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日本のことば事典「灯籠流し」
日本の夏の風物詩のひとつ「灯籠流し」。灯籠とはどんなものか、なぜ灯籠流しを行うのかについてまとめるとともに、有名な灯籠流しのスポットについて紹介します。
灯籠とはどんなもの?
燈籠は、日本では昔から使われていた屋外用の照明器具。灯籠(とうろう)という漢字の「灯」は明かりを、「籠」はカゴを表します。
中に灯すロウソクなどの明かりが風で消えないように、竹、木、石、金属などで作られた枠を紙や布で囲って作られており、中から漏れ出す幻想的な光が印象的です。
神社や寺でよく見られる街灯のような背の高い照明も灯籠と呼びますが、灯籠流しに使われる灯籠は水に浮かべられるような小さめで素朴な風情のある美しい照明です。
また、紙や布の囲いの部分に、絵やメッセージを書くことができるものが多いようです。
灯籠流しは何のために行われるの?
日本人の生活には、祖霊信仰といって自分の祖先を祀る行事が根付いています。
特に8月半ば(地域によっては7月半ば)には、古来より祖霊信仰と仏教が混ざりあって確立したお盆と呼ばれる期間があり、この時期には家に特別なお供え物をして祖先の霊をもてなしたり、お墓参りをしたりします。
お盆の終わりには「送り火」といって、祖先の霊が帰っていくのを、明かりを灯して見送ります。
灯籠流しはこの送り火の一種であり、祖先がいつも見守ってくれていることへの感謝の気持ちを込めて、お供えものなどと一緒に灯籠を川や海に流すのが昔からのならわしとなっています。
地域によっては精霊(しょうろう)流しと呼ばれることもありますが、意味合いは同じです。
亡くなった人へ祈りを届ける行事であることから、先祖を祀るという本来の意味合いだけにとどまらず、平和祈念や鎮魂のイベントとして灯籠流しが行われることも多くあります。
なお、昔は川や海に流しっぱなしにされていた灯籠ですが、現代では環境への配慮から、ある程度の時間が経ったら水面に浮かぶ灯籠を回収したり、川の上流から流した灯籠を下流で回収したり、といった対応が取られている場合も多いようです。
灯籠流しを見に行ってみよう!
日本各地で灯籠流しは行われていますが、観光スポットとしても有名な灯籠流しが行われる場所を紹介します。
まずは、京都の嵐山の「渡月橋(とげつきょう)」で行われる灯籠流し。最寄り駅は阪急電鉄嵐山線もしくは京福電気鉄道の「嵐山駅」で、駅から徒歩5分の場所にあります。
毎年8月16日に開催される嵐山の灯籠流しは、1949年に戦没者の霊を供養するために始まりました。同じ日に京都の夏の必見イベントのひとつである「五山の送り火」も行われ、灯籠流しの会場から山に燃え盛る送り火を見ることができます。
山に明々と燃え立つ「大」の文字や鳥居の形に向かって灯籠がゆらゆらと流されていく様子はとても幻想的で、日本のお盆を体感できる貴重な体験になることでしょう。
現地では当日灯籠を購入できるので、ぜひ自分の灯篭も流してみてくださいね。
もうひとつ紹介するのは、広島で行われる灯籠流し。最寄駅は広島電鉄の「原爆ドーム前」です。毎年、原爆が投下された8月6日に開催される平和祈念式典の日の夜に、原爆で犠牲になった人を悼み、また世界の恒久平和を願って行われるイベントです。
ここで流される灯籠は色紙を使って作られており、世界中の人々が色紙にメッセージを書き込み、鎮魂や平和への祈りを込めて流していきます。こちらも当日その場で灯籠を購入することができますので、訪問した際にはぜひ参加してみましょう。
対岸にライトアップされる原爆ドームの迫力とゆらめき流れる灯籠の明かりの美しさに、命の尊さや平和の大切さを改めて感じさせられる忘れられない体験となることでしょう。
まとめ
単に幻想的で美しいだけでなく、日本人の祖先に対する感謝の心や平和への想いも感じることのできる灯籠流し。今回紹介した京都や広島以外でも、多くの場所で灯籠流しが行われていますので、ぜひ見に行って、一味違った日本の夏を感じてみてくださいね。
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