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【職人のまち燕三条】ガイドブックに載っていない、世界にひとつだけの包丁をつくる旅
「職人のまち燕三条」を五感で体感してもらう旅。今回はイギリス出身のマヌウェル、ドイツ出身のナタリーの二人に、職人の手仕事を間近で見ながら伝統技術を学ぶ、本格的なものづくりの旅を体験してもらいます。
KRaft Tour 拠点(旧三条物産 土蔵)
県の中央部に位置する燕三条は、古くから「ものづくりの街」として栄えてきました。江戸時代から続く伝統技術を継承し、世界でも類を見ない多様な技術が連なる金属加工の集積地として、作業工具や刃物、洋食器など生活に欠かせない道具をつくり続けてきた場所です。
このツアーでは、地元出身のツアーガイドだからこそ案内できる普段は入れない歴史ある町工場やおすすめのローカルスポットを、高性能バッテリーを搭載したe-Bikeで爽快に風を切りながら巡っていきます。
まず最初に訪れるのが、KRaft Tour(クラフトツアー)のシンボルでもある旧三条物産 土蔵。築85年、広さ900平米を超える巨大な空き蔵は、かつて三条の特産品だった足袋の工場兼倉庫の跡地で、木造の外壁のなかに3つの土蔵を構える構造上も稀有な建物です。
燕三条の産業の歴史を紡いできた貴重な場所から、旅が始まります。
その大きさもさることながら、蔵に一歩足を踏み入れると凛とした空気が漂い、秘密の隠れ家を見つけたような感覚に心が踊ります。倉庫には当時製造していた足袋や帳簿などがまだ残っており、この場所で積み重ねられてきた時間や、ここで過ごしてきた人々の生活が語りかけてくるように感じられます。
日本の歴史や伝統産業に興味があるナタリーも、一際目を輝かせていました。
KRaft Tour:https://kraft-ts.jp/
日野浦刃物工房
今回、ものづくり体験を行うのは日野浦刃物工房。昔ながらの「自由鍛造」にこだわって、鉈や包丁を手造りしている100年以上の歴史を誇る鍛冶屋です。
工房の四代目・日野浦 睦(ひのうら・むつみ)さんに手ほどきを受けながら、自分の名前を刻んだ世界にひとつだけの包丁を製作します。
まず挑戦するのは鍛造。日野浦さんで行う自由鍛造では、金型を使用せずに、高温に熱した金属を叩いて成型していきます。
「鍛えて造る」という言葉の通り、叩くことで金属内の組織が細かくなり、切れ味が良く、耐久性が上がり刃が欠けにくい刃物に仕上がるといいます。
包丁の形に合わせて余分な箇所を切り取る断ち回しを行ったら、続いて整形作業。グラインダーを使って金属を少しずつ削りながら、形を整えていきます。
美しい包丁になるよう、ミリ単位で形を整えていく繊細な作業です。
「刀がつくれる!」と始まる前は興味津々だったマヌウェル。
いざ始まると、表情が一変。真剣な眼差しで黙々と作業を進めていきます。
刃物の命ともいうべき焼入れ。金属を高温に熱し、水で急冷することで組織を活性化させ、鋼を硬くします。
温度とタイミングに神経を尖らせながら、慎重に作業するふたり。少しずつ包丁に命が吹き込まれていきます。
柄付け、洗浄を行い、最後に仕上げとなる研磨作業。水を少しずつ加えながら、砥石の上で包丁を丁寧に研いでいきます。包丁を研ぐのは初めてのふたり。最初は動きがぎこちなかったものの、刃先が鋭くなっていくにつれて、スムーズに手が動くようになっていきます。
自宅でも定期的に包丁を研いであげることは、刃物の切れ味を維持させるうえでも大事なポイント。手造りした包丁はもちろん、道具を永く使い続けるための技術も、お土産として持ち帰っていただきます。
いよいよ完成!出来上がった包丁に、日野浦さんに名入れをしてもらいます。
ふたりの希望で、「マヌウェル」「鉈離(ナタリー)」とそれぞれの名前を彫ってもらいました。
鍛造から焼入れ、研ぎまで一連の工程をイチから体験し、完成した「世界にひとつだけの包丁」。丹精込めて造る職人の想いやこだわりに触れられたことで、ものを永く大切に扱おうという気持ちが自然と込み上げてきます。
ふたりとも、「最高のお土産ができました!」と大満足の様子でした。
日野浦刃物工房:https://hinoura.com/
遊亀楼 魚兵
完成した包丁をもって向かったのは、創業明治元年、燕三条で150年続く料亭の遊亀楼 魚兵。
燕三条製の包丁や鍋といった調理道具、箸やカトラリーで提供される四季折々の伝統的な日本料理のほか、新潟の郷土料理を気軽に楽しめるカフェと燕三条のプロダクトを揃えたセレクトショップが併設されています。
この日は1階のカフェスペースのキッチン厨房を借りて、完成したばかりの包丁の試し切りを実践させていただきました。
いざトマトに包丁を当ててみると…、ほとんど力を入れていないのに、ストンとまな板に落ちる包丁。二つに割れたトマトの鮮やかな断面が現れました。
「触っただけで切れる…!」と驚きを隠せないふたり。想像以上の切れ味に、思わず笑みがこぼれます。
オレンジも実が崩れることなく、見事な薄さでスライスされていきます。気持ちいいほどの切れ味に「ずっと見ていられる…」と思わずナタリーもうっとりしていました。
「こんなにすごいものを造ったのか」という感動と同時に、職人さんへのリスペクトがより一層大きくなりました。
遊亀楼 魚兵:https://uohyo.com/
ガイドブックに載っていない、一点ものの旅を
「本当に貴重な体験!包丁造りのプロセスが知れて職人へのリスペクトが高まりました」
「普段使いできる貴重な手造りのお土産ができて嬉しいです」と語ってくれたマヌウェルとナタリー。
この他にも、地元の人が通うローカルなスポットを巡りながら、次回の旅の話に花を咲かせました。
ガイドブックに載っていない、世界にひとつだけの包丁をつくる旅を、皆さんも体験してみませんか。
日本有数の職人が集まる街、燕三条。ものづくりの歴史を紡いできた文化的にも貴重な蔵を拠点に、ものづくり体験ツアー事業を展開しています。 普段は入れない工場で職人に学び、自分の手でものをつくり、実際に使ってみることで、職人へのリスペクトやものを永く大切に扱う気持ちが生まれます。ガイドブックには載っていない手づくりの旅を通じて、燕三条の日常(ものづくり、人、自然、文化、食)を五感で体験。蔵に訪れるゲストと一緒に、新しい出会いと可能性を拓いていきます。