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暮らしに根づく歴史と自然を体験!ローカルガイドとめぐる滋賀県・米原「BIWAKO BACKROADS」ツアー
京都や奈良、伊勢神宮のある三重など、有名観光エリアと隣接する滋賀県。ここでは古くから残る地域の文化や暮らしが今も受け継がれ、日本の歴史を感じる旅ができるでしょう。「BIWAKO BACKROADS」のローカルガイドと滋賀・米原を巡った際の、地域の魅力をお届けします!
受け継がれた歴史が暮らしに残る滋賀県
有名な歴史的建造物をもつ京都や奈良に隣接する滋賀県。このエリアにも歴史ある土地が多く、周辺地域との関係の中で作られた文化が、今も暮らしに根づいています。
滋賀県は、古くから京都に続く流通の拠点でした。江戸(東京の旧称)と京都をつなぐ東海道と中山道(※1)があったことから、商人が活躍したエリアとも言われています。たとえば、全国的に有名な百貨店「高島屋」の創業者は、滋賀県の出身です。
琵琶湖のサンセット
日本最大の湖・琵琶湖もあり、周囲を山々に囲まれ湧水も豊富。昔ながらの街並みも残り、生活の一部として街に溶け込んでいます。
※1:東海道・中山道(なかせんどう)……江戸時代の、江戸と全国を結ぶ道(五街道)の道のこと。
水のきれいな滋賀北部・米原をめぐる!
BIWAKO BACKROADSのメンバー(Picture courtesy of BIWAKO BACKROADS)
今回参加したのは、京都から新幹線で約20分の米原市を活動拠点とする「BIWAKO BACKROADS」ツアー。「裏道」「ありのままの暮らし」「里山の自然」をキーワードに、ローカルガイドの方々と米原周辺の歴史的なエリアを回ります。
記事では3時間のサイクリングツアーを中心に、歴史ある酒蔵や醤油蔵の建つ「北国街道 木之本宿」ツアー、中山道の宿場町から職人の集落までハイキングを行う1日ツアーを紹介します。
ツアーはすべて英語の解説付き。日本語がわからない人でも楽しめます!
コロコロ変わる景色が楽しい!サイクリングツアー
里山の自然と暮らしを体験するなら、約3時間のサイクリングツアーがオススメ! 広々とした琵琶湖畔や里山の風景はもちろん、独自の文化がある集落を通ったり、古くから住民に親しまれているお寺を回ったりなど、さまざまなエリアをめぐります。
取材時は、少し暑さの残る10月。田舎道を走ると真っ赤に咲く彼岸花が道路の脇を彩っていました。
季節によって移りかわる風景も楽しめる、ツアーのポイントを紹介します!
のどかな田園風景をのびのび走る!
周囲を山に囲まれ、きれいな水に恵まれている滋賀県は、米の産地としても有名な場所です。ツアーでも、心地よい風を感じながら田園風景が広がる道を走ります。
写真は稲刈りが終わったあとの田園を走る様子。稲穂の実る9月ごろは、黄金色に輝く場所へと変わるそうですよ。
見どころに近づくと、ガイドの方が自転車を止めて説明をしてくれます。写真左の伊吹山(いぶきやま)は、標高1377メートル、高山植物や薬草が多く生え、400年以上も前から「薬草の宝庫」と言われてきたそうです。
特にヨモギは高品質のものが採れることで有名。ヨモギをもとに作られるお灸も品質がよく、お灸の会社の本社もあるのだそう。歴史が今に繋がっていることを感じます。
歴史ある寺院を巡る
サイクリング中にはお寺を何度も見かけました。とくに目を引いたのは、禅宗のひとつ、黄檗宗(おうばくしゅう)の西円寺です。
禅宗は、水墨画や石庭などシンプルな造りが特徴的ですが、ここは赤と白に塗られた門に、迫力のある竜が2匹。珍しい門構えをしています。お堂の天井には竜の絵が描かれており、これはアーティストでもある住職の方が作ったのだそう。
集落には、必ず1つはお寺が建てられているそうです。もともと日本人の仏教観は、文化や生活に近いもの。そのため当時は、暮らしに近い場所へお寺を建てたのかもしれません。
お堂は山の斜面にも! 岩脇山(いおぎやま)を登る途中に作られた「岩屋善光堂(いわやぜんこうどう)」は、山の斜面に埋め込まれたように作られています。小屋も周辺を囲むように建てられていました。
山側の壁は岩肌がむき出しの状態。お堂が自然の一部のように感じられます。
集落に入り込んで地元の生活を知る
ツアーでは民家の集まる集落の中も抜けていきます。「世継(よつぎ)」とよばれる集落に入ると、水が流れる場所が点在していました。この水場は「かなぼう」と呼ばれ、1年を通して水温18度ほどの湧水が流れ出ているそうです。
水は少し鉄が混ざっており、飲み水としては不向き。そのため畑で採れた野菜を洗う使い方がメインのようです。また、周辺の住民が交代で掃除や管理をしながら使う共同の水場であることから、古くから“シェア文化”が根付いていたこともうかがえます。
ちなみにツアーガイドの多くは、周辺に住む方が行ってくれています。地域との交流も大切にし、行き交う人に挨拶し、話をすることもあります。
ツアー参加者のクリスさん
「たくさん咲くから、もらっていって!」と言われ、集落に住む方にいただいたお花。人との関わりが楽しめる点も、このツアーならではです。
最後は絶景の琵琶湖畔サイクリング!
そろそろツアーも終盤。世継の集落を抜けると……
海と間違えてしまうような、大きな琵琶湖! 京都、大阪など周辺地域の水の供給源ともなっている湖です。晴れた日は湖面がきらきらと輝き、とてもきれい。
琵琶湖の周囲は約200キロメートル。サイクリングロードにもなっており、全国から自転車好きが集まります。また、自転車で琵琶湖1周をすることを、「ビワイチ」と呼び、サイクリストなら1度は体験したいコースなのだそう。この日も関東からチャレンジしに来た男性に出会いました。
のどかな道を通り米原駅に戻ると、ツアーも終了です。出発前とは周りの風景が少し変わって見えるでしょう!
ツアー詳細:公式HP
古い街並みと醸造文化を楽しむ「木之本宿」散策ツアー
昔ながらの街並みを堪能したい方は、木之本宿(きのもとじゅく)の散策ツアーに参加してみましょう。
木之本宿は、金沢方面へと延びる北国街道(ほっこくかいどう)の宿場町。古民家が並ぶ街並みの中に、室町時代(1336~1573)に創業した酒蔵、江戸時代から続く醤油蔵などが営業しています。
ツアーで回るお店の人は、ガイドの方がよく知る方。アットホームな雰囲気で対応してくれますよ。
木之本宿では、ここでしか作られていない、山路酒造の「桑酒(くわざけ)」が味わえます。桑酒とは、みりんを作る製法で、桑の葉と米麹を用いて作るお酒のことです。カンパリに似た、薬酒に近い味がしました。
写真は試飲用のモヒート
山路酒造では桑酒のモヒートを作って提供しています。さっぱりとして飲みやすく、特に暑い日にぴったり。
ツアー詳細:公式HP
ものづくりを間近で見るなら職人の村へ1日ウォーキングツアー
街歩きも運動も楽しみたい! という方には、山道を抜けて職人の集落へ行く1日ツアーもあります。
まずは中山道の宿場町「醒井宿(さめがいじゅく)」を散策。このあたりも湧水が豊富で、街を流れる川には夏になると「梅花藻(ばいかも)」と呼ばれる、白くて小さな花が見られます。
散策後は地域の食材を主に使った日本料理店「本陣 樋口山」でランチ(※2)。その後、ガイドと1時間半ほどハイキングをして、仏壇作りの職人が集まる集落へと向かいます。
※2:アレルギーやヴィーガンなど食事に制限のある方は、ツアー予約時に相談してみてください。
仏壇の制作は、7つの工程に分かれた分業スタイル。木彫り、漆塗り、彫金など、それぞれに特化した職人が今もこの集落で作業をしています。
集落に着くと、住民の方が出迎えてくれます。一緒に回って、作業中の職人さんに声をかけ、仕事内容や工房の様子を教えてもらえるそうです。
取材で訪れた場所は、木彫り職人の井尻一茂(いじり かずしげ)さんが営む工房。現在は家の表札作りやお寺の看板なども制作しているそう。
工房では体験ワークショップ(※3)も開いており、ハンガー、鍋敷き、スプーンやコースターなどが作れます。
※3:ワークショップを希望の方は、別途オプション料金が必要です。
また、井尻さんは木のアクセサリー作りも手がけています。商品は醒井宿にある、築200年の古民家をリノベーションして作られたゲストハウス「居醒庵(いざめあん)」の1Fで販売中です。
ツアー詳細:公式HP
ローカルガイドと一緒に地域の日常に溶け込もう
Picture courtesy of BIWAKO BACKROADS
旅先の地域をいっそう楽しもうと思ったら、ローカルガイドとともにめぐるツアーがオススメ。知らなければ通り過ぎてしまう場所も、ガイドと一緒なら地域の歴史とともに紹介してもらえます。
また、地元の人と話せたり、お店の方や職人さんに気軽に質問したりできるのも、その地域に根ざしたガイドと一緒に回る醍醐味。滋賀・米原へ訪れて、人との繋がりや、暮らしを感じる旅を堪能しましょう!
In cooperation with BIWAKO BACKROADS
MATCHA編集者兼フリーライター。東京生まれ東京育ち東京在住。これまで渡航した国は30か国以上、住んだ県は4県。日本旅行はもうすぐ全都道府県を制覇!「読んだからこそわかるその土地の魅力」が伝えられることを目指して記事を作っています。森とお寺とラクダが好きです。