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海洋プラスチックごみのアップサイクルブランド buoy(ブイ)
横浜に、海洋プラスチックゴミに新たに命を吹き込み、色鮮やかな製品へと生まれ変わらせるブランド「buoy」があるプラスチックメーカーから誕生しました。 海洋ゴミ100%でできている製品はゴミそのものの色が活かされており、もともとはゴミであったという事実を疑うほどかわいらしい仕上がりです。 並ぶのはキーホルダーやトレイ、コースターといった生活雑貨から、時計やランプシェードのようなインテリアまで40種類以上の商品を展開します。
日本の海が汚い
島国である日本には、綺麗な海や海岸線がみられる観光地がたくさんあり、私たちは古代からこの海の恩恵を受けて暮らしてきました。
しかし、現在その海がある問題を抱えています。
それは海洋ゴミ問題です。
日本には現在、周辺の主な海流によって、中国や韓国、台湾や東南アジアから莫大な量の海洋ゴミが流れ着いています。さらに北西から吹く偏西風の影響で、特に九州地域と日本海側にはゴミの漂着が多いと言われており、ゴミの内訳を見てみると漁具を中心に大半をプラスチック製品が占めています。
もし今日本の海岸に漂着した海洋プラスチックゴミが拾われずに放置されてしまったとしたらどうなるでしょうか。
回収されなかったゴミは、風や波によって再度海へ流出し、海流にのって旅をし次はアメリカ大陸付近でゴミだまりを作ります。そして、海岸に打ち上げられたときの衝撃や、紫外線の影響により、時間と共に劣化し小さな破片になります。5ミリメートル以下まで小さくなったものをマイクロプラスチックと呼び、ここまで小さくなってしまうと回収が難しくなるだけでなく、鳥や海洋生物が誤飲するリスクを高めます。
そして小さくなっても消えることはなく自然界に残り続けるプラスチックは、生態系に大きなダメージを与えることは明らかです。海洋ゴミ問題は決して特定の国のみが抱える問題ではなく、世界全体で解決に向かわなければいけない問題になっています。
なぜ海洋プラスチックゴミから製品を作ることを決めたのか
buoyというブランドは訳5年前、株式会社テクノラボという横浜にあるプラスチックメーカーから誕生しました。
プラスチックはいまや当たり前のように私たちの生活へ溶け込み、様々な不可能を可能にしてきましたが、その一方で年々その生産量は増加し、海へと大量に流出したプラスチックは世界的な課題となっています。大量生産・大量消費・大量廃棄を前提として生産されるプラスチックは、「使い捨てプラスチック」という言葉があるように、簡単に安く手に入るからこそ、捨てることに抵抗もありません。その消費行動こそが今の問題を生み出しています。
テクノラボは世の中を良くしたい、人の役に立ちたいという思いでこれまでたくさんのプラスチックを製造してきました。しかし、今やまるでプラスチックそのものが悪いかのような扱いをされている事実に悲しさを覚えると同時に、プラスチックメーカーだからこそできることがあるのではないか、と考えるようになりました。
さらに、日本各地でビーチクリーンを行っているボランティア団体の皆さまから話を聞いていると、「拾っても拾ってもただ埋めたてられるだけだし、1週間後、1か月後にままた同じ状態に戻っていて、同じことの繰り返しで虚しい」という声をよく聞きます。
そこで、日本のキレイな海を守り続けてくれている地域のひとたちも助けたい、と思いました。私たちは製品の原材料となる海洋プラスチックゴミを各地域から材料として有価で買い取っています。なぜならビーチクリーンをボランティアで、善意のみで続けていくには限界があるからです。日本のきれいな海を次世代へ繋ぐためには、ビーチクリーン活動も持続的でなければいけません。
一度捨てられてしまったプラスチックを、もう一度社会へと戻しさらに誰かにまた愛してもらえるような製品をつくり、そして日本の様々な地域で海洋ゴミで困っている人を持続的に支えたいという思いからbuoyは存在するのです。
不可能を可能にした特殊技術
テクノラボはこれまで培ってきたプラスチックの知識や製造技術を活かし、海洋プラスチック100%で製品をつくることができる独自の成形方法を開発しました。
着色や混ぜ物は一切しておらず、出来上がった製品はゴミが本来もつ色が活かされています。プラスチックは100種類近くのプラスチックが存在しており、使用用途や機能によって開発されてきたため、素材によって全く融点が異なります。そのため、本来原料としてリサイクルするためにはそれら全てを種類ごとにきっちりと分別する必要があるのですが、それができないのが海洋ゴミです。なぜなら、素材名が書かれているわけではない漂着ゴミは、どこから流れてきたのかもともと何だったのかわからないうえに、貝や砂などそもそもプラスチックではない素材がついていたりもするからです。
このような理由からリサイクルにはまわせず、塩がついているため焼却炉にいれると故障の原因にもなるということで焼却もされず、基本的に海洋ゴミは埋め立てにまわっています。しかし、私たちはどこにも行き場がない海洋プラスチックゴミをどうにかするため、多少貝や砂がついていたとしても、適切な温度や圧、時間を調整しながら、分別することなく成形することに成功しました。
プラスチック製品というと大量生産を思い浮かべてしまいますが、buoyは大量生産はせず製造工程はすべて手作業で行われています。どのような素材が混ざっているかわからない海洋プラスチックゴミの原料は、溶かしてみるまでどのような溶け方をするのかわからないため、一つ一つ確認し調整しながら成形する必要があります。そして最後にはバリ取りというカッターナイフで一つ一つ形を整える作業があり、全て
職人の繊細かつ丁寧な作業があるからこそ成り立ちます。また製品が100%海洋ゴミでできているということは、製品の重さ=回収されたゴミの重さです。商品を手に取るお客様には、これだけのゴミが落ちていたという事実、そしてそれを回収してくれた人がいるという事実を感じて欲しいと思っています。
buoyの製品はプラスチックでありながらも、捨ててしまっては二度と手に入らない一点ものの「工芸品」です。
産地(ゴミ回収地域)の記載
buoyは日本各地で海洋ゴミを回収してくださる方がいるからこそ成り立っている事業です。
だからこそ主役はボランティア団体さんであり、商品を手に取る人にとってbuoyがゴミの回収地域の現状や、土地の魅力を知るキッカケになればと思っています。
そのためbuoyはすべての商品に、産地(海洋ゴミが回収された地域)と団体情報へ飛べるQRコードを記載して販売しています。SNS等を通して感謝を伝えてみるのも、その地域を訪れてみるのもいいかもしれません。その想いはきっと地域のボランティア団体さんの励みになるはずです。
いつかなくなるために存在するブランド
buoyは商品やこの取り組みをきっかけにビーチクリーン活動が活発化し、ゴミが拾え無くなることにより商品をつくれなくなることを目指しています。
buoyの独特な色や模様はこれまでたくさんの人を魅了してきました。
海の「今」を伝え、一度捨てられてしまったプラスチックを、もう一度社会へと戻しさらに誰かにまた愛してもらえるような製品をつくることはプラスチックメーカーとしての責任でもあります。
いつかbuoyが無くなることを目指して、今日も私たちの想いと共に皆さまに製品を届けます。
buoyは海洋プラスチックゴミから生まれたアップサイクルブランドです。 生活雑貨やインテリア雑貨を中心に展開し、海洋ゴミ100%で色鮮やかな唯一無二の製品を販売します。 ここでは海洋ゴミの現状から地域の魅力まで、様々なことを発信していきます。