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国の重要伝統的建造物群保存地区「卯之町の町並み」の一角にある「末光家住宅」江戸時代に酒屋として建てられた歴史ある建物です。限られたスペースを有効利用するアイデアや、暮らしやすくするための工夫が詰まった末光家住宅をご紹介します。
末光家住宅は、1770年に建てられた商家で、卯之町の町並み(国の重要伝統的建造物群保存地区)の中町通りで一番古い町屋です。
1770年と言えば、作曲家「ベートーベン」の出生の年であり、江戸時代中期頃です。
当時、卯之町の町並みには5軒の酒屋があり、酒造りがとても盛んな地域でした。
江戸時代後半に、在郷の村々で蓄えた資金を元手に卯之町で事業を始める豪農も多くありました。
清澤村庄屋から卯之町に出てきた末光家も酒造業を始め、店舗兼用住宅として末光家住宅を建築しました。
1709年:11代当主の三郎右衛門保清が「清澤屋」という屋号で酒造業を始めました。
1770年:12代当主の三郎右衛門保宜の手により、末光家住宅が建造されました。
1895年:大規模な改修や模様替えが行われました。この改修時に、「箱階段」や「回転戸袋」などが設置されました。
1919年:「卯之町醤油株式会社」を設立し、1937年まで醤油醸造や販売を営みました。
2005年:2年の歳月をかけて修復し、南予を代表する往時の商家住宅として今日まで保存されています。
末光家住宅は、今では珍しい中2階建ての建造物です。
正面玄関、1階、中2階に分けて内観を紹介します。
正面玄関は、観音開き戸の式台付きの玄関です。
観音開きとは、左右対称に開くデザインのこと。
また、式台は玄関部分に設けられる段差のある板や床のことです。
式台を設けることで土間と床の格差を小さくし、上り下りを簡単にします。
地位の高かった武家屋敷に式台を設けられていたことから、格式の高さがうかがえます。
1階は、座敷と店・居室、土間に分けられています。
土間の北東部の隅に板間があり、家人の食事に使用していました。その横は中店と言い家人が出入りする部屋です。その横が店と言われる部屋で、お客様対応をする帳場でした。
お客様が見えるように、店から板間まで半間づつ広がるひな壇形式の部屋の取り方をしているところが特徴的です。
建設された江戸時代中期頃は、2階建て住宅の建設ができなかった為、物置として利用されていました。
明治時代に入ると規制が緩和され、庶民でも中2階を居間に改造できるようになりました。
1895年に、末光家住宅も畳を敷いて居間に改造しました。
中2階建ての末光家住宅は、天井が低く頭がぶつかりやすいので、梁を削っているところもあります。
商家である末光家住宅には、限られたスペースの有効利用や、暮らしやすくする為の様々な工夫がなされています。
商人の知恵や大工の技術力がうかがえる造りをご紹介します。
戸袋(とぶくろ)とは、引き戸を開けたときに戸を収納するための場所です。
3枚の格子戸を収納したまま、戸袋自体を回転できる仕様になっています。
数枚の格子戸を引き出すことによって、土間部分と仕切ることも可能です。
箱階段とは、階段の側面に引き出しや引き違い戸などが付いた階段です。
収納スペースとして有効活用できるようになっています。
蛇腹式(じゃらしき)すり戸とは、箱階段の上に設置されている1階と2階を仕切る戸です。
板を収納するところの奥行きが足りなかったため、一部、木で作られた蛇腹式(シャッター式)になっています。
蔀戸(しとみど)とは、格子の裏に板を張り、内側もしくは外側に撥ね上げて、釣り金具で留められる様にした戸です。
1階正面に広く用いられていました。
格子窓を取り外す事ができ、大きい荷物の出し入れがしやすくなっています。
↑ 閉じた状態
↑ 開いた状態
無双窓とは、格子をスライドすることにより、明り取りや風通しを良くする工夫された窓です。
板戸としての機能も兼ね備えています。
持ち送りとは、軒を支えるため壁や柱から突き出した腕木です。
こちらでは、持ち送りのことを「ひじ」と呼んでいます。
卯之町の町並みにある町家のひじは、一つ一つ異なったデザインになっています。
末光家住宅のひじは、波(水)のデザインになっており、防火の意識のあらわれだと言われています。
貯蔵庫の中は、夏は涼しく冬は暖かいので、芋類などを貯蔵していました。
明治の初め、群馬県から来た客にカイコを養って絹を作ることを勧められ、養蚕も営みました。
カイコは一時期桑の葉を大量に食べるため、朝一番の桑の葉を新鮮に保つことから、芋つぼを大きくして貯蔵庫として利用されました。
ヒカリづけ技法とは、基礎の石の石面に合わせて木を削り、垂直に立てる技法です。
お客様が通るところの基礎石の出っ張りを少なくし、通らないところは多くするなど細かい配慮がなされています。
箱階段が設置される前は、この階段を利用して中2階への上り下りをしていました。
必要なときに階段を下して、天井の引き戸を開けて使用します。
土間を広く使うための工夫です。
虫籠窓(むしこまど)は、低い2階にある塗り壁の窓です。
通風や採光のために設けられています。
その形が「むしかご」に似ているので、「虫籠窓」と呼ばれています。
本記事で紹介した造り以外にも、様々な工夫が施されています。
ぜひ、卯之町の町並みにお越しになった際は見学してみてください。
江戸時代から今日まで現存している末光家住宅をご紹介しました。
末光家住宅は、市指定有形文化財にも指定されている貴重な建物です。
本館は見学だけでなく、貸館としてもご利用いただけます。
各種イベントや成人式、結婚式などの記念撮影にも人気です。
ぜひ、ご利用ください。
【末光家住宅】
所在地:愛媛県西予市宇和町卯之町3丁目179-3
お問い合わせ:0894⁻62⁻6700(宇和先哲記念館)
アクセス
・松山道西予宇和ICから車で5分
・JR卯之町駅から徒歩8分
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