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「書」の美しさにも魅了される! 相田みつを美術館で詩と向き合うひととき
詩人と書家の相田みつをが残した魅力的な書に、筆で書かれた文字の不思議で力強い存在感が感じられます。今回、相田みつを美術館で鑑賞できる展示をご紹介します。
日本語の文字が読めなくても、その形の面白さや謎めいた存在感に魅惑され、書を絵のような作品として楽しむ方は多くいるでしょう。日本で古くから親しまれる「書道」は、文字を筆で美しく描き芸術的に表現する伝統文化です。紙に滲む墨の形や、踊るように見える字の姿を鑑賞する楽しみもあります。
今回は、そんな書道の魅力を心ゆくまで堪能できる「相田みつを美術館」をご紹介します。
※本美術館は2024年1月に閉業しました。
相田みつを美術館とは
企画展「自分と出逢うとき」(2016年9月まで)より
相田みつを美術館は、詩人であり書家でもある相田みつを氏の作品を展示している施設です。相田みつを氏は、1924年に栃木県足利市で生まれ、中学の頃から短歌(※1)と書道を好んでいました。18歳の時に禅宗(※2)の師匠に出会ってから、相田みつを氏の詩と書は禅の影響を受けるようになり、人の心にまっすぐに届くようなメッセージで好評を集めてきました。
(※1) 短歌(たんか)…日本で古くから詠まれてきた全31文字の定型詩。自然や人の心を歌い上げる。
(※2) 禅宗(ぜんしゅう)…仏教の一派。日々の修行によって自己の仏性を内観することに特徴がある。
相田みつを美術館は相田氏の没後、1996年に設立されました。東京国際フォーラムにあるこの美術館は2016年9月に開館から20週年を迎えます。
それを記念して、2016年6月14日より9月11日までは相田作品の中心的なテーマである「書」「言葉」「自分」をめぐる企画展「自分と出逢うとき」が開催中です。相田みつを氏の作品を中心に、この施設の魅力を紹介します。
相田みつをの詩と書
相田みつを氏は複雑な字を用いず、子どもでも読めるような作品を心がけていました。こちらの写真の「夢はでっかく根はふかく」はその一例で、シンプルな言葉ながら人にとって大切なこと伝える書です。
ちなみに、展示されている全ての作品に英訳が付いており、海外からの観光客でも字の個性や美しさだけではなく、詩の意味も楽しめます。
「いまが最も大事です」と訴えかけるこの詩に、禅の率直さと真っすぐさが感じられます。この作品は、相田みつを氏が愛用していた「ろうけつ染」という技法で作られています。ろうけつ染では、溶かした蝋を生地に染み込ませることで、蝋で書かれた字は染まらず、周りの部分だけが色に染まります。
各展示室では、ひとつひとつ独特な雰囲気とメッセージを持つ相田みつを氏の作品をゆっくり楽しめます。
展示室の間の廊下には、書道を体験できる場所があります。好きな文字を筆で書いてみてはいかがでしょう。書道の楽しさを感じることができると思います。
施設のみどころ
展示を見てから、館内のカフェでゆっくりと休憩できます。落ち着いた雰囲気の中で、相田みつを氏の詩と書に込められた意味を振り返るひと時が過ごせます。
カフェの近くに、相田みつをの書とハローキティのコラボにより出版されたカレンダーの作品も展示されています。相田作品のユーモアと遊び心が感じとれる一連のコラボ作品となっています。
美術館のショップでは、記念に購入できる出版物の他、相田みつを氏の書を使ったおみやげ品もあります。
相田みつを美術館が入っている東京国際フォーラムの広々とした空間も印象的です。見学のついでに、国際フォーラムの都会的な雰囲気も楽しんでみてください。
終わりに
書で表現されている相田みつを氏の世界観に興味は湧いてきましたか?
エジプトのヒエログリフのように、相田みつを氏の書は絵としても文章としても楽しめます。相田作品に見える字一つ一つの力強さに是非触れてほしいと思います。
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日本の伝統文化の継承者であり、芸術そのもの。ことばで魅せる「書道」とは
2016年よりMATCHA編集者。 能楽をはじめとする日本の舞台芸術に魅せられて2012年に来日。同年から生け花(池坊)と茶道(表千家)を習っています。 勤務時間外は短編小説や劇評を書いていて、作品を総合文学ウェブメディア「文学金魚」でお読みいただけます。