな飯」。同店では、半年~2年程寝かせて熟成させた古漬けが使われており、定食のほか、単品でもその味を堪能することができます。元祖たかなめし(580円)、小(480円)、大盛(880円)
(左)毎年春、親戚総出で樽漬けするという本格的な阿蘇高菜漬けをはじめ、しその実、季節の漬物など、定食の小鉢で味わえる漬物はどれも絶品。店頭で購入も可能。
(右)たかな飯にしその実をのっけて食べるのも、また美味しい。
注文後にひと鍋ずつ丁寧に火にかけ、熱々で提供される味噌ベースの「だご汁」。昆布や煮干し、さば節などで毎日ダシを取るこだわりようで、白菜、なす、にんじん、椎茸などの野菜もたっぷり! こちらも創業当時のレシピが受け継がれています。
(左)2日間かけじっくりと煮込まれた「ホルモンの煮込み」は、常連さんに人気の名物料理。国産ホルモンが使われていて、臭みがなく、すっきりとした味わい
(右)店内中央の一番目立つ場所に置かれた「おでん」。具材ひとつひとつに、長年、継ぎ足してきたつゆが染みわたっています。1本150円~
定食以外にも、あか牛の鉄板焼きや馬刺しなど、熊本ならではの一品料理も味わうことができます。たかなめし、おでん、ホルモン煮込みはテイクアウトにも対応
元祖たかなめし あそ路
阿蘇カドリードミニオンから車で約1分。今年で54年目を迎える「山賊旅路」は、もともと農業に従事していた店主・永野博吉さんが20代前半から営む老舗の食事処です。創業当時、テーブル5台からスタートしたお店は、年々増築を重ね、今ではテーブル・座敷席あわせて100名を収容できるまでに。著名人も多く来店し、平日の昼間でも行列ができる有名店になっています。注文後、熱々出来立てで提供されるこだわりの“だご汁”や、国産豚の貴重な部位を使った“ホルモン煮込”など、名物料理も多数! 大きな赤い提灯が目に入ったら、ぜひ立ち寄りたい一軒です。
自身が所有する山の木や、牛舎の小屋の梁を使って建てられた店内。天井には、店主ご夫妻が長年集め続けている土鈴が飾られ、賑やかな雰囲気を醸し出しています
ボリュームたっぷりのだご汁をメインに、たかなめしと小鉢(冷やっこ、山芋、大根おろし、竹の子煮、しその実)がセットになった「だご汁定食(1450円)」。昔ながらの田舎豆腐や、粘り気の強い山芋など、小鉢も侮れない美味しさ。たかなめしは山賊めしに変更可能
自家製の阿蘇高菜漬けを使った「たかなめし」。半年以上寝かせた古漬けを丸ごと刻んで混ぜてあるので、一皿で葉っぱや茎の部分など、様々な食感が楽しめます。お米は幻のお米「あそひかり」を贅沢に使用
そのままでも十分においしい“たかなめし”ですが、錦糸卵と紅ショウガ、しその実の塩漬けを混ぜ混ぜして食べるのもお勧めです。
こちらは、米、麦、赤など、数種類の味噌をブレンドした濃厚な旨味が特徴の「だご汁」。注文を受けた後、ダシの入った鍋に具材とだごを入れ、味噌を溶いて仕上げるため、いつでも出来立てが味わえます
(左)“ショウガのすりおろし”がトッピングされているのも◎。汁に混ぜて食べると、全身ぽかぽかに!
(右)熊本・福岡産の国産小麦を手でこね、一晩寝かせた“だご”はモチっとしていて、もやしや人参、油あげなどの具材に程よく絡みます。なかでも芋ガラ(里芋の茎)の独特の食感は、クセになる味。
(左)天井に飾られた土鈴の数は何と800個以上。中には「飾って欲しい」とお客さんに託されたものも!
(右)各テーブルに置かれたメニュー表。たかなめしは“おにぎり”でも味わえるので、小さい子供にも好評。
山賊旅路
国道57号線沿いに車を走らせていると、目に飛び込んでくる「阿蘇 郷土料理」と書かれた黒い看板。昭和61年創業の「ひめ路」はその看板通り、高菜めし、あか牛といった阿蘇ならではの料理から、だご汁、馬刺しなど、熊本を代表する郷土料理を数多く提供するお店です。定食から単品まで揃うメニューはどれもボリューム満点。地元で採れた旬の野菜やお米を使ったり、手間暇かけダシを取ったり…、店主・田添さんが丹精込めて作る料理は何を食べてもハズレがないと評判です。その味を求め、県外から月イチで食べに来る常連さんもいるそうです。
店内は純和風の雰囲気。テーブル席と座敷席があり、子供連れでもゆっくりとくつろげます。
高菜めしに、だご汁、漬物が付いた「Aセット(1000円)」は、女性に人気のメニュー。シンプルに郷土料理を味わいたい時にピッタリ。そのほか、ホルモン煮込み付きのBセット、馬刺し付きのCセットなど、定食の種類が充実しているので、その日の気分に合わせて選べます。
阿蘇高菜漬けがたっぷりと混ぜ込まれた「高菜めし」は、塩加減とゴマの風味がたまらない一品。お米は地元・阿蘇の契約農家から仕入れたコシヒカリが使われていて、次から次に箸が進みます。
見てください、この大きさ! 上品な甘さの「だご汁」は、ラウス昆布や銀タレ(煮干しいりこ)で取ったダシに数種類の味噌がブレンドされていて、中にはゴボウ、人参、椎茸、里芋、しめじ、カボチャなど、大きめにカットされた地元産野菜がゴロゴロ。ちなみに野菜は、それぞれ別ゆでした後に煮込むというこだわりようで、汁には凝縮された旨味がたっぷりと溶け出しています。
小麦粉と水をこねて、一日寝かせて仕上げる“だご”。平べったい仕上がりで、弾力があってモッチリとしています。注文後に手作りで鍋に入れるため、一つひとつ大きさが違うのも面白い。
ひめ路自慢の3品(高菜めし、だご汁、ホルモン煮込み)が一度に味わえるる「高菜めし定食(1540円)」も人気。小鉢もセットで、お腹も満たされます。
(左)定食に付く小鉢は、ほとんどがお店で手作り。素材を活かした味付けが好評
(右)赤牛丼や馬肉の塩焼き定食など、食欲をそそるメニューがずらり
ひめ路