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漫画の原点は平安時代?ジャパニーズコミックのルーツを探る!
──漫画大国、日本。 日本の漫画は、いまや日本だけにとどまらず、世界に誇れるコンテンツとなりました。 さて、この漫画という文化は、いつごろ誕生したものなのでしょうか。今回は、現代に至るまでの漫画のルーツをたどっていこうと思います。
──漫画大国、日本。
日本の漫画は、いまや日本だけにとどまらず、世界に誇れるコンテンツとなりました。
さて、この漫画という文化は、いつごろ誕生したものなのでしょうか。今回は、現代に至るまでの漫画のルーツをたどっていこうと思います。
漫画の原点は平安時代?
まずはこちらの画像をご覧ください。
カエルとウサギが楽しそうに相撲をしています。
これは、平安時代から鎌倉時代((1185~1333年)にかけて描かれた、かなり古い絵巻物の1ページなのです。
その名も『鳥獣人物戯画』。動物たちを擬人化してユーモラスに描いており、漫画の基本でもあるコミカルな絵柄が特徴です。
仏像になりきって遊んでいるカエルに、僧侶になりきって念仏を唱えるサル。
現代の漫画にもこのようなシーンはありそうです。
また、この画像で注目すべきは、サルの口元。サルがしゃべっていることを、口から線を出して表現しています。
このような行動を記号的なもので表すという、現代の漫画でも使われる技法が、なんと約800年前も昔の絵巻物に使われているのです! こうした点から『鳥獣人物戯画』は漫画の原点と言われています。
「漫画の精神」を教えた葛飾北斎
時は経ち、江戸時代。浮世絵界を代表するひとりである浮世絵師・葛飾北斎(かつしかほくさい)が現れます。
葛飾北斎の代表的な作品といえば、『冨嶽三十六景(ふがくさんじゅうろっけい)「神奈川沖浪裏」』
オランダの画家・ゴッホやフランスの作曲家・ドビュッシーなど西欧の芸術家たちに影響を与えました。
彼は『北斎漫画』という自らのスケッチ画集を出版しました。釣りの達人が釣りに失敗している様子をコミカルに描いた絵、河童を釣る方法という俗説の絵。下部には空想上の存在である河童が描かれています。
この本はいわば絵のお手本書のようなもので、風景や動植物から始まり、生活道具や妖怪に至るまでのいろいろな絵が載っています。
北斎漫画について、葛飾北斎は「あらゆるものを、自分の心の趣くままに描いた」と言っています。
時に自然や人物などを鋭い眼で観察し、時に思わず笑ってしまうようなユーモラスな動きで描出した北斎。森羅万象、そしてこの世に存在しないものすら紙の上に描き出そう。もしかしたら、北斎漫画にはこのような技術と想いが込められていて、それは現在の漫画にも伝わっているのかもしれません。
漫画の輪郭が浮かびだした明治時代~戦前
文明開化を迎えて世の中の空気が変わった、明治時代。同じ職場で働くオーストラリアの漫画家に影響を与えられた北澤楽天は、欧州で盛んだった風刺漫画を手がけることとなります。
彼の描いた『田吾作と杢兵衛の東京見物』は、風刺を行いつつもどこか笑ってしまう娯楽色の強い漫画でした。
東京見物に出てきた田舎者の田吾作と杢兵衛の失敗談を面白おかしく描いた作品。
水道の使い方がわからず水を飲むのに悪戦苦闘している様子を描写しています。
前項で紹介した北斎漫画は「自分の心の趣くままに描いた」という内側への志の作品だったことに対し、北澤楽天が描いた風刺漫画というものは、世の中を批評を発信するという外側へ向かう志に基づいた作品でした。
このことから、江戸から明治に時代が移り変わったことと同様に、人々の心、そして漫画のあり方も変わっていったということがわかります。このようにして、漫画という存在は少しずつその身を進化させていくのです。
また、昭和に入ると『のらくろ』『冒険ダン吉』などのデフォルメが強くかかった絵柄の漫画が子ども雑誌で連載され、多大な人気を誇りました。このころから、現代の漫画と似たような絵柄になっていきます。
田河水泡が描いた、黒い犬が主人公の漫画『のらくろ』は、子どもから人気を集め、戦前の漫画では珍しく長期に渡る連載となりました。
日本の漫画を大きく進化させた男、手塚治虫
第二次世界大戦後。戦災やGHQの規制により日本はほとんどの書籍や漫画コンテンツの資産を失ってしまいました。しかし、それをきっかけに日本の漫画は大きく生まれ変わることとなったのです。
この戦後の日本漫画史を語るうえで、外すことのできない人物がいました。今では「漫画の神様」と呼ばれるほど、後世の漫画界に影響を与えた漫画家・手塚治虫です。
漫画のみならず、アニメーションにおいても稀有な才能を見せた手塚治虫。
彼がいなければ、日本の漫画やアニメーションはここまで発展しなかったでしょう。
彼は、現在にも受け継がれているストーリー漫画の手法を確立させました。コマや人物、背景やフキダシなどを映画的な構成で配置し、読み手を漫画に引き込ませる。そしてストーリーをリズミカルに展開し、読者を飽きさせませんでした。
この手法は大いに反響を呼び、現在に至るまで漫画の基本として連綿と伝わっているのです。
週刊雑誌の登場
昭和中期になると、週刊の漫画雑誌が発売されるようになります。国内の流通事情も良くなり、今までよりも安価に購入できるようになったことが合わさって、週刊雑誌は全国で数多くの読者を獲得しました。
現在も発行されている漫画雑誌の一つ、週刊少年マガジンの創刊号(1959年)
表紙には当時世間から大きな人気を得ていた力士・朝潮太郎を起用しました。
世に出てくる漫画の数もグンと多くなり、スポーツ・ラブコメ・ファンタジーなど、様々なジャンルの漫画が生まれました。そして漫画は、その規模を次第に大きくしていき、現在のような隆盛を極めるのです。
姿を変えても生き続ける、先人の“想い”
いかがでしたでしょうか。日本の漫画の原点が平安時代だとは驚きですね。
平安時代から現在に至るまでの約800年もの間で、漫画はその時代ごとに合わせて自らの形態や様相を変化・進化させてきました。しかし、絵柄や形態が変わったとしても、その中にある先人が培った技術や想いは変わることはありません。
漫画を読む機会がありましたら、ぜひあなたの心のアンテナを広げてみましょう。もしかしたら、遥かなる時を超えて彼らの想いを感じることが、できるかもしれません。
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中京大学出身。在学中は言語表現について学んでいた。現在は愛知県在住のフリーター。大好きな漫画やライトノベルは、長年の相棒でもあり日々の癒しでもある。今年の春に再び就職活動をすることを決意する。