旅の準備はじめよう

最終回となる第4回は、宮古市でアウトドア用品店「EFRICA」を営む中嶋康文さんにお話を伺いました。
もともとこのブランドは山田町で立ち上げたということもあり、山田町の方と仕事をする機会が多かったため、その頃からトレイルの存在は知っていました。私は釣りが趣味なんですが、釣り場までの遊歩道を歩いていた際、木の枝やガードレールなどいろいろな場所に青いテープが括り付けられていて、なんだこれ?となって。実はそれがみちのく潮風トレイルのルート案内の目印だということがわかり、知らず知らずのうちにトレイルを歩いていたことに気が付きました。同じ道でも「ただ歩く」のではなく、「トレイルルートを歩いていると意識する」ことで、その土地の景色の見え方が変わった感じがしましたね。そこから時間をかけて少しずつ少しずつ歩き進めていき、トレイルの魅力に惹かれていきました。
トレイルを歩く際、景色を楽しむのはもちろんですが、体力づくりもできるのが魅力だと感じています。傾斜のある場所ではわざと早く歩いて体に負荷をかけたりして。トレイルの歩き方は人それぞれだと思いますが、私は舗装路は歩かずに自然歩道をメインに歩き、その中でもアップダウンの激しい、登山をしている気分になれるような険しいルートを歩くのが好きです。山田町のルートは起伏に富んでいるので、歩きがいがありますよ!
松の木の間から海が見渡せる霞露ヶ岳山頂からの眺めは絶景ですね。あとは、漉磯口を出発し大釜崎へと向かう道中では、潮風トレイルの醍醐味とも言える、野鳥の声、木立の隙間から望む太平洋が楽しめますし、目の前に現れるアカマツ、ブナ、ケヤキの巨木は圧巻です。時期によりさまざまな山野草を見ることもできるので、大自然をゆっくり堪能しつつ、森林浴を楽しみながら歩けるルートになっています。特に今の時期歩くには気温的にもちょうど良いので歩きやすいと思いますよ。ただ、落葉時期にあたるので、坂道に落ちた松の葉などで滑らないように気を付けてくださいね。夏はちょっと暑いですが、クモの巣をかき分けながら進むといったワイルドな体験ができるので、また違う面白さがあります。自然豊かな土地ですので、どの季節も熊には要注意です。
マストアイテムは、熊鈴、100円ショップで販売している音だけが出る火薬銃、熊スプレー。あと、あまり大きくないサイズのカメラも持って行きますね。
そして、EFRICAオリジナルのおすすめ商品は靴下です。トレイルと釣り用に足首より下の部分をメリノウールで作ったもので、疲れにくい仕様になっています。この前、トレイルのイベントに出ていたお客さんのなかにもこれを履いてくださった方がいたんですが、歩きやすいと好評でした。23~28センチと少し大きめですが、女性でも履けるようになっていますよ。あとは、オコゼの鉄玉ですね。オコゼっていうのは、その昔、マタギが山に入るときに乾燥させて御守りとして持って行ったものなんです。山の神様は自分のことを不細工だと思っているので、自分より醜いオコゼがいると知ると機嫌が良くなる。そうすると山の天候が回復したり、獣に襲われたりしない、すなわちマタギ自身を守ってくれたという言い伝えがあります。そこから着想を得て、オコゼの鉄玉がトレイルを歩くハイカーたちの御守りになればと思って作りました。その他にも、オコゼのロゴマークが入った商品、ナイロン素材のサコッシュやパンツなど、いろいろ置いています。
外国人の方も結構来ますよ。最近ではフランスの方とかメキシコの方とかが来ていましたね。お店では水とか充電の提供はもちろん、この辺のおすすめスポットも紹介しておりますので、是非足を運んでください。
簡単な英語で会話したり、あとは英語の翻訳アプリを使ったりして意思疎通を図っています。
木彫りの熊の置物の話ですね。店の前に熊の置物を置いているんですが、お店に来てくれたとある外国人の方がそれを見つけ、抱っこして写真を撮っていたんです。それを見た他の観光客やハイカーの方たちがうちの店を写真スポットだと勘違いしたようで、熊の置物と写真を撮るべく行列ができていました。その後、その置物に「ラッキーベア―/写真を撮ると幸運が訪れます」と英語で書いた貼紙をして、店に来てくれたハイカーなどには一緒に写真を撮るのをおすすめしています。これを抱いて写真を撮れば、トレイルハイキング中も熊に出会わないかもしれません。是非みなさん写真を撮りに来てください!
トレイルルートは三陸ジオパークのジオサイト付近を歩けるように整備されており、1億年前の地層や断層などが見られるため、ジオについて事前に勉強してから来ていただけるとより楽しめるのではないかなと思います。特に宮古市の日出島は天然記念物であるクロコシジロウミツバメなどの繁殖地にもなっているので、この土地ならではの生物を目にすることもできますよ。
また、山田町の船越半島、特に漉磯口あたりを歩く際には、遠藤公男さんが書いた「帰らぬオオワシ―猟師七兵衛の物語」という児童書を事前に読んでいただくのをおすすめします。この本は、山田町の船越半島で実在した猟師さんのお話が元になっているんです。なので、船越半島の昔の風土や生活、生態系の変化などが学べますし、まさにトレイルルートとなっている場所が出てきます。あらかじめ一読して、実際に歩きながら本の内容を思い出しつつ目の前の景色に想いを馳せる、というのも楽しみ方の一つかなと。
現状、トレイルハイカー用の寝泊りできる野営地などが少ないのが課題だと思っています。特に船越半島にはほとんどないので、漁港で野宿するしか方法がない状況です。ハイカーからすれば、キャンプ場のようにしっかりとした設備が整っていなくても、テントを張って寝られる場所さえ提供してくれればありがたい。公園や公民館など、いろいろな施設を開放していただき、寝泊りスポットとしてトレイル用マップに載せられれば良いなと思っています。海外に比べ、日本においてはトレイルの文化がまだまだ根付いておらず、キャンプっぽいイメージがあるのでなかなか難しいのかなとも思いますが…。キャンプとはまた違うトレイルの文化がもっと浸透すれば、ハイカーをサポートしたいという方が自然と増えてくるのではないかと期待しています。
みちのく潮風トレイルのように、海沿いを歩くトレイルルートは世界的にも珍しいと思います。「みちのく潮風トレイル」の名前のとおり、心地よい潮風を感じながら歩ける素晴らしいルートとなっていますので、是非一度、歩きに来てください!
☑ 熊よけの鈴と熊鈴、100円ショップで販売している音だけが出る火薬銃、熊スプレー、小型カメラ
こんにちは!岩手県庁の沿岸地区を担当している岩手県沿岸広域振興局です。北は田野畑村から南は陸前高田市までの沿岸13市町村を担当しています。 2011年3月11日、東日本大震災による巨大な津波がこの地域を襲いました。 甚大な被害を受けましたが、世界中からの支援によって復興のみちのりを歩んでまいりました。 防災教育にも力を入れ、震災遺構や伝承施設も整備されています。ガイドと一緒に歩き、復興の歴史を体験できます。 【北部の名所】 田野畑村には高さ200メートルの断崖が連なる「北山崎」、岩泉町には日本3大鍾乳洞の「龍泉洞」、宮古市には真っ白な石の海岸がさながら浄土のようとうたわれた「浄土ヶ浜」、山田町には穏やかな湾内に浮かぶ大島(おおしま)「通称:オランダ島」と小島(こしま)など、迫力ある絶景が広がります。この地域を楽しむには三陸鉄道がピッタリです。ローカル線に乗ってのんびりと車窓の風景を楽しめます。 【中部の名所】 大槌町には、「ひょうたん島」の愛称で町民に親しまれている「蓬莱島」、 釜石市には現存する日本最古の洋式高炉跡で、 世界遺産に登録されている「橋野鉄鉱山」など 海と山、それぞれを楽しむことができます。 また、この地域は虎舞や鹿子踊りなどの郷土芸能も盛んで、古くから受け継がれてきた伝統を、イベントやお祭りで体感できます。 【南部の名所】 大船渡市には、リアス式海岸の変化に富んだ景観を楽しめる「碁石海岸」、陸前高田市には、津波被害の事実と教訓を発信する「東日本大震災津波伝承館」、住田町には、国内最大級の洞窟内滝を有する鍾乳洞の「滝観洞」など、この地域特有の自然・文化を感じられるスポットがたくさんあります。 雄大な自然がもたらす恵みを楽しみつつ、自然の脅威と共生する知恵と教訓も学ぶことができる地域です。 皆様のお越しをお待ちしております。