徳川美術館の見どころ:刀剣から絵巻まで、名古屋で日本の名宝を鑑賞
徳川美術館は、尾張徳川家の所蔵品から精巧な美術品や歴史的遺物を展示しています。刀剣から絵巻、貴重な茶道具に至るまで、江戸時代に日本の美意識を深く形作った美術品の数々をご覧いただけます。
偉大な将軍の面影に出会える名古屋の旅

歴史好きな方や人気テレビシリーズ『SHOGUN』のファンにとって、名古屋は必訪の地です。分裂していた日本を統一し、新たな平和の時代をもたらした名高い将軍徳川家康(1542-1616)ゆかりの場所が多くあるからです。
名古屋には徳川公に関連する史跡がいくつかあり、その一つが尾張徳川家の創始者である九男・徳川義直(1600-1650)のために築かれた名古屋城です。
もう一つの重要なスポットは名古屋市東区にある「徳川美術館」です。ここでは家康の世界観や、彼の治世の下で栄えた優雅な文化について深く知ることができます。本記事では、徳川美術館の見どころを訪れるべき理由と合わせてご紹介します。
「徳川美術館」の歴史的ルーツを持つ印象的な日本美術コレクション

徳川美術館は1935年に開館しました。これは尾張徳川家19代当主・徳川義親侯爵による寛大な寄贈により実現したものです。

徳川美術館に展示されている徳川義親侯爵の肖像
美術館の中心には、尾張徳川家の初代・徳川義直が父である将軍・徳川家康から受け継いだ、広大で由緒あるコレクションが据えられています。多くの貴重な美術品、工芸品、古典書籍のコレクションは元々家康によって贈られ、その後義直の系統によって江戸時代(1603–1868)を通じて充実させられました。
現在、徳川美術館ではこれらの名品を、テーマを替え1〜2か月ごとに入れ替わる特別展示で公開しています。この精選された展示は、大名の生活様式や彼らが支えた芸術文化、すなわち日本の雅びな文化を形作った要素について貴重な洞察を提供します。
徳川美術館の見どころ
徳川美術館で展示される品は展覧会ごとに入れ替わるため、ある名品に出会えるのは年に一度、あるいは数年に一度ということもあります。各展示室では異なる種類の品々が紹介されます。
武家のシンボル-武具・刀剣-

最初の展示室には大名が所有していた公式の品々が並び、華麗な甲冑や様々な種類の刀剣が展示されます。
例えば、開館90周年を記念した最近の特別展「尾張徳川家 名品のすべて」では、お正月に当主が邸内に飾った甲冑など、非常に貴重な品々が公開されました。

この展示室で印象的な作品の一つは、将軍・徳川家康の肖像画「しかみ像」でした。一つの言われによれば、この肖像はある戦での敗北に由来し、家康は失敗の痛みを忘れないために自らしかめ面の姿で描かれることを許したとされる逸話もあります。
この話は肖像の異様な表情にまつわる興味深い逸話として語られますが、それでもこの作品は偉大な将軍に関わる貴重で力強い遺物です。
大名の数寄-茶の湯-

次の展示室は、多くの大名が憧れた茶道具を公開しています。
ここでは、かつて名古屋城二之丸御殿内に建っていた「猿面(さるめん)」茶室が忠実に再現されています。
茶道の精神における季節感を尊重し、この空間で展示される茶道具は毎月丁寧に入れ替えられ、常に現在の季節を反映した設えとなっています。

将軍が忠誠を尽くした大名たちの功績や奉仕に感謝して贈った道具も展示されており、非常に価値の高い品が並びます。
これらの名品の中には、ある藩の年収に匹敵する価値を持つものもありました。
大名の室礼-書院飾り-

続いて、豪華に再現された大名の公的な応接間に圧倒されることでしょう。
こちらは名古屋城二之丸御殿にかつてあった広間で、明治維新で原物は失われましたが、残された詳細な図面をもとに美術館が忠実に再現したものです。
建築や装飾の細部は豪華で見事です。床の間には格式高い様式の三具足が飾られ、立花に香炉や燭台の背後には三幅の掛け軸が配置されています。

この部屋には、海外からの貴重な品々も目立つ形で展示されています。これらは室町時代(1336年–1573年)および江戸時代(1603年–1868年)において、地位や権力の象徴として用いられました。
武家の式楽-能-

能楽は江戸時代を通じて将軍家や大名たちの式楽でした。
抑制された所作と、歴史上の英雄の勇敢さや雅を称える物語を備えた能は、武家を深く魅了しました。多くの大名が謡や仕舞を日常的に稽古し、上層の官僚や知人を招いて能の催しを開くことさえありました。
徳川美術館は能に特化した展示室を設けています。ここには見事な舞台のほか、美しい装束や能面、楽器、そのほか関連する様々な品々が展示されています。
大名の雅び-奥道具-

もう一つの展示室は「奥道具」、すなわち大名やその妻女が使用した道具に捧げられています。
このコレクションは彼らの私生活を垣間見せるもので、女性たちが楽しんだ書物や絵巻物に加え、美術品や調度類などが含まれます。
これらの品々は当時の最高の職人たちによって国内で最も洗練された技術を用いて作られ、大名たちの上品な趣味を反映しています。

訪れた際に特に印象に残った展示品の一つは、『葉月物語絵巻』でした。平安貴族たちの恋愛事情を綴った逸話を集めた絵巻物、貴重な文学作品として認められており、鑑賞者を千年前の雅な宮廷文化へと誘います。
本館ギャラリー

美術館の設立当初からの建物は現在はゆったりとしたギャラリーになっており、施設が開館した90年前の様式をそのまま伝えています。
取材の際にはこのギャラリーに、開館当時の美術品から、将軍・徳川家康の着物、そして17世紀に作られた貴重な琉球漆器の揃い物などが並んでいました。

繰り返しになりますが、展示は企画展ごとに入れ替わります。美術館の洗練されたコレクションから、常に別の貴重な品々に出会えます。
ザ ミュージアムカフェとショップ

展示鑑賞の合間にぴったりの休憩スポットとして、館内の優雅なカフェを訪れてみてください。
庭園の景色が楽しめる落ち着いた空間で、軽食や魅力的なデザート、さわやかなドリンクを楽しみながらくつろげます。

見学の締めくくりには、ミュージアムショップに立ち寄っておみやげを選んでみてください。ここで販売されている品々は、美術館の所蔵品や名品に着想を得たアイテムです。

人気のおみやげには、美しい日本美術のデザインがあしらわれた風呂敷が含まれます。
運びやすいものをお探しなら、展示の見どころをモチーフにした文房具、上品に包装された名古屋のお菓子、あるいは洗練されたデザインの茶筒などがおすすめです。

もし貴重な日本工芸品をお求めなら、徳川家の葵紋で装飾された精巧な漆器の箱や鏡をおすすめします。日常使いにも飾り物としても最適です。
日本の四季の美が楽しめる「徳川園」

徳川美術館が精巧な日本美術を展示している一方で、隣接する徳川園は自然と四季折々の美を満喫できる美しい憩いの場を提供しています。

尾張徳川家の大曽根屋敷跡に築かれたこの庭園自体が歴史的な宝であり、いくつかの登録有形文化財が所在します。尾張徳川家邸宅の正門として機能した「黒門」は特に注目に値します。

11月の紅葉 Picture courtesy of 徳川園
日本庭園らしい景観は、勢いよく流れる二つの滝、元気に泳ぐ鯉のいる大きな池、太鼓橋や多彩な植物が配されており、どの角度から見ても見事で写真映えする風景が広がります。

4月下旬の牡丹と藤 Picture courtesy of 徳川園

6月の花菖蒲 Picture courtesy of 徳川園
四季ごとに徳川園は異なる色彩や魅力を見せ、年間を通じて楽しめる場所です。

園内にはいくつかの飲食店や、名古屋の歴史にちなんだおみやげ品を扱う売店もあります。
名古屋の中心にあるこの静かなオアシスは、徳川美術館が提供する歴史的な洞察を引き立て、日本文化をより深く体感できる充実したひとときを与えてくれます。
徳川美術館への行き方
徳川美術館と徳川園へは名古屋駅からアクセスが便利です。JR中央線(多治見方面行き)に乗り、約20分で大曽根駅で下車してください。南口を出てから美術館と庭園までは徒歩で約10分の距離です。
名古屋で日本の美術と歴史をお楽しみください
本記事は、より深い日本文化の理解のために徳川美術館を訪れるきっかけになれば幸いです。
もし2025年11月15日から12月7日の期間にご旅行を計画されているなら、特別展「国宝 源氏物語絵巻」をぜひご覧ください。この傑作は日本でも屈指の名品の一つとされ、名古屋での全点公開は10年ぶりです。
何世紀にもわたって人々を魅了してきたこの名作を、ぜひ実際の目で見て、その魅力を堪能してください。
徳川美術館
住所:愛知県名古屋市東区徳川町1017(Google Map)
最寄り駅:大曽根駅(JR中央線)
開館時間:10:00 - 17:00 ※月曜日休館、月曜が祝日の場合は火曜休館
公式サイト:https://www.tokugawa-art-museum.jp/
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In cooperation with The Tokugawa Art Museum and Tokugawaen Garden
2016年よりMATCHA編集者。 能楽をはじめとする日本の舞台芸術に魅せられて2012年に来日。同年から生け花(池坊)と茶道(表千家)を習っています。 勤務時間外は短編小説や劇評を書いていて、作品を総合文学ウェブメディア「文学金魚」でお読みいただけます。