【愛媛県大洲市】團上邸ー400年生き残り続ける悠久のアートスペース
愛媛県の藩主の屋敷として建てられた邸宅「團上邸」は歴史と文化、アートが交わり合う武家屋敷です。現代アート、茶の湯、武家文化の調和を目指し、愛媛県で活躍するアーティストの創作や研究活動を推進するアーティストインレジデンスにも取り組んでいます。
團上邸ー芸術家を見守り続ける武家屋敷
團上邸は、江戸時代後期に愛媛県の藩主の隠居屋敷(旧加藤家屋敷)として建てられました。
芸術を嗜んだお屋敷の主が残した館は、当時から芸術家の交流拠点として親しまれてきた邸宅で、現在はアーティストインレジデンスや研究活動を推進しています。
愛媛県は、その地理的特性から、台湾や韓国といった近隣アジア諸国との文化交流がしやすい場所として注目を集めています。そんな愛媛県の歴史的ルーツを持つ邸宅がアーティストインレジデンスとして蘇り、芸術を介して国を超えた人々とのつながりを生み出す「生きている文化財」として文化のサステナビリティを考える場を提供しています。
團上邸は、愛媛県の南部に位置する大洲市の中心街から東側に位置する、新谷というエリアに建っています。新谷は『銀河鉄道999』の作者、松本零士氏が少年のころ暮らしていたエリアで、新谷駅は銀河鉄道999の始発駅と称されています。
晴れた日の新谷の夜空には、満点の星空が広がります。松本零士氏も自伝的漫画で「大洲・新谷は私の命のふるさと、理想郷、アルカディアです」と語っています。
空き家に再度芸術家の息吹を—1人の芸術家の挑戦
團上邸は150年以上前、明治維新の際に当時の藩主家の手を離れ、豪商の土地に移築保存されました。その後一度は空き家になってしまった團上邸を、悠久のアートスペースとして蘇らせるべく立ち上がったのが、大洲城城主、加藤貞泰をルーツにもち、ご自身もアーティストである團上祐志(だんがみ ゆうし)さんです。
團上祐志さんのプロフィール
團上祐志さんは、愛媛県出身の現代アーティストです。自然素材の蜜蝋を使った絵画・インスタレーション・詩・パフォーマンスの制作活動に、取り組まれています。国内外を行き来しながら、グローカルプロジェクトとして、團上邸を活用したアートスペースの立ち上げ、地域の再生、文化伝承を目的とした社会活動を精力的に行っています。
團上邸での取り組みについては、「400年生き残る文人大名家の精神性を時代に息づかせていくことを狙い、旧伊予大洲・新谷藩主加藤家の歴史を保ちつつ、アーティストたちと共に新しい時代の血を流したい。」と語ります。
團上作品の魅力
團上さんの作品のコアとなる蜜蝋とは、ミツバチが巣を作る時に分泌した蝋を精製した天然由来の素材です。古代エジプト時代から、ろうそくやミイラの保存用として暮らしに欠かせないものでした。その蜜蝋を溶かし、顔料を混ぜて絵を描いたものが「蜜蝋画」です。近代に入ってから、古代エジプトのお墓や古代ローマの街・ポンペイの遺跡から発掘されたことで、世界最古の技法のひとつとして知られるようになりました。
蜜蝋画は、水を汚さずサステナブルなアートとしても近年注目を集めています。
團上さんは、都内で養蜂プロジェクトに参画しており、はちみつは主に地域のレストランやコミュニティに還元しています。養蜂と蜜蝋画を通して、数千年ものあいだ共生してきたミツバチと人間の関係や、都会緑化・循環型社会のあり方を考えるきっかけをつくっています。
團上邸周辺の観光スポット・宿泊施設
團上邸がある大洲市は、今なお大洲城を中心に、江戸時代から残る歴史的な町並みが残されています。
地域文化を残すため、町のアイデンティティを守るため、古き良き町並みや歴史的建造物の再生と活用を軸に取り組んだ大洲市の観光まちづくりは、世界的に評価されています。
2023年には古民家再生や文化・伝統保存の取り組みが評価され、持続可能な観光地の取り組みを表彰するGREEN DESTINATIONS STORY AWARDS in ITB Berlin「Culture&Tradition部門」にて世界1位を獲得。また、2024年にはGREEN DESTINATIONS「世界の持続可能な観光地アワード」でシルバーアワード受賞を受賞しました。
そんな大洲の城下町を味わい尽くすために、老朽化し取り壊される可能性もあった、歴史的にも文化的にも価値ある建物を分散型ホテルとして甦らせたのが、NIPPONIA HOTEL 大洲城下町です。
大洲の城下町をまるごと1つのホテルとして見立てており、フロントから宿泊棟、宿泊棟からレストランへの移動時間でのまち歩きこそが、分散型ホテルの魅力です。歴史的建造物が多く残る城下町には、地元の名産品を使ったスイーツをいただける地元のカフェや、伝統工芸品を取り扱うお土産どころなど魅力的な場所に溢れています。
また大洲市の隣の西予市には、世界的に有名な彫刻家、Kees Ouwens(ケース オーウェンス)のアトリエが一棟貸し宿として生まれ変わったatelier O-HUISがあります。
また、愛媛県の大洲市や西予市があるエリアは、南予地方と呼ばれ、豊かな自然とこの土地ならではの伝統的な文化が色濃く残るエリアです。城下町や商屋町、静かな美しい海、山、川をゆっくり満喫されたい方におすすめのエリアです。
400年生き残り続ける悠久のアートスペース
團上邸は、歴史ある武家屋敷でのアーティストインレジデンスに取り組むことで、世代を越えた文化財の持続的な運用に挑んでいます。400年の歴史を感じながら制作活動をしてみたいアーティストの方は勿論、愛媛県、大洲市新谷のディープな魅力に触れたい方は是非足を運んでみてくださいね。
アーティストインレジデンスや施設見学に関心のある方は、以下Instagramアカウントまでご連絡ください。
江戸後期に四国愛媛の藩主の隠居屋敷として建てられた邸宅。現代アート、茶の湯、武家文化の調和を目指し愛媛県で活躍するアーティストや研究者の創作や研究活動を推進しています。